アキレスといえば、小学生に人気のシューズ「瞬足」などをリリースするメーカー。素材の開発力やプラスチック加工技術を生かして、実はゴムボートなど防災用ギアなどの開発にも力を入れている。
今回、テスト乗船できたのは高速救助ボート「ARD730」。船体は樹脂製で成形された船底の周りをゴム製のエアチューブで覆った形状を採用。波の立つ荒天の中でも高速航行をするため、船底をV字の形状にしつつ安定感をもたせるために周囲をチューブで覆っているという。
最大で約75㎞/hの速度が出せるほか、操船者が座るシートにはサスペンションが採用され、高い波の中でも安定した操船が可能。
実際に乗ってみると、そのスピードにかなり驚く!全長が7mほどとそれほど大きなサイズではないため、不安定さを感じるかと思いきや水面を滑るように進んでいく。安定感はかなりある。また視線が水面に近いせいか、疾走感がものすごく高くてただただ楽しんでしまった。・・・しかしこのボート、「救助活動」のためのもの。
安定感&スピーディな航行は素早く救助現場に向かうためだし、視線が水面に近い(船べりが低い)のはスムーズな救助活動のため。不謹慎ながら単純に楽しんでしまった自分を恥じつつ、救助用ボートの性能の高さに感じ入ってしまった。
また開発艇のためまだ試乗はできなかったものの、車イスやストレッチャーを直接乗せられ、最大で20名の救助も可能なボートもあり。このようにさまざまな状況に合わせたレスキューボートを開発している。
さらには災害時に役立つエアーテントも紹介されていた。このように畳まれた状態からわずか5分ほどエアーを送ることで、あっという間に完成する。
サイズはタテ6m × ヨコ6m ×高さ3mとかなり大型のもの。これはすでに20年以上、病院や警察、消防などで使用されているもの。最近では感染症対策のテントとしても使用されているという。別に鉄製のフレームなども必要なくエアーだけで立てられるので組み立て撤収がかなり簡単。
内部にはエアコン取り付けができ、さまざまなシチュエーションで快適さを保つことができる。ベッドなどを並べれば一般的な大型テントとしての使用ができるほか、テントの内部は仕切りがあり、手前を待合室と奥側が診療室という使い方もできる。また密閉性が高く外部に汚染された空気を出さない隔離室にもなる。
またあらゆる素材を開発するメーカーとして災害時に使用できるマットレスも企画開発。このマットレスは空気を抜いた状態でコンパクトに収納でき、使用する際には膨らませてクッション性と保温性を確保できる。個人用というよりは避難所などで使用するものだが、長引く避難生活での負担を少しでも軽減してくれるツールとなりそうだ。
地震や大雨、これからの季節は台風など、災害に対しての備えはしすぎることがない。「素材メーカーとして、社会に貢献できる製品を開発しています。さまざまな状況下にある人達をどうやって救うのか、また救ったあとにどうするのか、そういう製品をこれからも作っていきたい(アキレス 伊藤守社長)」。
各地で災害が頻発する中、防災グッズを個人や家庭で準備することも安心につながるが、自治体などにこのようなものが準備されていればさらに安心できる。
文/今 雄飛(こん・ゆうひ)
ミラソル デポルテ代表。スポーツブランドのPR業務を行うかたわら、自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン