現在、円建社債で年率1%あれば非常に高い利回りで、0.1〜0.3%程度が通常である。一方で、仕組債は円建でありながら年率2〜13%程度の非常に高い利回りのものがある。その分非常に高いリスクが内包されており、ネット上で気軽に購入することもできるが仕組みをよく理解の上購入してほしい。
仕組債の種類
通常債券は満期に発行体が倒産しない限り元本が返ってくる。しかし、仕組債はその社債にデリバティブ取引を内包しているため、発行体の信用リスク以外にも設定されている条件による元本毀損リスクがある。基本的には仕組債の発行体は格付A以上のような倒産リスクがほとんどない企業となっているため、発行体による倒産リスクはそれほど気にする必要がないが、設定されている条件は場合によっては元本が毀損するためその条件をよく理解の上購入する必要がある。
その仕組みの複雑性と元本毀損リスク後償還された株式元本まで戻る可能性の観点から、リスクが低い順に並べると主に以下の種類が挙げられる。
①デュアル・カレンシー債
②EB債
③リンク債
次に、それぞれの仕組みについて紹介する。
デュアル・カレンシー債
【条件例】
・発行時に判定為替レートが決定 「○円-3円」
・償還通貨判定日に為替が判定為替レートより円高だと額面金額を当初為替で購入したものとする外貨で償還
当初為替レートは発行時の為替レートで、その為替レートから3円円高というように判定レートが決まる。為替レートからこの条件分円高になっても元本が満額返ってくる。
元本が毀損するかどうかは満期時ではなく、満期前に指定されている判定日の為替相場で判定される。それ以前それ以後円高になろうとも満期は円の元本償還となる。
一方、判定日に判定レートより円高であると、それ以前それ以後円安になっても満期は外貨で償還となる。外貨で償還となった場合は当初の為替レートで交換した場合の外貨で償還となる。満期日に円高のままであれば元本が毀損することになるが、その外貨を外貨のままで運用し円安になるまで待ってから円に換えれば元本は割れない。
なお、途中で円安になると満期前に期限前償還となることもある。
仕組債は途中換金は基本できない(途中売却すると元本が大きく割れる)ことを考えると、外貨でそのまま運用した方が良かったということも考えられる。期限前償還となるような円安になる場合には通常の外貨で保有した方が為替差益が得られ、円高となった場合は結局外貨で償還される。デュアル・カレンシー債を購入する場合は、外貨建債券での運用も検討しよう。
EB債、リンク債
【条件例】(※実際にある商品ではない)
・対象株式 トヨタ自動車
・当初価格:受渡日の終値
・早期償還判定価格:当初価格×105%
・ノックイン判定価格:当初価格×80%
デュアル・カレンシー債同様、仕組債は途中換金は基本できないことを考えると、株をそのまま買付した方が良かったということも考えられる。期限前償還となるような株高になる場合には株で保有していれば売却益を得られる。株安となった場合は結局その株で償還となり、金利も下がるため、配当金がもらえる株式そのものを購入することも検討するべきだ。
リンク債も同様の仕組となるが、対象が日経平均株価のような指数となるため、対象となる株式の現物がないため、EB債が満期時に対象株式で償還されるのに対してリンク債はノックイン後に当初価格を上回らなければ満期時に即元本が毀損して返還される。
EB債は対象株式で返ってくるため対象株式の株価が戻るまで株式を保有することで待つことができるが、リンク債は満期時に元本毀損が決まってしまうため株価の戻りを待つことができない分、EB債よりリスクが高いと考えられる。
また、上記のような条件例とは別に利率判定価格が設けられてこともあり、その判定価格を下回ると低い金利が適用されることもあり、想定した利回りを享受できないことがある。
必ず理解の上購入を
仕組債は基本的にその対象となる株や通貨が下がらない値上がりすると考えるのであれば、そのまま購入した方が利益を得られる上、リターンに見合うリスクとなる。
そして、その高い元本毀損リスクを負うだけのリターンは得られないと考えられる。
そのため、その複雑な商品性がきちんと理解できない場合は、その対象となる通貨や株式を購入した方が良いだろう。仕組債として購入すると値上がりしても途中売却できない上、損指数連動型であれば満期時たまたま値下がりしていた場合でも、元本欠損が確定してしまう。
仕組債は高い利回りが確定し、満期時に元本毀損の条件を該当しなければ元本が返ってくるため、株式の価格変動リスクや外貨の為替変動リスクを負いたくない人には人気であるが、その得られるリターンとリスクを考えると実際の株と通貨を購入した方が良い。
では、どんなときに仕組債を購入すると良いのか?株価や為替が凪の状態であるときだ。
大きな変動がなく、下にも上にも株価や為替が変動しないような状態のときに仕組債を使えば、変動がなくても確定利回りを得られる。そもそもの仕組債に内包されているオプション取引も、実際の売手は変動がないと考え取引する。
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フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。