コロナ禍で居酒屋への足が遠のき、自宅でお酒を楽しむ人が増えている。さまざまな酒の中でもボトル入りのウィスキーは、炭酸で割って飲めばビールを1缶買うよりも経済的であることから、コスパが高い酒として人気だ。
「酒の半分は税金」とよく言われるが、実際にウィスキーのボトル1本に対していくら酒税が含まれているのかは、普段意識しない方がほとんどだろう。そこで、本記事ではウィスキーの酒税率をはじめ、我々消費者が押さえておきたい酒税法の基本的な考え方について詳しく解説していく。
酒税は酒税法によって定められている
国内で販売される飲用アルコールに課せられる、酒税。この税率は「酒税法」という法律に基づいて定められている。まずはこの酒税法の基本的な考え方について理解を深めていこう。
酒の種類ごとに税率は異なる
我々にとって身近な税金である消費税では、商品金額に対して一律で10%または8%を掛けた金額が課税されるが、酒税の場合は酒の種類によって掛かる税率が異なる。酒税法では、製造方法や原料によって酒を大きく4種類に分類し、さらにそこから細かく品目を定義づけし、分類と品目ごとに酒税の税率が定められている。酒税法上の酒の分類と品目は以下の通り。
1.発泡性酒類:ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類
2.醸造酒類:清酒(日本酒)、果実酒(ワインなど)、その他の醸造酒
3.蒸留酒類:連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウィスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ
4.混成酒類:合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒
酒税法では1klあたりの酒税が決まっている
酒税法では、酒類の品目ごとに1kl(キロリットル)あたりの酒税率が定められている。1klという単位はあまり見慣れないかもしれないが、リットル表記にすると1,000L、ミリリットルにして1,000,000mlの計算になる。酒税は酒の製造元や販売元が国に納めるものだが、その酒税額は、量販店での缶やボトルの販売価格に反映されている。つまり、我々消費者が酒を購入する時、間接的に国へ酒税を納めているわけだ。普段飲んでいる酒の価格に酒税がいくら含まれているのかを知りたい場合は、1klあたりの税額を1缶、あるいは1瓶の容量に換算すれば算出できる。
ウィスキーの酒税はいくら?
次に、ウィスキーの酒税について見ていこう。ここでは、ウィスキーの酒税率の計算方法、また、ウィスキー入りのチョコレートに酒税はかかるのかという疑問についても答えを明らかにしていきたい。
ウィスキーは度数によって酒税が変わる
蒸留酒類に分類されるウィスキー・ブランデー・スピリッツは、アルコール度数によって酒税率が変動する。アルコール度数が38度未満の場合は370,000円/1kl。38度以上になる場合はアルコール度数が1度上がるごとに10,000円が加算される仕組みだ。ウィスキーはアルコール度数40~43度程度のものが一般的。そのため、例えばアルコール度数40度のウィスキーであれば1klあたり400,000円、700mlのボトル1瓶あたり280円の酒税が含まれる計算となる。
ウィスキーボンボンに酒税はかかるのか?
たっぷりのウィスキーをチョコレートで包んだウィスキーボンボン。このようなアルコールを原料として使用した食品に酒税はかかるのか、疑問に思う方もいるだろう。結論から言えば、ウィスキーボンボンに酒税はかからない。なぜなら、酒税法では酒類の定義を「アルコール分1度以上の飲料」と定めているからだ。
アルコール入りの菓子類はあくまで食品であり、飲料ではないため課税対象外となる。とはいえ、これはあくまで酒税法上の話。アルコールが多く含まれている食品を車の運転前に口にすれば、当然ながら酒気帯び運転になる可能性があるため十分注意したい。
酒税法改正でウィスキーの価格は変わる?
2018年の酒税法改正により、2020年10月にはビールや第3のビールなどの酒税率が変更になった。では、ウィスキーの酒税は今後どうなるのだろうか。最後に、2018年の酒税法改正とウィスキーの価格への影響について解説する。
2018年に酒税法が改正された
2018年4月、酒税法が改正となり、現行の酒税の税率が見直されることになった。この改正には、近年の酒税の税収推移が大きく関係しているとされている。100年ほど前には国の税収の約40%を占め、国の大きな財源の一つであった酒税。しかし、酒の消費量の減少によって1994年をピークに減収が続き、現在は全体の税収に対してわずか2%程度にまで落ち込んだ。
このような背景から、国は消費量が伸びている発泡酒や第3のビールなどの酒に対しては増税を、反対に消費量が低下しているビールと日本酒については減税を行うことにした。すでに実施された2020年10月の酒税変更に続き、今後も2023年10月、2026年10月に段階的な酒税率の変更が予定されている。
ウィスキーは酒税変更の対象外
2018年の酒税法改正により、先述の通り2026年10月までに発泡酒、第3のビール、チューハイ、ワインは増税、そしてビール、日本酒は減税されることが決定している。しかし、ウィスキーなどの蒸留酒類に関しては今回の酒税変更の対象外であることから、少なくとも2026年までは現行の酒税率が適用される見込みだ。
文/oki