台風や大雨などの自然災害が発生した際、行動を決める指針となるのが避難情報です。『避難指示』とガイドライン改正前に使われていた『避難勧告』の違いは何なのでしょうか?現在使われている避難情報のレベルもしっかりと理解して、正しい判断に役立てましょう。
避難が必要な避難情報の段階
災害時に自治体から発令される避難情報は、警戒レベルによって5段階に分かれています。中でも実際に逃げる必要があるのは『警戒レベル3』以上です。
レベル4の『避難指示』を含む3段階の避難情報について、それぞれの意味や必要な行動を見ていきましょう。
【警戒レベル3】高齢者等避難
『高齢者等避難指示』は災害の発生が予想され、逃げるとき時間がかかってしまう人に避難を促す段階です。対象者としては高齢者や体の不自由な人・妊娠している人・小さな子どもなどが該当します。
施設の従業員など支援する立場の人も、一緒に逃げなければなりません。高齢者等避難指示が出たら当てはまる人は速やかに準備を進め、被害が及ばない場所へ向かう必要があります。
普段から災害時に備えてアンテナを張り、発令されたら早めに動けるようにしておきましょう。
災害によって被害が出る可能性があるときに発令されるため、対象者に該当しない人でも慎重な行動が必要です。必要に応じて外出を控える・避難の仕方を確認するなど、すぐに逃げられる準備をしておきます。
危険度が高いと感じるなら、警戒レベル3の段階で逃げ始めた方が安心です。
【警戒レベル4】避難指示
4段階目の『避難指示』が出た場合は、被害が深刻になるリスクが高く居住者に危険が及ぶ状態です。発令された地域に住んでいる人には速やかな行動が求められます。
原則として全員が避難指示の段階で危険な場所から離れなければなりません。自己判断で「まだ大丈夫だろう」と油断せず、避難指示が出たらできる限り早く安全な場所へ逃げましょう。
避難先は小中学校や役所など、安全性の高い場所がエリアごとに指定されています。普段から避難場所を確認して安全なルートをいくつか確保しておくと、いざというときに安心です。
家族に体調の悪い人がいるといった事情がある場合は、地域が離れた親戚や知人の家など気を張らずに過ごせる場所を確保しておいた方がよいかもしれません。
【警戒レベル5】緊急安全確保
災害発生の危険度がレベル4よりもさらに高まった状態です。すでに災害が発生している・発生していてもおかしくない状況が確認されており、生命の危機もある場合に発令されます。
緊急安全確保は避難を促す指標ではありません。警戒レベルが5まで上がってしまったら、安全に逃げられない可能性が高い状態です。
避難場所へ移動する道のりで安全が確保できない場合は、むやみに避難場所へ移動しようとすると命を落とす危険もあります。家や施設などそのときいる場所の中で最も安全なところへ移動しましょう。
水害なら上の階に行く・水が押し寄せる場所から遠ざかるなど、状況に応じて危険から離れます。
これまでの「避難勧告」と「避難指示」の違い
避難指示と混同されやすい言葉に『避難勧告』があります。しかし現在、避難勧告は使われていません。新しい避難情報への変更や、避難勧告と避難指示の違いについて理解しておきましょう。
2021年5月から「避難勧告」は廃止
近年増加する自然災害の経験を踏まえ、地域住民の安全を守るため2021年5月に避難情報のガイドラインが改定されました。災害発生の危険性や住民が取るべき行動を分かりやすくするのが改正の目的です。
特に、警戒レベル4のとき状況ごとに使われていた『避難勧告』と『避難指示』は、違いが分かりにくく住民の混乱を招いていました。改定後からレベル4が一本化して避難指示だけになり、避難勧告は使われなくなっています。
台風や大雨がひどいときは災害情報に注意し、避難指示までの段階で逃げられるように準備しておきましょう。
「避難勧告」は「避難指示」より危険度が低かった
廃止された『避難勧告』は避難指示と同じくレベル4でしたが、詳しい意味合いは違いました。災害が起こる懸念があると判断したとき、避難を促すために発令されるのが改定前の『避難勧告』です。
災害発生や人的被害の可能性が高いときは、より高い危険度を意味する『避難指示』が発令されていました。避難勧告と比べて命の危険が大きく、緊急性も高いときに発令されるものだったのです。
しかしどちらも同じ警戒レベルで発令されたため、それぞれの意味を正しく理解していた人は多くありません。結果として逃げ遅れにつながった事例もあったため、改訂で一本化されたという背景があります。
避難するときに押さえたいポイント
災害から命を守るために知っておきたい避難のポイントがあります。警戒レベル3上の警報が発令されたとき安全に逃げられるよう、必要な知識を備えておきましょう。
避難先の場所や種類
避難先には一時的に身を守るための『指定緊急避難場所』と、災害の危険がなくなるまで滞在することを想定した『指定避難所』の2種類です。
『指定緊急避難場所』には公民館や役場などが多く、地震や津波・洪水など災害の種類によって施設の種類が違います。『指定避難所』として多くのエリアで選ばれるのは小中学校です。
いずれも地方自治体のホームページや地域のハザードマップを見ると、詳しい情報が記載されています。逃げるときに慌てないよう、普段から場所を確認した上で安全なルートを確保しておきましょう。
以下のページからも指定緊急避難場所の情報を確認できます。
避難するときの持ち物
警戒レベル3以上になったとき慌てないためにも、避難するときに持っていくものの準備は大切です。災害に備えて用意しておきたい持ち物として以下が挙げられます。
- 飲料水や食料品
- 貴重品
- 包帯・ばんそうこうなどの救急用品
- 防災頭巾や軍手など身を守るアイテム
- 携帯ラジオやスマホ
食料品はカップ麺やビスケット・乾パンなど、軽くて日持ちのするものをそろえておきましょう。持病がある人は救急用品として常備薬も欠かせません。
頭のケガは致命傷につながるため、ヘルメットがあるとより安心です。必要なとき充電切れで困らないよう、携帯ラジオには予備電池・スマホには充電器やモバイルバッテリーをセットにしておきます。
最低限の持ち物がそろったらリュックにまとめ、分かりやすい場所に保管しましょう。準備に時間を取れない場合は、必要なものが入った防災リュックを買うのも一つの手です。
避難するか迷ったときの判断基準
地域全体の住民が安全な場所へ逃げるべき状態で避難指示が出るため、基本的には避難情報に従って判断しましょう。経験から「以前は大丈夫だった」と事態を軽く見てしまうと、思わぬ危険が及ぶ場合もあります。
避難が早すぎて困ることはありません。危険を感じたら警戒レベル3になった段階で逃げ始めた方が安全です。また、大規模な災害だと状況の把握が遅れて、必要な段階で避難指示が出ない場合もあります。
避難指示が出ていなくても、次の状況を確認したら安全な場所へ移動しましょう。
- 自宅やそのときいる建物が激しく損壊している(または余震などで倒壊の恐れがある)
- 近くで火事や土砂災害などの危険が起こっている
災害ではわずかな油断や判断の遅れが命を失う原因になります。自分の命を守り、大切な家族の安全を確保するためにも、早めに行動する心掛けが大切です。
避難情報を知る手段
災害が起こったときの行動を決める避難情報は、どのような方法で確認できるのでしょうか?避難指示までの段階で正しく行動するためにも、避難情報を見る手段を確認しておきましょう。
自治体からの伝達を待つ
避難情報を発令するのは自治体です。テレビやラジオはもちろん防災行政無線や広報車など、外にいる住民にも分かるような伝達手段を用意しています。
「○○地区の住民は全員避難を開始してください」といった内容で呼びかけるのが基本です。インターネット上からも確認できるので普段から自治体のホームページを見る習慣を付けておきましょう。
緊急時には根拠が不明なうわさが出回ることがあります。中には信じて行動するとかえって危険な情報も混じっているため、政府や自治体など公的機関が発表する情報を参考にするのが賢明です。
スマホ通知の活用が便利
現在はインフラの一つとも呼べるほど普及しているスマホは、災害時にも役立つツールです。ホームページを確認するだけでなく、通知を受け取ると素早く状況を判断できます。
docomo・au・SoftBankの3大キャリアのスマホは、申し込みをしなくてもデフォルトで避難情報が配信される仕組みです。緊急性の高い情報を全国に届ける『Jアラート』に基づいて、災害の情報を届けています。
格安SIMでも端末が対応していれば避難情報の受信は可能です。非対応ならYahoo!などの情報サイトの通知をONにしておくことが大切です。
構成/編集部