【百獣の王】×【巨匠が描く日本再生マンガ】今の日本人が見失っている「良い生き方」を教えてくれる
芸能界デビュー、39歳。〝百獣の王〟武井壮さんを支えたバイブルは、自分の弱さに気づかせてくれる一冊のマンガだった。
初めて『サンクチュアリ』を読んだのは17歳の頃だったと思います。当時は経済的にかなり苦しい生活をしていたので、やりたいわけではない勉強をして空いた時間はトレーニング理論を研究する毎日でした。「特待生で大学に行くんだ!」とがむしゃらに生きていた時期。自分のやりたいことで生きていこうと思っていたけど、世間知らずの子供でお金もない。いつか有名になるという夢も現実味を感じられず苦しい時期だったかもしれません。
だからこそ『サンクチュアリ』の主人公の北条と浅見、カンボジアの難民キャンプから生還したふたりの男が自分たちの力で国を変えていこうとヤクザと政治家という正反対の立場を突き進む姿に、すごく支えられました。自分の人生は自分の力で変えていくしかないと強く実感させられました。
でも、自分を信じて突き進んでいってもうまくいかないことはありました。そのひとつがゴルフ留学です。僕は大学卒業後に特待生枠でアメリカにゴルフ留学したのですが、1年でUSPGAのプロになるという目標が果たせず、日本に戻ることになった。ほかにもたくさん挫折をしてきましたよ。最終的には芸能界につながればいいと信じて進んだ道だったけど、不安を感じることもありました。芸能界にデビューしたのは39歳ですからね。
それでもこのマンガに登場する漢たちの生き様を見ていると、「不安はあっても不満はないように生きよう」と思えた。彼らが背中を押してくれたような気がします。
主人公のふたりはヤクザと政治家という正反対の道を選択しましたが、彼らは何と、それぞれがどちらの道を進むかをじゃんけんで決めています。というのも、ふたりの目的は「生きる希望を見失ってしまった日本を再生すること」。目的を達成することが重要なのであって、生きる道はどんなものでも構わない。〝やる〟か〝やらない〟かが大事だというんです。この描写に影響を受けて、僕も大学時代にアスリートの道を進むか、法律家の道を進むか悩んだ時、サイコロで決めました。どんな道に進んでも僕は〝やる〟って信じていたから、どっちに進むかは本当にどっちでもよかった。
自分の人生を変えられるのは自分しかいない。どの道を行くかは重要じゃないんです。自分の幸せのためには、自分自身が“やる”しかない。そしてどんなことでも、毎日少しずつ前に進むこと、鍛えて磨いて成長することこそが、人間が幸せになるために重要なことだと思います。
百獣の王・日本フェンシング協会会長 武井 壮さん
1973年生まれ。97年、日本選手権十種競技優勝。YouTubeチャンネル「百獣の王国」を日々更新中。
武井さんのイチオシはこの作品!
『サンクチュアリ』
(原作・史村翔、作画・池上遼一、全12巻、小学館)
カンボジアの内戦で両親を亡くしたふたりの少年、北条彰と浅見千秋。日本に帰国した彼らが見たのは腐敗した日本社会だった。北条はヤクザ、浅見は政治家として日本を変えるために行動を開始する。
イチオシ作品をこんな人に薦めたい!「このままじゃダメだと気づいてしまった人」
社会のレールに沿って生きてきたけれど本当にこのままでいいのかと疑問を抱いている人や、肩書やお金ではなくもっと人間として本質的な幸せを追求したいと気づいた人にこそ読んでほしいです。
取材・文/峯 亮佑