テレワーク中はデスクワークが多くなるものだが、オフィスのように歩き回ることも少ないため、どうしても運動不足になりがちだ。休日もステイホームならなおさら、その傾向が強くなる。どのように対処していけばいいだろうか。
今回は、ライザップのトレーナーに運動不足解消メソッドやテレワークにおすすめの食事術などを指南してもらう。
テレワークで運動不足を実感している人は78%
ライザップの企業向けサービス「RIZAPウェルネスプログラム」の調査では、テレワーク中、運動不足を実感している従業員は78.6%にも上った。
調査は2021年6月、企業の健康管理担当者167名を対象に行われた「テレワーク中の従業員の不調と対策アンケート」である。
テレワーク普及の前後で、従業員の健康面の変化、またはそのような声があると回答した140名に、従業員の健康面の変化を尋ねたところ、「運動不足を実感している」がトップで78.6%、「メンタル不調者が増えている」が22.1%、「体調面の不調者が増えている」が20.0%となった。
メンタル・体調面での不調も多いものの、運動不足という不安が最も多いようだ。
また、テレワーク中の従業員の運動不足に対して行っている対策として「特に対策していない」と回答したのが47.9%にも上った。37.1%は「社内に運動や健康に関する情報発信」を行っているようだが、実際に何か運動不足をカバーするような取り組みは行わず、従業員それぞれの任意というところが大きいのが現状のようだ。
テレワーク中の運動不足を解消するポイント
テレワーク中、運動不足を実感している場合、従業員自ら、それぞれ工夫をする必要がありそうだ。しかし運動する機会がなかなか見出せず、何をやっていいかわからないという人も多いだろう。
テレワーク中の運動不足を解消するにはどう工夫すればいいか。RIZAPパーソナルトレーナーの髙梨望氏は次のポイントを挙げる。
【取材協力】
髙梨 望(たかなし のぞみ)氏
RIZAPパーソナルトレーナー
大学では教育学部 保健体育を専攻。学生時代から陸上競技をやっており、陸上競技の指導経験もある。RIZAPへ入社後、教育部を経て、法人事業部のセミナー講師に従事。100名以上のボディメイク経験を活かし、多くの方の健康増進に日々努めている。趣味は走ること。
●自分がどんな自分になりたいかイメージする
「運動不足解消の第一歩は、自分がどんな自分になりたいかをイメージすることです。ただ単に目的なく運動をしていても、なかなか続くものではありません。常になりたい自分をイメージすることこそが、習慣化するためには大切なことです。例えば、『テレワークで運動量が減っても、うまく工夫して身体を動かす機会を増やし、運動不足を感じない健康的でイキイキした毎日を送っている自分』や『コロナ太りにも悩まされず、理想のボディをキープできている自分』などです」
●運動のハードルを下げる
「運動を始めるときは、とにかく運動のハードルを下げることが大切です。運動不足を解消しようと思って、いきなり強度高めのトレーニングを始めたり、毎日ランニングをするなど自分のハードルを上げると、なかなか習慣化できずに運動不足の悪いサイクルにはまってしまいます。ハードな筋トレからではなくまずはストレッチから、毎日でなく週に2日から、1時間ではなく5分だけのように、続けられそうだと思えることを見つけて、チャレンジしましょう」
●通勤中・家事中にも意識する
「普段のちょっとした心がけでできることもあるのでやってみましょう。普段、通勤がある方は、移動中も意識してみてください。例えば、電車を自転車や徒歩にする。1駅歩く。エレベーターやエスカレーターではなく、階段にチャレンジするなどです。
テレワークを基本としていてあまり外出がない方は、家事等で意識したり、近所を歩くようにしましょう。隙間時間を見つけて10分でも歩いたり、ペットの散歩やジョギングなど。また、家でできるトレーニングもあるので、取り入れてみるのが効果的です」
●一緒に頑張る仲間・応援してくれる人を作る
「一緒に頑張る仲間や応援してくれるがいると、運動を習慣化しやすくなります。運動をしたら報告をして、ほめてくれる・励ましてくれるような人を誰か見つけることが大切です」
●運動不足から生じる身体の弊害も認識する
「運動不足から起きる身体の弊害があることも認識しておきましょう。例えば筋力が低下することによって姿勢が悪くなる、肥満、ストレスがたまる、むくみが生じる、筋肉が凝り固まることによって、肩こり・腰痛の要因になるなどです」
運動不足を実感しているときの食事のポイント
髙梨氏は、運動不足を実感している人には、食事にも気を付けるのを勧める。
●たんぱく質をしっかり摂る
「運動する方や減量中の方はもちろんのこと、運動不足の方にとってもたんぱく質は非常に重要です。特に、動かない日が続くと筋力はみるみる低下するので注意が必要です。
しかしたんぱく質は1度に消化吸収できる限度があり、摂りすぎた分は脂肪に変わります。そのため『夜ご飯1回でドカンと1日分のたんぱく質量を食べる』などではなく、1日の食事の中でバランスよく食べるのが理想的です」
●糖質の過剰摂取は控える
「間食が多い人、特に夜のお菓子が多い人、飲酒頻度が高い人は要注意。運動不足の方はなおさら糖質量と食べるタイミングに気を付けたほうが良いです。摂取した糖質がエネルギーとして使われなかったら、脂肪として体に蓄積されて太ってしまうためです」
●カロリーも適度に必要
「基礎代謝量を下回るエネルギーしか摂取していないと脂肪を蓄えやすい体質に変わってしまうので、注意してください。ポイントは、自分の運動量と基礎代謝量に応じたカロリーを意識して食べることです」
テレワーク中におすすめの運動不足解消のためのメソッド4つ
通勤や家事、近所のウォーキングなどだけでは、まだ足りないと感じるなら、自宅でできるエクササイズや筋トレなどの運動を取り入れるのがいい。おすすめの4つを髙梨氏に挙げてもらった。動画を見ながら実践してみよう。
1.その場で足踏み!「マーチ」(有酸素運動)
「自宅で簡単にできる有酸素運動です。その場で足踏みをするというシンプルな動きですが、フォームを意識して行うことで十分な運動ができます。太ももをしっかり上げて、腕ふりをしっかり行うと負荷も上がり、脂肪燃焼に効果的!」
2.足のむくみ解消!「カーフレイズ」(筋トレ)
「第2の心臓と呼ばれる、ふくらはぎの筋トレです。立ち仕事や座り仕事が多い人は、心臓まで血液を戻す力が弱まり、むくみや冷えなどを感じがち。カーフレイズで血行促進、筋力アップし、むくみや冷え性を解消しましょう」
3.筋力低下予防に!「椅子を使ったスクワット」(筋トレ)
「筋力低下予防に効果的な下半身の筋力トレーニングです。家にいて、コードにつまずいたり、靴下をはくときにグラつくなど、足の筋力が弱ってきたなと思う方は、ぜひ取り入れてください。下半身の筋力は全身の6~7割を占めています。下半身の筋力を鍛えることで、全身の筋肉量が増え、代謝アップ、脂肪燃焼に効果的です」
4.椅子に座ったままできる!「お尻&太ももの30秒ストレッチ」(ストレッチ)
「テレワークやデスクワークで、腰回りが痛くなる人が多いです。腰が痛くなる人=お尻から太ももの後ろの柔軟性の低下が要因といわれています。そのため、お尻と太ももの柔軟性をアップすることで正しい姿勢を維持しやすくなります。それに、椅子に座ったままできるから手軽で取り入れやすい点もポイントです。ぜひ取り入れてみてください」
テレワークが長引いている今、運動不足を感じ、すでに慢性化している人も多いだろう。そのような人はぜひヒントにしてみよう。自分なりに運動は取り入れているという人も、何だかすっきりしないという場合も新しい方法を取り入れることで新鮮に運動に取り組めるだろう。
【参考】
「RIZAPウェルネスプログラム」
トレーニングや食事など、健康に関するワンポイントアドバイスを「RIZAPコラム」として展開中。
https://business.rizap.jp/
取材・文/石原亜香利