コミュニケーションが苦手でも恋愛を楽しみたい。
Netflixオリジナルシリーズ『ユニークライフ』は、自閉症スペクトラム障がいを抱える青年が主人公の青春コメディ。
ファイナルとなるシーズン4は2021年7月9日より配信開始した。
あらすじ
自閉症スペクトラム障害を抱える高校3年生サム・ガードナー(キーア・ギルクリスト)にとって、他人とのコミュニケーションは苦手分野。
相手の仕草や表情から気持ちを想像したり、微妙な空気を読むことが難しいのだ。
しかしサムも思春期真っ只中、恋には大いに興味があるお年頃。
女の子と仲良くなって恋愛がしたいけれど、どうしてもうまくいかない。
心配症&過干渉気味の母親エルサ(ジェニファー・ジェイソン・リー)は「恋愛はまだ早い」と猛反対だが、エルサ以外の周囲の人々に後押しされたサムは、恋愛の練習をスタートする。
まず手をつけたのが、“徹底的な調査&分析”。いずれもサムの得意分野だ。
ネットで“上手な口説き方”の動画を観てはメモ、学校で同級生のやり取りを観察してはメモ、妹ケイシーや親友ザヒートに女心のポイントをインタビューしてはメモメモ……。
失敗を繰り返しながらも、サムは地道な努力を積み重ねていく。
高校生だったサムが大学に進学し、愛について学びながら自立するまでの過程を描いてる。
見どころ
思いやりとは、相手の立場になって気持ちを推し量ったり、共感を示すことだと言われている。
愛情豊かな人間関係を円滑に築くためには、とても大切なものだ。
サムにとっては“思いやる”ということが難しいのだが、だからと言って彼が決して愛情や優しさのない人間という訳ではない。
家族や恋人のぬくもりを感じながら一緒に過ごしたいし、相手を幸せにしたい、幸せでいて欲しいという心はちゃんと持っている。
要はその伝え方や受け取り方という“技術面”が、非常に苦手ということ。
とても不器用だが、常に純粋で正直で一生懸命なサム。
バイト先の家電店で何とか口説いた女性との初デートは、なんと家電店の駐車場に設置した簡易テーブルにペットボトルと宅配ピザを並べての“ディナー”。
一周回って、お洒落なレストランよりも楽しいかもしれない……。
不特定多数とのコミュニケーションは苦手とするサムだが、周りの人間関係には何だかんだ恵まれている。
自称“恋愛の達人”の親友ザヒードや、妹なのに面倒見がよく頼りになるケイシー、そしていつもサムの幸せを願ってそばで見守る両親など、サムの本質をよく理解して愛してくれている身近な人たちとの心あたたまる交流も見どころ。
本作は、表面的なコミュニケーションのテクニックよりも、もっと本質的な心のあり方や生き方に目を向けたいと思わせてくれる。
そしてもう一人の主役と言ってもいいのが、サムから子離れできない母親エルサ。
子供に起こったことは全て母親の責任にされがちで、母親の愛こそ万能で偉大だと持ち上げられるのに、同時に疎まれたり邪険にもされる。
確かに過干渉で心配症なところはあるけれど、それはサムの障がいから逃げることなく誰よりも真剣に向き合い無償の愛情を注ぎ続けてきた反動でもあるため、エルサの扱いは少々気の毒でもある。
母親だって生身の人間だ。誰かに心配してほしいし、気にかけて誉めてほしいと思うことだってあるだろう。
そして一見強気な妹のケイシーもまた、寂しさを抱えている。
両親は子どもの頃からいつも障がいを抱えるサムのことばかりを一番に心配し、ケイシーが部活で華々しい成果を収めてもあまり注目してくれない。
ケイシーはサムのことを兄として慕っている分、あまり弱音を吐くことができないようだ。
誰が悪いという訳ではないけれど、たまにとてつもなく寂しくて苦しくなることがある。
家族それぞれが悩みながらも前向きに生きていく様を、時にユーモアを交えながら明るく描いている。
Netflixオリジナルシリーズ『ユニークライフ』
独占配信中
文/吉野潤子