■連載/阿部純子のトレンド探検隊
生成領域が無数の線で広がる「ラウンドリーダ放電」で史上最高のOHラジカル量を実現
1997年に住環境の「空気浄化」をテーマに研究がスタートした、パナソニックの「ナノイー」技術。住空間や、エアコン、空気清浄機、冷蔵庫、洗濯機などの家電、浴室換気乾燥機といった住宅設備にいたるまで34製品に搭載されており、自動車、鉄道、オフィス空間にも多数導入されている。
「ナノイー」は研究開始から24年間進化を続けており、2016年にはOHラジカル量10倍の「ナノイーX」が誕生、2019年にはOHラジカル量20倍と、より高濃度に進化、そして今年、OHラジカル量100倍の「ナノイー」史上最高となる新「ナノイーX 」が登場した。
ナノイーとは水に包まれたナノサイズの微粒子イオンのこと。空気中の水分を集め高電圧を加えることで生成される。水に包まれていることが他社にはない、パナソニックのナノイー最大の特長で、OHラジカルが長寿命であるため、空間の隅々まで届く。
効果の決め手となるOHラジカルは、花粉、アレル物質とさまざまな物質を変性して抑制する。OHラジカルが菌に届き、菌の水素を抜き取り、菌を抑制するという仕組み。OHラジカルが多ければ多いほど多くの菌と反応することとなり、効果が上がると考えられる。
新「ナノイーX 」はOH ラジカル量がナノイー史上最高の100倍になった。「ナノイー」ではOHラジカル量4800億個/秒で、「ナノイーX」でその10倍の4兆8000億個/秒に、新「ナノイーX 」ではさらにその10倍となり、「ナノイー」と比べると100倍の毎秒48兆個の発生量となる。
100倍の発生を実現させたのが新しい放電技術。下記の図の紫色がOHラジカルの生成領域で、「ナノイー」は生成領域が点だったが、「ナノイーX」では4本の線状に広がっている。新「ナノイーX」では無数の線となり、OHラジカルの生成領域が面状に広がった。これが「ラウンドリーダ放電」で、山形大学 東山禎夫名誉教授と共同で新たに開発した技術だ。
ラウンドリーダ放電で重要なのは電極と対極板の位置にある。位置ズレしてしまうと、放電が偏り、OHラジカル発生量が減ってしまう。位置ズレしても放電が安定する特許技術の放電設計と、ミクロンオーダーのこだわりで、髪の毛1本分のズレも許さない新工法の生産技術により達成することができた。パナソニック アプライアンス社 常務 技術担当 兼 技術本部 本部長 宮下充弘氏が手にしているのが新「ナノイーX」のデバイス。
新「ナノイーX」による3つの効果の進化
〇花粉・アレル物質のスピード抑制
年中飛散し、家に持ち込まれる花粉や、夏から秋に大量発生するダニ由来のアレル物質は、在宅時間が増加しており対策が急務。また、換気をすることが習慣化された昨今、7割以上の人が「換気時の花粉の侵入」が気になっているという結果もある。コロナ禍でペットを新たに飼う世帯が増加しており、室内のペット由来アレル物質への対策意識も高まっている。
従来の「ナノイーX」では、30種類のアレル物質の抑制効果を実証してきた。スギ花粉の抑制時間の比較では、新「ナノイーX」は「ナノイーX」に比べて抑制時間のスピードが8倍に上がった。ナノイーを暴露することで、内部を破壊することが確認され、花粉の外側(外皮)のCryj1だけでなく、内部(芯の細胞質)にも存在するCryj2まで分解する。
また、ダニの死骸やネコ由来のアレル物質も、6時間で99%以上抑制。新「ナノイーX」は 「アレル物質」を1時間でスピード抑制する。
〇スピード脱臭効果の進化
「ナノイーX」では、タバコ臭、ペット臭、生乾き臭、焼肉臭、汗臭、世代別臭気など12 種類の脱臭を実証してきた。加齢臭での脱臭時間の比較では、新「ナノイーX」では従来の「ナノイーX」と比較して、脱臭スピードが8倍に上がった。
〇カビのスピード抑制
ウイルス対策として加湿機で湿度を上げる対策をしている家庭も多く、食べ物、壁、窓にもカビが発生しやすくなっている。「ナノイーX」では8種類のカビに対して実証。その中の一つ、スズカビで抑制時間を比較すると、「ナノイーX」と比べ新「ナノイーX」では抑制スピードが4倍に上がった。
新「ナノイーX 」搭載第一号の加湿空気清浄機「F-VXU90」
新「ナノイーX 」搭載の第一弾製品となるのが、9月21日発売の加湿空気清浄機「F-VXU90」(価格はオープン/想定価格10万7000円前後)で木目調とホワイトの2色展開。
新「ナノイーX」搭載で、花粉99%抑制時間が同社従来品比1/4となり素早く抑制。6畳空間の実験では、従来のナノイーXでは12時間かかっていたものが、新「ナノイーX」では約3時間で花粉を99%抑制することができた。
従来から搭載していた「3Dフロー花粉撃退気流」で花粉を効果的に集塵。空気中に漂う汚れはさまざまな大きさがあり、花粉は30μmと比較的大きく、落下スピードが速いため、空気清浄機が吸引するのが難しい。床に落ちた花粉は人が動くと舞い上がり、再度落下を繰り返すので、床上30㎝が最も花粉が多いゾーンとなっている。
床上30㎝をパワフルに吸引できるのが「3Dフロー花粉撃退気流」で、昨年から搭載しており、2枚のルーバーから3方向の立体的な気流で部屋全体を循環することで、効果的に花粉を集塵することができる。
2019年から対応している「ミルエア」アプリは、部屋の空気の状態の確認、お手入れのサポートなどの機能を搭載。昨年から「わたし流運転」というユーザーの気になる汚れの種類、度合いに応じて自動運転し、理想の空気環境を作る機能を搭載。1週間ごとに見直しをすることで、より理想の空気環境へ近づけることができる。
【AJの読み】生活の身近に存在する「ナノイー」がさらに進化
エアコン、冷蔵庫、加湿機と家の中だけでも「ナノイー」搭載製品を見つけることができるが、自動車のカーエアコン、JR東日本、西武鉄道、小田急電鉄、京王電鉄などいつも使う鉄道の空気浄化システムにも「ナノイー」が内蔵されており、オフィス、商業施設、コンビニ・スーパー、飲食店、ホテルなどの施設にも導入され、「ナノイー」は日常生活の中で、身近な存在となっている。
「ナノイー」比100倍のOHラジカル量を放出する新「ナノイーX」も、加湿空気清浄機「F-VXU90」を皮切りに今後、続々と搭載製品を増やしていくとのこと。新「ナノイーX」の登場に伴いグレード表示も一新しており、製品購入の際に、どのナノイーが搭載されているか判別しやすくなっている。
文/阿部純子