生きていれば一度は「なぜこんなにもイヤなことばかり続くのか」と、頭を抱えたくなる経験をしたことがあるはず。嫌なことが続くと「なんで自分だけ?」とさらに気持ちも沈みがちだ。そんな状況を言い表したのが、「一難去ってまた一難」。
本記事では、「一難去ってまた一難」という言葉の正しい意味や類語、例文を併せて解説する。同じような意味を持つ類語も併せて理解しておくと、表現の幅が広がるはずだ。
「一難去ってまた一難」とは?
「一難去ってまた一難」の読み方は「いちなんさってまたいちなん」。言葉の意味をそのまま表現したことわざだが、まずはその意味と実際に会話の中で使われる例を見ていこう。
「次々に災難が襲ってくる」という意味
「一難去ってまた一難」の「一難」とは、読んで字のごとく「一つの災難、困難」のこと。つまり、この言葉は「一つの災難が過ぎても、また次の災難がやってくる」という状況を表す。
災難が次々に起こる様を表現するときに用いられる言葉だが、「一つの災難をようやく終えた後で」というニュアンスを含んでいるため、本来は「災難が重なって(同時に)起こる状況」とは異なる意味を持つ。
また、「一難去ってまた一難」な状況だけでなく「次々に不幸に見舞われて心が休まらない状態」や「連続して起こる不幸に困惑し疲弊している様」など、「心の状態」を表現するときにも用いられる。
「一難去ってまた一難」を使った例文
【例文】
「仕事のトラブルが解決したと思ったら、一難去ってまた一難、部下のミスで上司に怒られて散々だったよ」
「友人と楽しみにしていたランチでお店を訪れたが、まさかの定休日だった。気を取り直して近くのお店に行くも、閉店していた。今日は一難去ってまた一難だ」
「盲腸の手術を終え、やっと退院したが、次の日に転んで足を骨折した。まさに一難去ってまた一難だよ」
「地震の被害がようやく落ち着いたところで、今度は台風が直撃した。一難去ってまた一難とはこのことか」
「一難去ってまた一難」の類語
次に、「一難去ってまた一難」と似た意味を持つ類語を解説する。いずれも災難が立て続けに起こる状況を例えている表現だが、その微妙なニュアンスの違いについても併せてチェックしてほしい。
火を避けて水に陥る(ひをさけてみずにおちいる)
「火を避けて水に陥る」は、「火から逃げようとして水に入るも、溺れてしまうこと」を表現したことわざ。火から焼かれずに逃げられたものの、水に飛び込んで溺れてしまい、また次の災難にあってしまうことを表す。
虎口を逃れて竜穴に入る(ここうをのがれてりゅうけつにいる)
「虎口を逃れて竜穴に入る」は、「虎に食べられそうになりやっと逃れたと思ったら、今度は竜の穴に入ってしまった」という、次々に災難が起こることを例えたことわざ。「入る」は「はいる」ではなく「いる」と読む点を注意しよう。
泣きっ面に蜂
「泣きっ面に蜂」は、「泣いていて顔がむくんでいるところに、さらに蜂に刺される」という意味のことわざ。「最初の災難が終わっていない状態でさらに災難が重なる」状況を表すため、「一難去ってまた一難」とはニュアンスの違いはあるが、連続して災難が起こるときの表現として多く用いられている。
踏んだり蹴ったり
日常生活でも耳にする機会の多い「踏んだり蹴ったり」という慣用句。「泣きっ面に蜂」と同様、「重ね重ねひどい目にあう」という意味を表す。元々は、当人ではなく相手が「踏んだり蹴ったりしてひどい目にあわせる」という意味で使われており、時間と共に自然と今の表現へと変化していった。
英語ではどのように表現する?
最後に、「一難去ってまた一難」の英語表現を紹介しよう。その災難の状況によってもさまざまな表現が用いられるが、英語でも日本と同じように「一難去ってまた一難」な状況を例えた有名なことわざがある。
「一難去ってまた一難」は英語で「Out of the frying pan into the fire」
「次々と災難が起こる様」を例えた英語表現では、「Out of the frying pan into the fire(フライパンから飛び出て火に入る)」を用いるのが一般的。「やっとフライパンの熱さから逃れられたと思ったら、今度はもっと熱い火の中に入ってしまった」という意味だが、単純に災難が続いてしまうだけでなく「状況がさらに悪化していく様」を表しており、災難続きの状況下でのやるせない心情を伝える表現としても、有効的な例えだ。また、「Misfortunes never come alone(不幸は決して単独で来ない)」という表現も、「不幸は重なって起こる」という意味を例えるときによく使われる。
文/oki