■連載/大山即席斎の“三ツ星”インスタント麺
ここ数年の韓国エンタメ界は勢いがある。
「冬のソナタ」から始まった韓流ドラマは「愛の不時着」でピークに達し、「シュリ」で韓国の力を示した映画は「パラサイト」でカンヌやアカデミー賞を席巻した。東方神起やKARAで人気となったダンス&ボーカルグループはBTSで全米トップとなるまでになった。
日本の場合、世界的な評価を受けたエンタメというと「おしん」、黒澤明、小津安二郎、坂本九などとかなりさかのぼることになる。とはいえ、エンタメは本来自国向けに作るので海外でウケる必要はないのだが。ネットによりエンタメが国際化している現在、国内市場のみを相手にしていては国際間の競争に負けて資金の枯渇によりろくなものが作れなくなるという危惧がある。
それに対し日本発で今でも世界を席巻し続けるものがインスタント麺である。今では世界中に現地メーカーがあり、着実に力をつけているがまだまだ日本のものとは差がある。しかし、この分野でも韓国は勢いがある。「辛ラーメン」が日本に進出してコンビニで普通に見かける存在となった。一般に広く知られる商品はこれだけだったが、韓国ラーメンはじわじわと存在感を増しつつある。
今回多数の韓国ラーメンを購入して驚いたのは、多くの商品パッケージが日本語表記となっていることだ。一定数以上売れなければ日本向けパッケージを作るメリットはないはずなので、現地向けパッケージを作れるほど販売が軌道に乗っているということになる。しかも多くのパッケージにはキャラクターがついていたりするなどデザイン面でも成熟しつつある。
韓国のインスタント麺は主に4大メーカーが作っている。
辛ラーメンで日本市場を切り拓いた「農心(NongShim)」、日本メーカーの協力によりインスタント麺分野に進出した「三養(SAMYANG)」、そして「八道(Paldo)」と「Ottogi」だ。韓国らしく各社とも辛いラーメンに力を入れている。数多ある韓国ラーメンの中から日本でも人気のある激辛商品をチョイスして食べ比べてみたいと思う。
農心NONG SHIM「辛ラーメン(辛라면)」
日本に進出した韓国ラーメンのパイオニアで、韓国ラーメンの味と辛さを比較する上で基準となる商品。
赤い粉末スープで作るつゆは、にんにくやしいたけの旨みが出た味噌系の強辛。麺は楕円形断面でちぢれた、ほんのり透け感のある太麺で、嚙みごたえのあるムチムチ食感。冷麺文化の韓国ならではの麺になっている。
辛さ★★★ 舌先はかなりピリピリくる。我慢すればなんとか通常速度で食べられるレベル。顔が熱くなるレベルではない。
農心NONG SHIM「スパイシーノグボナーラ SpicyCarbonara(매콤너구보나라)」
同社のノグリうどんのカルボナーラ風バリエーションで、キャラクターのモチーフはたぬき。湯切りをして作る楕円形断面の極太麺は韓国製品らしいうっすら透け感のあるツヤツヤムチムチした食感。そこに黄色のチーズ味と赤色の激辛海鮮味粉末スープをからめて出来上がり。赤い粉末はかなり辛いが我慢すれば通常のスピードでもなんとか食べられる。黄色い粉末がコクがあって旨みも強い。かやくとしてキャラクターがプリントされたかまぼこ・かっとした昆布入り。
辛さ★★★+ 舌は痛いけど、休み休み食べなくてもいける。でも、最後のほうになって食べるのがしんどくなってきた。鼻水も出てきた。
農心NONG SHIM「ノグリ激辛✕3HOT(ANGRY너구리)」
赤い粉末スープで作るつゆは最初のひと口からかなり舌がビリビリする辛さになっている。ムール貝・いか・煮干しの魚介系の旨みが出ている。長方形断面でちぢれた透け感のある極太麺は、韓国商品らしいムチムチプリプリ食感。かやくとしてわかめ・カットした昆布とキャラクターがプリントされたかまぼこ入り。
辛さ★★★+ 舌は痛いけど、我慢をすれば休み休みでなくてもなんとか食べられる。最後のほうは辛さに慣れてきた。でも「辛ラーメン」よりは辛い。
農心NONG SHIM「辛ラーメンLIGHT Non-fried(辛라면)」
オリジナルと同様の赤い粉末スープに、野菜調味油を加えて作るつゆは、にんにくやしいたけの旨みが出たオリジナルに近い味噌系の強辛だ。今回一番の違いは麺で、オリジナルで油揚げ麵だったのがノンフライに変更されている。麺の形状も楕円形断面の極太から長方形断面で透け感のない中太ちぢれ麺になっている。嚙みごたえもムチムチプリプリからガッシリシコシコ食感。かやくとしてチンゲン菜・しいたけ・にんじん・ねぎ・唐辛子入り。油揚げ麺の油の代わりに調味油が加えてあるが油の旨みはオリジナルのほうが豊かな印象。
辛さ★★★ 舌先はかなりピリピリくる。我慢すればなんとか通常速度で食べられるレベル。顔は熱くならない。オリジナル辛ラーメンに準じた辛さ。
農心NONG SHIM「辛ラーメンキムチ(辛라면)」
赤い粉末スープで作るつゆは、キムチやにんにくの旨みが出た旨辛だ。辛さが苦手な人でも食べられる程度のマイルドな辛みだ。麺は楕円形断面でちぢれた、ほんのり透け感のある太麺で、辛ラーメンならではの嚙みごたえのあるムチムチ食感。かやくとしてキムチフレーク・チンゲン菜・にんじん・ねぎ。
辛さ★ 辛ラーメン系の味わいだが辛さはかなりマイルドで、舌が痛くなるということもなく普通のスピードで食べられる。
三養食品SAMYANG「ブルダック炒め麺(불닭볶음면)」
パッケージには「口から火が燃え上がる辛さ!(화끈한매운맛!)」と書かれている。「ブルダック」とは「火鶏」の意味。麺を茹でてから湯を少し(50ml)残して切り、そこに赤黒い液体スープをかけてからめる。最後に煎りごまごまと刻みのりをかけて仕上げる。長円形断面の極太ちぢれ麺は、韓国の麺らしくムチムチプリプリな強弾力。食べるとひと口目から舌がビリビリになるほど辛く、顔がカッカと熱くなる。通常の食べるスピードより少しゆっくり食べないといけない。しかし辛さの裏側にチキンの旨みや甘みも感じられるので辛さのわりに箸が進む。前回食べたときは韓国語表記であったが、今回のものは日本語表記になっている。パッケージのトリキャラの名は「ホチ」という。
辛さ★★★★ 舌の痛さは激烈ではない。しかし食べているうちに顔もだんだん熱くなってくる。過去最も辛かったものに比べるとゆるやかだ。食べ進めると最後のほうは辛さに慣れてきた。とても好きな味。
三養食品SAMYANG「カルボプルダック炒め麺(Carbo불닭볶음면)」
商品名は”Buldak Carbonara”の意味。麺は5分間茹でてから9割ちょいの湯を捨てて皿に盛る。とても幅広でよくちぢれた平打ち麺は、ムッチリ感のあるモチモチ食感。そこに赤黒くて激辛な液体スープをかけ、カルボナーラ風味の辛くない白っぽい粉末をかけて出来上がり。ベースとなるのはプルダック麺で、そこに黒胡椒やチーズ・バターの乳成分が加わってカルボナーラ風味を出している。一昨年に買ったときは韓国語表記であったが、今回購入した品は日本語表記になっていた。
辛さ★★★+ 舌は痛いけど、休み休み食べなくてもいける。でも、最後のほうになって食べるのがしんどくなってきた。鼻水も出てきた。でもブルダックシリーズの中では一番辛くないやつ。
三養食品SAMYANG「불닭볶음면김치(ブルダックキムチ)진로✕불닭」
お酒の眞露とブルダックがコラボした一品。麺を茹でてから湯を少し(50ml)残して切り、そこに赤黒い液体スープをかけてからめる。かやくとしてキムチがはいっている。長円形断面の極太ちぢれ麺は、韓国の麺らしくムチムチプリプリな強弾力。食べるとひと口目から舌がビリビリになるほど痛辛く、食べ進めるにつれ顔がカッカと熱くなる。通常の食べるスピードよりかなりゆっくり食べないといけない。しかし辛さの裏側の旨みや甘みも感じられる。こちらのパッケージは韓国語表記になっている。
辛さ★★★+ 舌はかなり痛い。食べているうちに顔もだんだん熱くなってくる。過去最も辛かったものに比べるとゆるやかだ。食べ進めると最後のほうは辛さに慣れてきた。
三養食品SAMYANG「핵불닭볶음면2×Spicy」
パッケージには火を吹くトリみたいなキャラ(HOCHI)が描かれていて、いかにも辛そうだ。麺を5分間茹でてから湯を捨て、赤黒い液体ソースをかけて30秒炒めて作る。長円形断面の極太ちぢれ麺は、韓国の製品らしいムチムチプリプリな強弾力。最後にのりと白ごまのふりかけをかけて仕上げる。出来たものはただようゆげがもう辛い。いただくと、ひと口目から舌がビリビリ、顔はカッカと熱くなるほど辛い。辛さのせいで食べている途中に何度かむせてしまい、ゆっくりにしか食べられない。これは過去最激辛ランク商品のひとつだといえる。韓国製品だがハラルに対応している。
辛さ★★★★+ 舌は猛烈に痛い。食べているうちに顔もだんだん熱くなってくる。鼻水も出てきた。過去最も辛かったものに近いレベル。
Paldo八道「틈새라면(トゥンセラーメン)since1981」
唐辛子色をした粉末スープで作るつゆは味噌味と醤油味の中間ぽい味がベースでチゲっぽい味わいに仕立てたもの。辛さかなりの激辛で、最初のひと口から舌を強烈に刺激し、ゆっくりとしか食べられない。しかしビーフやにんにくなどの旨みもちゃんと味わえる。長円形断面の極太なつやありちぢれ麺は、ムッチリとした噛みごたえのあるプリプリ食感。かやくは長ネギ・唐辛子。
辛さ★★★★★ 舌は猛烈に痛い。食べているうちに顔もだんだん熱くなってくる。過去最も辛かったレベルだといえる。最後のほうまで辛さが続き、激辛好き以外の人にはおすすめできない。
Paldo八道「ホットタッカルビちょ~辛旨 韓国風汁なし炒めヌードル」
長円形断面の極太なつやありちぢれ麺は、噛みごたえのあるプリプリかつモチモチな食感。そこに赤褐色をした液体ソースをかけて汁がなくなるまで炒める。かやくの白ごまと海苔をかけたら出来上がり。
食べてみて驚いた!パッケージやソースの色から激辛と想像したのだが、実際にはほとんど辛くない!心地よいピリ辛程度の辛さだ。チキンやにんにくの旨みに甘みもあって実に食べやすい旨さになっている。
辛さ★ ほどよいピリ辛で、旨みも濃厚。辛さに弱い人でも食べられる。
Paldo八道「팔도비빔면(パルドビビン麺)」
麺は3分間茹でた後、冷水で洗って作る。日本の昔ながらの即席麺らしい、丸っこい断面の中太ちぢれ麺はムッチリとした弾力感がある。韓国の一般的な商品のようなプリプリ食感ではない。そこにコチュジャンベースで真っ赤なペースト状のタレをからめて仕上げる。ビビン麺なので軽く舌がしびれる程度の辛さはあるが、リンゴ濃縮果汁入りでほんのりとした甘みや酸味もあって食べやすい。タレの中に小さく刻まれた海苔がはいっている。辛口の冷し中華という印象。
辛さ★+ 舌にピリッとくるけど、甘みもあり心地よい旨辛という印象。
오뚜기OTTOGI「진라면순한맛Jin Ramen(Mild)」
朱色をした粉末スープで作るつゆは、「Mild」と表記されているがスッキリとした辛みが感じられる韓国チゲ風。日本のピリ辛商品よりは辛い。麺は楕円形断面でじゃがいも澱粉入りでプリプリ強弾力な太ちぢれで、モチモチ感もある。かやくの小袋もついていて、白菜・牛肉風植物たん白・にんじん・ねぎ・しいたけ・わかめ。
辛さ★★ 基本通常のスピードで食べることはでるけど、食べ進めるにしたがい舌先がピリピリしてきた。
오뚜기OTTOGI「진라면매운맛Jin Ramen(Spicy)」
粉末スープで作るつゆは、「Spicy」と表記されているとおり舌がピリピリくる辛口。色はそれほど赤くない。麺は楕円形断面でじゃがいも澱粉入りでプリプリ強弾力な太ちぢれ。かやくの小袋もついていて、白菜・牛肉風植物たん白・にんじん・ねぎ・しいたけ・唐辛子入り。
辛さ★★★ 舌先はかなりピリピリくる。でもそれなりに通常速度で食べられるレベル。顔が熱くなるほどの辛さではない。
오뚜기OTTOG「열라면Yeul Ramen(熱ラーメン)」
粉末スープのみで作るつゆは、「熱」という名に負けない舌がしびれるような辛さだが、わりと早く辛さに慣れた。長円形断面でよくちぢれた極太麺は、じゃがいもでん粉使用で韓国らしいムチムチプリプリした強弾力がある。かやくとしてドライ野菜の小袋がついていて、長葱・シイタケ・チンゲン菜・人参入り。韓国ラーメンのスタンダードともいえる作りだ。
辛さ★★+ 舌は少し痛いけど、休み休み食べなくてもいける。でも鼻水は出てきた。
【今回の即席レビュー(5点満点)】
辛さ 旨さ
辛ラーメン ★★★ ★★★+
ノグボナーラ ★★★+ ★★★★+
ノグリ激辛 ★★★+ ★★★★
辛ラーメンLIGHT ★★★ ★★+
辛ラーメンキムチ ★ ★★★
ブルダック炒め麺 ★★★★ ★★★★
カルボブルダック ★★★+ ★★★★+
ブルダックキムチ ★★★+ ★★★+
ブルダック2× ★★★★+ ★★★+
トゥンセラーメン ★★★★★ ★★★
ホットタッカルビ ★ ★★★★
パルドビビン麺 ★+ ★★★+
ジンマイルド ★★ ★★★
ジンスパイシー ★★★ ★★★
熱ラーメン ★★+ ★★★+
爆裂辛麺激辛 ★★★★ ★★★★
<この商品が好きな人にはこんな一品もオススメ!>
◆日清食品「爆裂辛麺激辛ラーメンもっちり極太麺とクセ旨コク辛スープ」
真っ赤な大量の粉末スープで作るドロドロ感のあるつゆは、ひと口目から舌がビリビリするほど辛い。とてもいつものスピードで食べることはできない。辛さの背後には魚介系の旨みがある。幅約4ミリ×厚さ約3ミリあるぶっとい麺は嚙みごたえのあるシガッシリコシコ食感。見た目はほぼうどんだ。
辛さ★★★★ 舌はかなり強烈に痛い。食べているうちに顔も少しずつ熱くなってくるが、過去最も辛かったものと比べるとまだ食べやすい。しかし最後の最後まで辛いままだった。
文/大山即席齋