
日常で何気なく使っていることわざや慣用句には、現代ではあまり馴染みのない単語が含まれていることがある。よく似たものを表す時に使う「瓜二つ」もそんな言葉の一つだ。意味は知っていても、「瓜」がどんなものか説明できない人は意外と多いのではないだろうか。
そこで本記事では、この言葉の由来や「瓜」が使われた理由、関連表現なども併せて解説する。ぜひこの機会に知識を深めてほしい。
「瓜二つ」の正しい意味と由来
はじめに、「瓜二つ」が持つ正しい意味と、実際に使う際に覚えておきたいポイントを紹介する。また、なぜこの慣用句に「瓜」が使われるようになったのかについても理解しておこう。
人の顔がよく似ていることのたとえ
「瓜二つ」とは、きょうだいや親子などの見た目がそっくりでよく似ていることを表す。これは、一つの瓜を2つに切った時、その切り口が同じように見えるのが由来とされる。“2つの瓜が似ている”といった意味の語源ではない点は注意しよう。
語源となった「瓜」とは
瓜には大きく分けて2つの意味がある。一つは、キュウリやカボチャ、スイカやメロンなどのウリ科の果菜類の総称として使われる場合。もう一つは、ウリ類、特に「マクワウリ」を指す場合だ。「瓜二つ」の「瓜」は後者の意味で用いられている。
マクワウリはメロンの一種で、縄文時代早期の遺跡から種子が発見されるなど、かなり古くから日本で栽培されていたとされる果実。メロンに比べて糖度は低いが、現代に比べ甘いものが少なかった時代には、庶民でも手軽に味わえる甘味として人々に親しまれていた。
「瓜二つ」の他にも、「瓜実顔(うりざねがお)」「瓜の蔓に茄子はならぬ(うりのつるになすびはならぬ)」など、さまざまな諺や慣用句に用いられており、それだけ当時の生活に身近なものだったことが推測できる。
「瓜二つ」を使う際に気を付けたいこと
先述の通り「瓜二つ」は2者がよく似ていることを表すが、一般的には人間に対してのみ使われる表現で物品には用いない。そのため、「あの商品は以前流行ったものと瓜二つだ」といった使い方は厳密には誤りとなる点に注意しよう。
「瓜二つ」の類語と例文
ここからは、英語で説明する場合の表し方や類語、例文など「瓜二つ」にまつわる関連表現について詳しく紹介しよう。語彙力アップにも役立つのでぜひチェックしてほしい。
「瓜二つ」と似た意味を持つ言葉
・生き写し
「生き写し」も、「瓜二つ」と同様に二人の人物がよく似ていることを指す。言葉通り、“まるでその人の姿を生きたまま写したよう”に、見た目や態度がそっくりという意味だ。特に、兄弟や親子など血縁関係のある者同士に用いられることが多い。
・空似(そらに)
「空似」は「生き写し」とは反対に、血縁関係がないのにも関わらず容姿が似ている場合に用いられる表現。この場合の「空」は、「偽りの」「実際はそうではない」といった意味。「他人の~」とセットで使うのが一般的。
・五十歩百歩
戦闘の際、五十歩逃げた者も百歩逃げた者も大きな変わりはないように、少しの違いはあっても本質的には同じものを指す。容姿を含めたさまざまなものに使われるが、基本的には“どっちも褒められたものではない”といった否定のニュアンスを含む。
・同じ穴の貉(むじな)
「同じ穴の貉」は、一見違うように見える2人が本質的には仲間・同類であることを表すことわざ。見た目ではなく中身の類似性を指摘する言葉で、多くの場合は悪事を働いた者に対して用いる。
英語ではどのように表現する?
「瓜二つ」を英語訳する場合によく使われるのが「be alike as two peas in a pod」。「pea」は「エンドウ豆」、「pod」は「豆のさや」を表す単語で、日本語に翻訳すると「さやの中の二つの豆のようによく似ている」となる。定型文として使われる慣用表現なので覚えておこう。
似た表現として、「cut from the same cloth」も挙げられる。直訳すると「同じ生地から作られた」を意味し、見た目や性格がよく似ている者同士を表す。
「瓜二つ」を使った例文
「うちのクラスにいる双子、本当に瓜二つで見分けがつかないよ」
「私の母には年の離れた姉がいるが、顔から体形まで瓜二つで娘の私でも間違うほどだ」
「彼は最近神話や迷信に凝っていて、自分と瓜二つの人間が目の前に現れる“ドッペルゲンガー現象”について詳しく教えてくれた」
文/oki