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ファイナンシャルプランナーに聞く自動車保険の補償と特約の賢い選び方

2021.08.21

コロナ禍により、移動時は電車よりもマイカーのほうが感染リスクが減ると考え、マイカーを積極的に利用し始めた人も多いのはないだろうか。新たに車を購入した人もいるかもしれない。そんなときに必要になるのが、自動車保険への加入だ。

そこで今回は、知っているようで知らない、自動車保険の基本と補償の選び方をファイナンシャルプランナーのアドバイスの下、紹介する。すでに加入している人は、保険の更新時期を迎えるときにも役立つだろう。

自動車保険には強制保険と任意保険がある

まずは自動車保険の基本をおさらいしておこう。

自動車保険には、法律で加入が義務づけられている“強制保険”である「自動車損害賠償責任保険(通称:自賠責保険)」と、任意で加入する一般の自動車保険“任意保険”がある。

任意保険は、強制保険だけでは必要な補償額をまかなえない場合や、強制保険では補償されない損害に備えて加入する。

強制保険で補償されるのは、人身事故の賠償損害のみ。「相手が死傷した場合の相手への賠償」と「同乗者が死傷した場合の同乗者への賠償」である。補償額は、被害にあった人、一人につき、死亡の場合は最高で3,000万円、後遺障害の場合は最高で4,000万円(常時介護を要する場合)、傷害の場合は最高で120万円である。

任意保険では、人身事故の賠償損害のほか、自分や同乗者が死傷した場合の補償、壊した物への賠償、自分の自動車の補償、事故にかかる諸費用などの補償により、強制保険を補う。

FPがアドバイス 自動車保険の補償の付け方

任意保険の自動車保険を契約する際、さまざまな補償を付けることになる。任意であることから、自身に必要なものを選択したいが、迷うこともある。そこで自動車保険に詳しいファイナンシャルプランナーの中村賢司氏に、ポイントとなる補償や特約の付け方について、アドバイスしてもらった。

【取材協力】

中村 賢司(なかむら・けんじ)氏
ファイナンシャルプランナーとして、個人のコンサルティングを行いながら、テレビやラジオなど様々なメディアを通じて、家計管理やライフプランの重要性、投資の啓蒙を説いている。YouTube「ゆめたまごチャンネル」でお金に関する最新情報を配信中。
YouTube「ゆめたまごチャンネル」
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●対人賠償保険と対物賠償保険は「無制限」に

一般的に、相手方への賠償については、「対人賠償保険」と「対物賠償保険」があり、それぞれ補償額は「無制限」に設定されることが多い。

――対人賠償保険と対物賠償保険はやはり「無制限」にしたほうがいいですか?

「両方とも無制限で設定することをおすすめします。10年以上前の自動車保険では、対物賠償保険を1,000万円程度に設定する契約が多かったのですが、踏切内での電車との接触事故や、高級外車との衝突事故の場合、高額な賠償となるケースもあります。特に踏切内での事故は1億円を超える賠償もありますので、保険料を安く抑えるために補償額を下げるようなことはやめてください。万が一のときの自動車保険ですから、対人賠償保険は言うまでもなく、対物賠償保険も無制限の設定をおすすめします」

●人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違い

多くの保険商品において、自分や同乗者が死傷した場合の補償には、「人身傷害保険」と「搭乗者傷害保険」の2種類がある。それぞれの違いを知っているだろうか。

――人身傷害保険は基本補償として付けて、プラスで搭乗者傷害保険を付けてはどうかと保険会社にすすめられました。搭乗者傷害保険は付けたほうがいいのですか?

「搭乗者傷害保険と人身傷害保険は、その車に搭乗している人を補償する意味では同じようなものと思われがちですが、そもそも補償内容が違います。搭乗者傷害保険とは、名前の通り、“その車に搭乗している人”を補償するものです。一方、人身傷害保険は“搭乗中の事故に加え、契約の車以外に搭乗中の事故や、歩行中・自転車運転中の自動車事故”も補償の範囲となっています。また、“契約者本人だけでなくその家族まで補償”されるので安心です。

さらに人身傷害保険の優れているところは、万が一、事故を起こしたとき、過失割合に関係なく保険金額を限度に実際の損害額(治療費、休業損害、慰謝料など)を受け取ることができることです。その分、保険料は搭乗者傷害保険よりは割高となりますが、人身傷害保険のほうを選ぶことをおすすめします。人身傷害保険を付帯すれば搭乗者傷害保険は付帯しなくても良いでしょう。もちろん、どちらも付帯することはできるので、手厚くしたいという方は両方付帯しても良いです」

●車両保険を付ける目安は?

車両保険は、自分の車を補償する保険だ。保険料が高くなるので付けないという人が多いが、どんな基準で付ければいいだろうか。

――車両保険を付けるべき目安を教えてください。

「車両保険を付帯すると保険料は倍近く高くなるので、付帯するかどうか迷うところです。絶対に自損事故を起こさないと自信のある人は付けなくても良いでしょう。万が一、衝突事故を起こした場合でも、相手側の対物賠償保険から自分の車の修理費は補償されます。ただし、過失割合に応じて満額でないこともあるので注意が必要です。

とはいっても、新車であれば付けておきたいですね。万が一、自損事故を起こし修理費に数十万かかる場合もありますし、さほど大きな事故でなくても全損扱いになる事故もあります。そんなときに車両保険が付いていないと目も当てられません。

また、経過年数が古い中古車の場合でも、車両保険を付けておくことで無料のロードサービスを受けることもできます。実は私も数年前、中古車で買ったワゴン車が高速道路で突然エンストして、車両運送をお願いした経験があります。車両保険を付けていたため、そのときのレッカー車での車両搬送費用とタクシーでの移動代もすべて保険が適用されてとても助かりました。

新車はもちろん、中古車でもこうしたメリットがありますので、車両保険を付帯しておいて損はないでしょう」

●付けておくべき特約は?

自動車保険には、保険会社によってさまざまな特約が用意されている。弁護士費用特約などだ。

――特約が色々あって、どれを付けておくべきか分かりません。

「さまざまな特約がある中で、私は次の2つを付けておくのをおすすめします」

1.「弁護士費用特約」

「自動車事故が起きたとき、相手側との折衝は、基本的に保険会社が主導で行ってくれます。しかし信号待ちの際に後ろから追突されるような“もらい事故”の場合、過失割合がゼロなので、保険会社は示談交渉を行いません。よって自分で交渉する必要があるのですが、その際、相手側へ損害賠償を請求するために弁護士費用や法律相談費用などを負担します。そんなとき、弁護士費用特約を付けておくとそれらを補償してくれます。もし相手側が任意保険に未加入だった場合などに役立ちます。

この弁護士費用特約には、自動車事故のみを補償してくれるタイプと、自動車事故はもちろん日常生活における賠償まで補償してくれるタイプがあります。著者のおすすめは後者の日常生活まで補償される弁護士費用特約です。契約者だけでなく同居の親族まで補償してくれるので、安心です」

2.「個人賠償責任特約」

「個人賠償責任特約は、保険会社によって名称は異なり『日常生活賠償特約』や『個人賠償特約』などと呼ばれることもあります。この特約を付帯しておくと、契約者や同居の親族が他人にケガを負わせたり、他人のものを壊したり、飼い犬が人を噛んでしまったりした場合などの損害賠償金を補償してくれます。

例えば、最近、自治体によって“自転車保険”への加入義務化が進んでいますが、自動車保険の個人賠償責任特約を付けておけば、自転車保険へ加入する必要はありません。自転車事故で負う損害賠償を、この特約で補償してくれるからです。お子さまが自転車に乗り始めたとき、多くの人が自転車保険加入を検討していますが、自動車保険に契約している人はこの特約を付けておけば新たに自転車保険に加入する必要はありません。補償額は1億円までの保険会社もありますが、無制限に設定できる場合は無制限にすることをおすすめします」

意外と知らない自動車保険のこと。これから自動車保険を契約する際、更新する際などにはぜひ参考にして、自身に合ったプランを契約し、安心の中で車を運転しよう。

【参考】
国土交通省「自賠責保険ポータルサイト 自賠責保険について知ろう! 限度額と保障内容」

取材・文/石原亜香利

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