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ころころ変わる女心を、秋の空模様に例えてたことわざ「女心と秋の空」。実は、この言葉が誕生した当初は「男心と秋の空」と表現されており、男性の浮気を容認するような意味合いがあったことをご存じだろうか。
本記事では、「女心と秋の空」の意味と由来、具体的な例文を解説する。女性の機嫌を損ねないためにも、正しい使い方を確認しておこう。
ことわざの一つ「女心と秋の空」とは?
はじめに、「女心と秋の空」の正しい意味と由来、具体的な例文を紹介する。女性の感情に振り回された経験がある男性は、きっと共感できる部分も多いはずだ。
「女性の気持ちは秋の空模様のように変わりやすいこと」を意味する
「女心と秋の空」は、「女性の気持ちは、まるで秋の空模様のように変わりやすく移り気だ」という意味を持つことわざ。ここで言う「女性の気持ち」には、女性が男性に対し抱く愛情はもちろん、個人的な決意や心情、感情の起伏なども含まれている。
「気持ちのよい秋晴れ」と表現するように、日本の秋の空は空気が澄んでいて、すがすがしい青空を望めることが多い。一方で、高気圧と低気圧が入れかわりやすいため、天気が急変するのも、この季節の特徴だ。このように、天候の変わりやすい秋空と、目まぐるしく変化する女性の心を重ねたのが「女心と秋の空」。ちなみに、「女心と梅雨の空」という表現は誤り。
元々は「男心と秋の空」だった
現代では女性を対象にして「女心と秋の空」ということわざが使われるが、冒頭で触れたように、もともとは「男心と秋の空」と表現されていた。
江戸時代に誕生したこのことわざは、女性の地位が認められ始めた大正デモクラシー当時から、「女心と秋の空」に変化したと言われている。改めて言うまでもないが、「男心と秋の空」とは変わりやすい男性の気持ちを表したことわざ。その例として、江戸時代の俳人、小林一茶は『はづかしや おれが心と 秋の空』という俳句を詠んでいる。
現代ではあまり考えられないが、江戸時代から室町時代の日本は、既婚男性の浮気に対してとても寛大だったという。その一方で、既婚女性が夫以外の男性に心を許すことは、命を落とすほどの重罪とされていた。つまり、「男性が浮気性なのは仕方がない」「たとえ既婚者であっても男性は他の女性に愛情が移ろいやすい」という男性の特徴を表したのが、このことわざの始まりだった。
「女心と秋の空」の使い方・例文
先述の通り、「女心と秋の空」は気が変わりやすい女心を表してさまざまなシチュエーションで使われる。直接女性に伝えると機嫌を損ねてしまう可能性が高いため、口に出さず心の中に秘めておく方が良いだろう。
【例文】
・「5分前までは映画が見たいって言っていたのに、今度はボーリング?何とも女心と秋の空だ」
・「女心と秋の空とはいっても、こうも感情の起伏が激しいと一緒にいて疲れてしまう」
・「さっきまで落ち込んで泣いていた彼女が、今は楽しそうに僕の話を聞いている。女心と秋の空とは言うが、どうして気持ちが変わったのか僕には全くわからない」
・「『歌詞がすごくいいから、私はしばらくこの曲しか聞かない!』と力説していた姉が、翌日違うジャンルの曲を聴いていた。女心と秋の空と言うように、女性の気持ちと言うのはコロコロ変わるものだ」
「女心と秋の空」の類語
ここからは、「女心と秋の空」の類語をチェックしていこう。似た表現を覚えることで、言葉に対する理解がさらに深まるはず。
分らぬは夏の日和と人心
「分らぬ夏は日和と人心」とは、「夏の天気のように人の気持ちも変わり気であること」を表すことわざ。良い天気だったのが一転して、急に雷雨に見舞われるように、夏の天気はとても変わりやすい。同じように、人の心は移ろいやすく、他人にはなかなか理解できないことを例えている。「女心と秋の空」と似た意味を持つことわざだが、その対象が女性限定ではない点がポイントだ。
女の心は猫の目
「女の心は猫の目」ということわざは、「女性の心は、猫の目のように頻繁に変化すること」を示している。猫の瞳孔は、暗い場所では開いて大きくなり、明るい場所では細くなる。さらに、興奮したり恐怖を感じたりと感情の変化によって瞳孔が開いて大きくなる。要するに、コロコロ変わる猫の瞳孔の状態を、変化しやすい女性の心情を重ねたことわざだ。
英語ではどう表現する?
「女心と秋の空」を英語で表現する場合、イギリスで古くから使われていることわざ「A woman’s mind and a winter wind change often./女心と冬の空はよく変わる」「Woman is as fickle as April weather./女は4月の天気のように気まぐれ」が用いられる。
いずれも、イギリスの天候と、次々変わる女心を重ねたことわざだ。「女心と秋の空」のように、予想するには限界がある自然的現象と、安定しない女性の気持ちを例えている。
文/oki