うだるほど暑い夏。炎天下から帰宅したあとは、のどの奥にクーッとお酒を流し込みたくなる。駆けつけ1杯の定番といえば、やっぱり生ビールかもしれないが、2杯目におすすめなのは? せめて2杯目からは“シャリキン”をおすすめしたい。
シャリキンは、ホッピーのお供としてもおなじみの宮崎(本来は「たつさき」)本店製の焼酎“キンミヤ”をシャーベット状に凍らせたものだ。タッパーにキンミヤを入れて、冷凍庫で24時間以上凍らせれば完成。1杯分90mlのパウチ商品も販売されており、飲食店や家庭では“割り物で割っても味が薄まらない”として人気だ。
焼酎を凍らせる発想はどこから生まれたのか。おすすめの作り方や飲み方と合わせて、キンミヤの製造元である宮崎本店の取締役東京支店長・伊藤盛男さんに聞いた。
夏場に温まってしまうホッピーの解決策として生まれた
宮崎本店の歴史は古く、1846(弘化3)年に創業。
Zoom取材に応じてくれた宮崎本店の取締役東京支店長・伊藤盛男さん
「私たち発祥ではなく、元々は、飲食店さんがメニューとして出していたのが始まりでした。諸説あるようですが、私が知る限りでは、赤羽にあるもつ焼き居酒屋の老舗『米山』さん発祥と言われています。以前、店主さんに『なぜ、シャリキンを出したんですか?』と聞いたら、夏場に常温でホッピーを出すと氷もすぐ溶けて温まってしまうと。いい解決方法はないかと思い、ためしに“ナカ(ホッピーで割るための焼酎)”を凍らせてみたらお客さんにも評判で、定番メニューになったと話していました」(伊藤さん)
飲食店の工夫から生まれ、いつしか定着したシャリキン。その後、宮崎本店が1杯分90mlのパウチ商品を出したのは2012年だった。
宮崎本店の「シャリキンパウチ」(1袋90ml/104円・税込み)
「飲食店さんからの相談をヒントに作りました。キンミヤには200mlのカップ商品もあり、お店によっては、そのまま冷凍庫で凍らせてホッピーと一緒に出しているんです。割り方によるものの、ホッピーの“中”として最低3杯分は取れる量ですが、2杯目以降は溶けてしまうので困ったと。それならば、1杯で飲み切れる量の商品を出そうと考えました」(伊藤さん)
ただ、商品化となると焼酎を凍らせるにも工夫が必要。開発段階では、テストも重ねられた。
「パウチ商品のキンミヤはアルコール度数が20度ですが、試したところ一番凍りやすかったんですよ。キンミヤにはいくつかの度数があり、15度〜25度までを何度もテストしましたが度数が高いと上手く凍らず、低いと味がいまいちになる。4ヶ月ほど試行錯誤して完成させました。おかげさまで夏場の定番商品になり、飲食店はもちろん、一般向けの量販店では30本入りのケース商品も人気です」(伊藤さん)
シャリキン作りのコツとおすすめの飲み方
自宅でも簡単に作れるシャリキン。タッパーなどの容器にキンミヤを入れて冷凍庫で24時間以上冷やせば完成するが、伊藤さんに製造元ならではの作り方のコツを聞いてみた。
「冷凍庫自体の性能にもよりますが、温度調節機能があるならキンキンに冷やすのがいいです。飲食店では、シャリキン専用に冷凍庫を用意している場合もあります。また、注意してほしいのは冷やす場所。内側だと冷えづらいため、できるだけ冷凍庫の外側に置いてください」
タッパーとキンミヤを用意して手軽に作れるのもシャリキンの魅力
そして、コツを知ったところでシャリキン自体の味も気になるところ。伊藤さんがおすすめする4種類の飲み方を、筆者みずから味わってみた。
◎シャリキン+水
ずばり「合わないわけがない!」の一言。口あたりはスッキリ。さっぱりとした味わいなので、ついつい飲み進めてしまう。
◎シャリキン+緑茶
見た目からして、初夏の風を思わせるほどに爽やか。シャリキンが溶けていくと、お茶の風味がまろやかになっていく。
◎シャリキン+アイスコーヒー
アイスコーヒーのビターなうまみと、シャリキンのコクが口の中で混ざり合う。飲み口は重め。お酒に渋さを求める人にはうってつけだ。
◎シャリキン+カルピス
カルピス自体の甘みと、少し渋めなシャリキンの味の相性に驚く。気を抜くと、お酒なのを忘れてしまうほど。焼酎が苦手な人でも飲めそうだ。
酒好きの相棒“キンミヤ”を凍らせたシャリキン。伊藤さんは最後「外飲みができない状況もありますが、自宅でシャリキンを楽しみ、いつかまた宴会などができるようになったら外でもシャリキンを楽しんでもらえれば」と語っていた。自宅で過ごす時間もだいぶ増えたが、暑さを忘れるためぜひシャリキンでのどをうるおしてほしい。
取材・文/カネコシュウヘイ