マインドフルネスのカリキュラムで子どもの睡眠が改善
子どもの睡眠時間は概して、思春期が近づくにつれて少なくなりがちだ。
しかし、学校がマインドフルネスを学ぶカリキュラムを組んで、深呼吸やヨガなどを教えると、睡眠時間が増え、睡眠の質も高まる可能性があるとする研究結果が報告された。
米スタンフォード大学医学部のChristina Chick氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Clinical Sleep Medicine」に7月6日掲載された。
この研究は、米サンフランシスコ・ベイエリアの主にヒスパニック系から成る2つの低所得コミュニティに住む子ども115人(8〜11歳、女児49人)、を対象にしたもの。
どちらのコミュニティも治安が悪く、住んでいる人たちは食料不安や過密で不安定な住環境によるストレスを抱えている。「こうした住環境の条件は、睡眠に悪影響を及ぼす」と研究グループは説明する。
1つ目のコミュニティの子ども(58人)は、マインドフルネスのカリキュラムで週に2回、2年にわたって授業を受けた(介入群)。このカリキュラムでは、今この瞬間に注意を向けるマインドフルネスのトレーニングや、ゆっくりとした深呼吸やヨガをベースにした動きの練習、ストレスに関する教育などが行われた。
もう一つのコミュニティの子ども(57人)は、マインドフルネスのカリキュラムの代わりに通常の体育の授業を受ける対照群とした。全ての子どもに対して、試験開始時(カリキュラム開始前)とカリキュラム開始から1年後と2年後に、睡眠ポリグラフ検査により夜間の睡眠状態を調べるとともに、対象者自身が感じているストレスレベルについても評価した。
研究開始時点では、理由は不明だが、介入群よりも対照群の方が1晩当たりの睡眠時間が平均54分(対照群7.5時間、介入群6.6時間)、REM睡眠の時間が平均15分長かった。
ところが、2年間の研究期間の間に、両群の睡眠パターンは変化していき、睡眠時間が、対照群では平均64分短くなったのに対して、介入群では平均74分も長くなっていた。
また、REM睡眠についても、対照群では試験開始時から変化が見られなかったのに対して、介入群では24分増えていた。
Chick氏は、「われわれは、マインドフルネスによる介入が役立つだろうと考えてはいたが、これほど大きな効果が得られたことに感銘を受けた」と話す。
Chick氏らは、子どもたちの睡眠の改善は、ストレスが軽減したためだと考えていた。しかし、対象者の中で睡眠時間が最も伸びた子どもでは、同時にストレスも増えていたことが判明した。
この点について同氏らは、授業を通じてストレスについての理解が深まったことが関係しているのではないかと推測している。
この研究には関与していない、米ワシントン大学の小児・思春期医学分野のCora Breuner氏は、「子どもの成長にとって睡眠は欠かせず、睡眠がこれほど重要になる年代は他にはない。ニューロンの再生や、日中に経験した活動やストレッサーからの体の回復などは睡眠中になされるからだ」と子どもにとっての睡眠の重要性を強調する。
その上で、「何らかのスキルにより自分の内面に集中できるようになると、自分が元来持っている力で眠りにつくことができるようになる」と話している。
Chick氏らは今後、教師が同様のカリキュラムを計画するのを支援するなどして、得られた知見を広めたいと考えている。
また、カリキュラムの構成要素、例えばゆっくりとした深呼吸を促す運動などを行うことにより、体の機能がどのように変化して、それが睡眠の改善につながるのかを解明していきたいとしている。(HealthDay News 2021年7月8日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jcsm.aasm.org/doi/10.5664/jcsm.9508
Press Release
https://med.stanford.edu/news/all-news/2021/07/mindfulness-training-helps-kids-sleep-better–stanford-medicine-
構成/DIME編集部