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ランドローバーの本格SUV「DEFENDER」に搭載された、知られざる先進テクノロジーとは?

2021.08.01

7月上旬に開催されたランドローバー「DEFENDER90」と「DEFENDER110」(ディーゼルエンジンモデル)のオフロード試乗会に参加した。「DEFENDER」といえば、一昨年、70年ぶりのフルモデルモデルチェンジをはたして、昨年夏に日本で発売されたオフロードの王様とも言うべき、本格4WDだ。新モデルは、想像以上の売れ行きで、同社担当者曰く「多くのバックオーダーを抱えており、今、購入しても納車は早くて年明けになりそう」とのこと。さらなる高みを目指して挑戦し続ける本格オフローダーの魅力に取り憑かれているファンは多いようだ。

当然のことながら、この卓越したオフロード性能に惚れ込んで購入する人が多いわけだが、今年3月に投入された「DEFENDER90」と5月に投入されたばかりの「DEFENDER110」(ディーゼル版)の走行性能については、あらためて、詳細をお届けするとして、今回は、試乗中に発見した同車に搭載された驚くべきというか、知られざるテクノロジーについて、紹介したい。

エアコンに搭載された最新の空気清浄機能

試乗中に、モニターでエアコンの操作をしている時に驚いたのが、空気清浄機能だ。かつて、モニターに空気清浄機能のスイッチボタンが表示されているクルマを見たことはなかった。クルマのエアコンというと、最近ではフィルターの性能も強化され、室内循環でもある程度の空気清浄効果は期待できるかもしれないが、長引くコロナ禍で運転中にこまめに外気を取れ入れて換気を行っているドライバーは多いはず。そんな時代にあって、この『DEFENDER』に搭載されている空気清浄機能は、あらゆるドライバーにとってうれしい機能であることは間違いない。

早速、同社の担当者に話を聞くと、なんと、パナソニックの「ナノイー」技術が搭載されているという。ちなみに、この「ナノイー」について、簡単に説明すると、空気中の水に高電圧を加えることで生成されるナノサイズの微粒子イオンのことで、パナソニックの家電製品には多く搭載されている。「ナノイー」は、見えない空気の汚れ(花粉、アレル物質など)を抑制する効果をもっており、タバコ臭、生ゴミ臭などの脱臭効果もある。ちなみに、一般的な空気イオン(マイナスイオン)の寿命は、数十秒~100秒といわれているが、「ナノイー 」の寿命は約6倍の約600秒だといわれている(※パナソニック調べ)。水に包まれているため「ナノイー 」は寿命が長く、しっかり広範囲に届くのが特徴だ。

ここまで説明すると「ナノイー」には、いかに高い空気清浄機能があるのか、おわかりいただけたかもしれないが、じつは、家電業界だけでなく、最近では自動車業界からの信頼が熱い技術であることをご存じだろうか。国内の自動車メーカーではすでに、トヨタとレクサスが合わせて40車種、三菱自動車が3車種、スズキが4車種に採用をしており(※海外モデル含む)、ホンダ、スズキ、マツダ、SUBARUでも、オプション品で用意されているのだ。一部のクルマにはエアコンの吹き出し口に「ナノイー」のロゴが出ているものもあるので、もしかしたら気づいている方もいるかもしれないが、家庭用の空気清浄機に搭載されている最新技術が搭載されていることを考えると、あらためて自動車メーカーの開発がそこまでドライバーの健康を意識したところまで進んでいるということがわかるはずだ。

ちなみに、海外メーカーでパナソニックの「ナノイー」テクノロジーを導入しているのはジャガー・ランドローバーだけだが、すでに10車種以上に搭載されている。ちなみに、「DEFENDER」の場合、「ナノイー」技術の空気清浄機能を搭載するには、すべてオプションで「空気イオン化テクノロジー」が20000円、「空気イオン化テクノロジー(PM2.5フィルター付き)」が36000円となっている。

なぜ、ジャガー・ランドローバーは空気清浄化技術に力を入れているのか?

ではなぜ、ジャガー・ランドローバーは海外メーカーでいち早く、「ナノイー」を導入したのか。気になったので調べてみると、実は今年3月に興味深い研究発表をしていることがわかった。同社は、「ジャガー・ランドローバーの先進的な空気清浄化技術の研究において、ウイルスとバクテリアを最大97%抑制することを実証」と題した報道発表を行なっている。

これによると、未来の車内空気清浄化技術について、同社は、世界屈指の微生物学およびウイルス学の研究所であるPerfectus Biomed Ltdと提携し、30分サイクルの再循環モードで車両換気システムを解析するように設計された世界最先端の実験室での密閉型テストを実施したところ、ウイルスや空気中のバクテリアを97%も抑制できるという結果を出したという。また、パナソニックの「ナノイー X」テクノロジーについても、ウイルス検査と免疫プロファイリングを専門とする世界有数の研究機関であり、新型コロナウイルスに対する検査を許可された研究施設のひとつであるTexcellによって、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に関するテストが実施され、2時間に及ぶ実験室でのテストにおいて、99.995%以上のウイルスが抑制されたことが明らかになったとしている。

ではなぜ、ここまでジャガー・ランドローバーが熱心に、車内の空気清浄化技術の研究開発に注力するのか?ジャガー・ランドローバーのチーフ・メディカル・オフィサー、スティーブ・アイリー博士は次のようにコメントしている。

「ジャガー・ランドローバーにとってお客様の健康は何よりも重要なことです。そして今、私たちはこれまで以上に、大切なお客様のケアに役立つ技術的なソリューションを模索しています。当社の専門的なエンジニアが開発し、研究所と連携して実施した今回の独自研究は、有害な病原菌を最小限に抑えて、乗員にクリーンな環境を提供することをお客様に保証するための取り組みのひとつであり、新たなオーナーシップ・エクスペリエンスのスタンダードを打ち立てるものになるでしょう」

つまり、暖房、換気、および空調(HVAC)システムのプロトタイプは、パナソニックの「ナノイー X」テクノロジーを使用して、有害なバクテリアやウイルスを抑制し、この技術を将来のジャガー・ランドローバーの各モデルに反映することで、独自のカスタマー・エクスペリエンスを提供するとしているのだ。

電動化とともに変わるクルマ造りの考え方

電動化によって、クルマ造りは急速に変わろうとしている。電気自動車の時代になれば、当然、自動車メーカー以外の企業の参入も加速するだろう。その先の自動運転の時代になれば、クルマは移動空間となり、仕事をしたり、本を読んだり、食事をしたり、仮眠をとったりといったことをする〝スペース〟になるかもしれない。そんな時代に向けてクルマに求められるのは、いかに快適で、安全で、健康的なスペースであるかということ。

ジャガー・ランドローバーのリサーチ・エンジニア、アレクサンダー・オーウェン氏は、次のようにコメントしている。

「この技術は自然の力を有効活用できる素晴らしい例であり、これによってジャガー・ランドローバーは空気清浄化技術の最前線に立つことができます。OHラジカルは、化学的に最も重要な天然の酸化性物質のひとつであり、何千年もの間、大気を浄化し、汚染物質とその他の有害物質を除去するのに役立ってきました。こうした技術の開発と当社の先進的な研究は、この科学的現象を未来のモデルの室内に活用するための最初のステップなのです」

ちなみに、今回試乗した「DEFENDER」にはとても優秀な急速クーラーボックス(※オプション装備)も搭載されていた。まさに、動くリビングルームのような気分になった。急速に変わっていくクルマ造りの考え方と、それを支える家電メーカーの特許技術。新型「DEFENDER」の圧倒的な走行パフォーマンスに驚きながら、クルマ造りの未来について期待が膨らんだ時間となった。

◆関連情報
https://www.landrover.co.jp/vehicles/defender/index.html
https://panasonic.jp/nanoe/what.html

文/DIME編集部 撮影/望月浩彦

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