「コロナ移住」は中古マンション価格に影響しない?
コロナ移住とは、新型コロナウイルス蔓延をきっかけに都心部から郊外エリアに転居すること。東京新聞によれば、東京23区からの転出者が急増している。
『総務省の人口移動報告(外国人含む)によると、20年に23区から転出した人は36万5507人で、19年より2万1088人増えた。都からの転出増が最多の藤沢市には2975人が移り、19年比で713人(31.5%)増えた。同県鎌倉市、茅ケ崎市も約30%増。東京都三鷹市など23区西への転出者も多かった。(2021/4/19東京新聞)』
そこでマンションナビを運営するマンションリサーチ株式会社は、コロナ禍で東京23区からの流入が多かった東京都三鷹市、小金井市、府中市、そして神奈川県藤沢市の中古マンション成約価格を調査。コロナ移住が中古マンションの価格高騰に寄与しているのか検証した。
【東京都下エリア別】中古マンション前年度同月比売出数
マンションリサーチ調べ
小金井市のみ2020年8月の急増が目立つが、三鷹市・府中市においては他の東京都下エリアと大差はない。小金井市も一時的な増加であり、その他の月は周辺エリアと同様に前年比マイナスの時期も多かったようだ。従って各エリア、売出環境については同様という前提で検証を進める。
【東京都下エリア別】中古マンション前年度同月比成約坪単価
マンションリサーチ調べ
小金井市は、1982年築~2000年築、2001年以降築、いずれにおいても前年同月比成約坪単価の大幅な上昇が見られた。
その一方で、三鷹市、府中市の1982年築~2000年築の中古マンション価格は、前年同月比でマイナス。2001年以降築もほぼ横ばいだ。
小金井市の価格高騰は大きいものの、武蔵野市や小平市、立川市等も築年帯によっては10%前後の高騰が見られるため、移住者が多かった地域だけの高騰が際立っているとはいえない。
コロナ移住者が最も多かった神奈川県藤沢市の中古マンション価格は?
さて続いては、コロナ移住者が最も多かった神奈川県藤沢市を見てみよう。
基準エリア:鎌倉市・逗子市
ランクインエリア:藤沢市
【神奈川県湘南エリア別】中古マンション前年度同月比売出数
マンションリサーチ調べ
前年同月比の中古マンション売出数については、藤沢市とその他湘南エリアで増減率に大きな差はないようだ。従って、エリアによる売出環境は同様だといえる。
【神奈川県湘南エリア別】中古マンション前年度同月比成約坪単価
マンションリサーチ調べ
価格において藤沢市は、2001年以降築の中古マンションについては、2020年の成約価格に「6%以上」の前年比増が見られた。しかし、それ以前のマンションは逆にマイナス。一方で、逗子市の2001年以降築の中古マンションの2020年成約価格は、藤沢市を大きく上回る前年比「17%以上」。
東京都下同様、湘南エリアでも、東京23区からの流入者数と価格の高騰が比例したわけではないといえる。
【検証結果】コロナ移住が中古マンションの価格高騰の要因になっているとは考えにくい
「コロナ移住」は確かにみられている現象だが、突発的かつ短期的な人の移動が中古マンション価格が高騰する要因になるとは考えにくいといえそうだ。
とはいえ、今後も長期的に東京23区からの郊外への人の移動が続けば、不動産価格に影響を与えないとも限らない。
構成/ino.