ほぼ全メーカーが発売しているコンパクトSUV。この激戦区にヨーロッパを代表する、新たな人気モデルが登場した。
今回、試乗したルノー『キャプチャー』は日本での知名度はいまひとつだが、欧州ではベストセラーSUVとしてポジションを確立している。昨年、欧州で販売されたすべてのSUVの中で最も売れたクルマであることを知っている人は少ない。その『キャプチャー』が今年2月にフルモデルチェンジを果たし、上陸した。そこで今回は欧州のベストセラーSUVの実力を検証してみることにした。
ちなみに、ホンダの『ヴェゼル』と『キャプチャー』の2台を横に並べるとクラスが違うように思う方もいるだろう。しかしスペックを見ると、全長こそ『ヴェゼル』が10cm長いが全幅は『キャプチャー』のほうが5mm広く、全高は同じ。デザインによって生じる錯覚のせいでクルマの印象は大きく変わるのだ。
『キャプチャー』はルノー・日産・三菱グループの提携によって、新たに開発された高剛性で軽いプラットフォームに、4気筒1.3Lガソリンターボエンジンを組み合わせている。変速機は7速AT。前輪駆動だが、先進安全運転支援システムは日産車とほぼ共通。仕上がりはかなりハイレベルだ。
『キャプチャー』の燃費は13~19km/Lを記録。車両本体価格もほぼ同じ。完成度の高い新型コンパクトSUVの登場で、このカテゴリーはさらに盛り上がりそうだ。
アスリートのようなデザインのSUV
ルノー『キャプチャー』
Specification
■全長×全幅×全高:4230×1795×1590mm
■ホイールベース:2640mm
■車両重量:1310kg
■排気量:1333cc
■エンジン型式:直列4気筒DOHCターボ
■最高出力:154PS/5500rpm
■最大トルク:270Nm/1800rpm
■変速機:7速AT
■燃費:17km/L(WLTCモード)
■車両本体価格:299万円
※「intense」
大きく絞り込んだフロントデザインは、アスリートの筋肉を思わせる躍動感がある。前方を傾斜させて、左右のホイールハウスにつながる空気取り込み口など空力効果を強化している。
車体前方から後方に向かって跳ね上げるように伸びるプレスラインと、浮かんで見えるツートーンの屋根、アルミのルーフレールが印象的。ホイールベースはホンダ『ヴェゼル』より30mm長い。
スリムなテールライトにはルノーの象徴ともいえるCシェイプを採用。リアゲートまで伸びたライトが幅広の印象を強調している。ゲート開口部は約780mmで『ヴェゼル』より高い。
方向性は異なるが、どちらも実用性の高さはピカイチ
エンジンルーム
4気筒1.3Lのターボガソリンエンジンはルノー・日産・三菱が共同で開発したもの。7速ATと組み合わせて0→100km/hの加速は8秒台。
運転席と各種装備
高いアイポイントと水平基調のダッシュボードが特徴。ボディーカラーに応じてインテリアもブラックとオレンジでアレンジされる。
シートスペース
前席はシートヒーター付きで座面が大きい。後席は着座位置はやや高めで前方視界もよい。後席は160mmスライドし、6:4で前倒する。
ラゲージスペース
左右幅は約1m。奥行きは後席を最後部まで下げると約830mm。後席の背もたれを倒すとほぼフラットになる。
【 ココがポイント!】コックピットのような雰囲気を演出するセンターコンソール
新型『キャプチャー』の特徴のひとつがフライングセンターコンソール。シフトレバーの位置が高くなり操作がしやすくなった。空間の下にはスマホなどが置けるスペースがある。
【 ココがポイント!】サブトランクとして使える便利な床ボード
ラゲージスペースの床ボードは、上下2段階で調節ができるダブルフロアシステム。上の位置にすると、深さ15cm以上のサブトランクとして使える。ボードは厚みがあり重量物でも収納できる。
走り重視ならキャプチャー
[運転性能]1.3Lターボ+7速AT+車重1310kgのSUVは走り出しから軽め。ドライブモードの選択幅も広く、運転を楽しめる。17点
[居住性]前席はポジションしだいで圧迫感がある。後席はボディー形状の関係でやや狭めだがシートがスライドするのが便利。18点
[装備の充実度]運転支援システムの先進性と予防安全技術の充実度、アクティブセーフティー、パッシブセフティーもほぼ完璧。19点
[デザイン]曲面と面積を使ったボディーは実車よりコンパクトに感じる。室内の色使いが大人の雰囲気でライトの形状も個性的。18点
[爽快感]3社で開発したプラットフォームと1.3Lエンジン+運転モード切り替えにより、スポーツ走行も十分楽しめる。18点
[評価点数]90点
取材・文/石川真禧照