2018年4月の酒税法改正により、酒税率の見直しが決定した。すでに2020年10月にはビールや第3のビールなどの税率が変更されたが、2026年までにさらなる税率変更が予定されているのをご存じだろうか。
本記事では、今後の酒税変更スケジュールをはじめ、酒税とはそもそもどのような税なのか、そして酒税法の改正内容についても詳しく解説する。愛飲家にとって身近な税金である酒税について、この機会に理解を深めよう。
2018年の酒税法改正で酒税の税率が変更に
日本では、室町時代から酒税の歴史が始まった。今からおそよ100年ほど前、酒税は全体の税収の40%を占める重要な財源だったという。しかし、若者の酒離れが進む現代では、酒税の課税額が1994年度をピークに減少を続けており、国税全体に対して酒税の税収割合はわずか2%程度。このような背景から、2018年に酒税法改正が行われ、酒税の税率が変更されることになった。
そもそも酒税とは?
スーパーやコンビニで缶入りのアルコール飲料を買う際、我々は消費税の他にも酒税を負担している。酒税はアルコール度数1%以上のアルコール飲料にかかる税金。消費税と異なり、商品代の中にいくら酒税が含まれているのかは店頭のプライスカードに明記されていないため、普段意識することはあまりないだろう。酒税は酒の製造者(または輸入者、販売者)が国へ納めることを義務付けられているものだが、この金額は商品価格に反映されるため、消費者は間接的に酒税を国へ納めていることになる。
酒税の変更は2026年までに段階的に実施される
今回の酒税法改正により、すでに2020年10月にはビールの税率引き下げと第3のビールの税率引き上げが行われた。今後は2023年10月、2026年10月にも段階的な酒税変更が予定されており、ビールと第3のビールに加えて発泡酒、チューハイ、日本酒、ワインの税率も変わる。具体的に酒税がどう変わるのかについてはこの後詳しく解説する。
酒税の税率は酒の種類によって違う?
酒税法で定められる税率は、酒の種類によって異なる。ここからは、酒税法上の酒の分類方法と、今回の酒税法改正によって変更となったビールの定義について解説していこう。
酒税法上の酒の分類によって税率は変わる
酒税法では、酒を製法上の特徴から大きく4種類に分類しており、さらにそこから枝分かれするように品目の区分が存在している。この4つの酒の分類と品目の詳細は以下の通り。
①発泡性酒類:ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類
②醸造酒類:清酒(日本酒)、果実酒(ワインなど)、その他の醸造酒
③蒸留酒類:連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ
④混成酒類:合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒
酒税法では、すべての酒に一律の税率が適用されるわけではなく、酒の品目ごとに異なる税率が定められている。
2026年までにビール系飲料の酒税率は一本化
発泡酒や第3のビールは酒税の税率が低いため、ビールと比較して割安な値段で購入できる。しかし、今回の酒税法改正では、酒類間の税率に公平性を持たせるために「ビールの定義変更」、そして「ビール、発泡酒、第3のビールのビール系飲料の酒税率の一本化」が行われることになった。
酒税法上のビールの定義付けでポイントとなるのが、「麦芽の使用比率」と「副原料」の2つ。酒税法改正前までは「麦芽の使用比率が原料の67%以上のもの」がビールと定義されていたが、改正後は「麦芽比率50%以上」に条件が変更された。
また、副原料については、国で認められた原料以外のものが添加されると発泡酒として分類されるが、今までビールの副原料として使用できるものは限定的だった。改正後は新たに果実や香辛料、ハーブ、お茶、かつお節などがビールの副原料として認められるようになった。
このビールの定義変更が後押しし、ビールを製造しているメーカー各社はいわゆる「クラフトビール」と呼ばれる個性的な味わいを持つビールの開発に力を注ぎ始めている。
酒税法改正で酒税が上がる酒、下がる酒
では、実際に今回の酒税法改正によって酒税はどう変わるのだろうか。最後に、酒税法改正で酒税が上がる酒と下がる酒を見ていこう。
発泡酒やチューハイは酒税が上がる
酒税法改正によって酒税の値上げが決定しているのが、近年消費量が伸びている、発泡酒、第3のビール、チューハイ、ワインの4品目。このうち、第3のビールとワインについては2020年10月に一度目の酒税変更が行われたが、今後さらなる増税が予定されている。
一方、発泡酒とチューハイについては2018年、2023年には酒税は据え置き、2026年10月に酒税が変更となる。酒税変更のスケジュールと税額の推移は以下を参照してほしい。
【350mlあたりの酒税】
発泡酒:46.99円(改正前)→ 54.25円(2026年10月)
第3のビール:28円(改正前)→37.8円(2020年10月)→46.99円(2023年10月)→54.25円(2026年10月)
チューハイ:28円(改正前)→35円(2026年10月)
ワイン:28円(改正前)→31.5円(2020年10月)→35円(2023年10月)
ビールと日本酒は酒税が下がる
反対に、酒税法改正により酒税が下がる酒もある。他のビール系飲料と比べて割高となっているビールと、需要が減退している日本酒だ。この酒税変更によりビールとその他のビール系飲料、そしてワインと日本酒はそれぞれ酒税が同額に調整される形となる。今まで複雑だった税率の分類が、今後はよりシンプルになる。
【350mlあたりの酒税】
ビール:77円(改正前)→70円(2020年10月)→63.35円(2023年10月)→54.25円(2026年10月)
日本酒:42円(改正前)→38.5円(2020年10月)→35円(2023年10月)
文/oki