ほぼ全メーカーが発売しているコンパクトSUV。この激戦区に新たな人気モデルが登場した。
ホンダから久しぶりにヒット作が生まれた。これが今年4月に発表した『ヴェゼル』だ。発表から1か月で、3万2000台を受注。発表時の販売計画台数は月間5000台だったが、すでに半年以上の納車待ち状態となっている。同社のコンパクトカー『フィット』が予想外の苦戦を強いられていたところに、降って湧いたようなビッグウエーブが訪れたのだ。『ヴェゼル』の人気の理由のひとつが、この見た目のサイズ感にあるようだ。欧州のセグメントでいうと一見、Dに分類されるように思えるが、実際はCセグメントのコンパクトクラスに該当する。
パワーユニットはe:HEVと名づけられたハイブリッド車には1.5Lガソリン+2モーターが3グレード、1.5Lガソリン車は1グレード用意されている。駆動方式はFFと4WDが1グレードを除いて揃っている。今回、試乗したのは全グレードで最高価格の「PLaY」。FFの2モーターハイブリッドモデルだ。燃費はe:HEVの『ヴェゼル』は実走で12~18km/Lだった。完成度の高い新型コンパクトSUVの登場で、このカテゴリーはさらに盛り上がりそうだ。
美しいクーペプロポーションに生まれ変わった
ホンダ『ヴェゼル e:HEV』
Specification
■全長×全幅×全高:4330×1790×1590mm
■ホイールベース:2610mm
■車両重量:1400kg
■排気量:1496cc
■エンジン型式:直列4気筒DOHC+交流同期モーター
■最高出力:106PS/6000〜6400rpm+131PS
■最大トルク:127Nm/4500〜5000rpm+253Nm
■変速機:電気式無段
■燃費:24.8km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:329万8900円
※「PLaY」
大きく見えるのは全幅までワイドに広がったヘッドライトとグリルのデザインのせい。ボンネットは上方から見ると広いのがわかる。
クーペ仕様のプロポーションだが全席に広い視界を提供するため、サイドラインを前後に貫いた水平基調を採用。空力性能はF1マシンを開発する同社ならではの風洞を応用している。
両サイドの絞り込みを抑えたことで室内の空間は広々としている。最低地上高は「PLaY」グレードで195mm(FF車)、4WDは170~180mmを確保している。ゲート開口部の高さは路面から700mm。
実用性の高さはピカイチ
エンジンルーム
エンジンは4気筒1.5Lガソリンと小型化したPCUをエンジンルームに収納している。エンジン音は始動すると、ややノイジーな印象。
運転席と各種装備
水平基調のダッシュボードはツートーンのボディーカラーに合わせた色使いがおしゃれ。センターコンソールは運転席向けの設計。
シートスペース
前席はクッションが厚めで前縁が若干高めの構造。後席は床面もフラットに近く大人3名がゆったり座れる。頭上のシェードは脱着可能。
ラゲージスペース
左右幅は1m以上のラゲージスペース。センタータンクレイアウトなので後席はスライドダウンしてラゲージ部分とフラットになる。
【 ココがポイント!】選べる3種類のドライビングモード
変速機は電気式無段変速(CVT)を組み合わせている。ドライビングモードはスポーツ・ノーマル・エコの3モード。マニュアルモードはパドルレバーでシフト操作を行なう。
【 ココがポイント!】センタータンクレイアウトがもたらす室内空間のメリット
ラゲージの座面ボードは厚めで硬い。床下が低く、後席を折りたたむと反転してシート全体が床下に収納されてフラットになる。これもセンタータンクレイアウトの効用だといえる。
快適性重視ならヴェゼル
[運転性能]ハイブリッドの走りはアクセルをオンにした時のエンジンの唸り音が耳障り。走りと乗り心地のよさはタイヤの効果!?17点
[居住性]前後席の広さや質感の高さはクラスを上回っている。センタータンクレイアウトのメリットが享受できる。18点
[装備の充実度]サポカーS(ワイド)に該当する安全運転支援システムを全車に標準装備。全体的に機能が大幅に向上している。19点
[デザイン]クルマを購入する時の重要項目のひとつがデザイン、スタイリング。久々にデザインで買いたくなるホンダ車だ。19点
[爽快感]クルマの性格上、走りの味つけはスポーツ志向ではないが、ミシュランタイヤを装着するモデルも用意されている。18点
[評価点数]91点
取材・文/石川真禧照