日本を含む先進国に比べると比較的に高い金利である新興国債券に投資できる投資信託を紹介する。
新興国債券の魅力
新興国債券は金利が高いのが特徴だ。
新興国は政策金利が高いので、新興国通貨建ての債券の金利は年率5%以上、トルコリラ建てにあたっては年率18%を超える利回りがある。
そして、新興国の多くは多くの人口を抱え、その需要を取り込み今後経済成長が見込める国が多い。特に、中国、インドは名目GDPで今後アメリカを超えるのではないかといわている。今後成長が見込めれば、新興国通貨の価値が上がり大きな為替差益を得られる可能性がある。
一方で、大きな利益が得られる可能性がある反面、リスクが大きいというデメリットもある。
新興国は資源がある国が多く、かつその資源輸出に頼っている国が少なくない。そのため、資源価格により経済が左右され、2020年には原油価格が一時マイナスに陥ったときにブラジルレアルは大きく下落した。
ドルや円はよほどのことがない限り大きく変動することはないが、新興国通貨の変動幅は非常に大きい。また、経済状況だけでなく、汚職やクーデターなど急な政治上のリスクで下がることもある。
また、米ドルの金利状況にも注視が必要だ。米国金利は現在ゼロ金利で高い利回りが得られる新興国に資金が流れ込んでいるが、米国が政策金利を上げることがあれば、新興国通貨に投資されている資金の急な巻き戻しがある可能性がある。
新興国債券に投資信託で投資するメリット
新興国債券は直接債券として購入することもできる。その場合手数料は円から新興国通貨に換える為替手数料のみで済む。投資信託で投資すると、買付手数料(ネット証券は無料であることが多い)、保有期間中に信託報酬がかかるなど直接債券に投資するよりもコストがかかる。コストを支払う分だけのメリットは何だろうか。
①価格変動の大きい新興国通貨を積立により購入できる
投資信託は毎月積立など一括購入ではなく、コツコツ自動購入することができる。為替変動の大きい新興国通貨への投資で、買付単価を平準化して高値掴みを防ぐことができる。
②いつでも換金可能
債券は満期に外貨ベースで元本が返ってくるが、途中売却すると元本が割れる。特に新興国債券においては途中売却において流動性が低く想定より低い価額での売却になる可能性がある。
投資信託ももちろん元本が割れることはあるが、好きなときにそのときの価格で売却することができる。
③好きな金額で購入できる
債券の場合は購入単位が決められているが、投資信託であれば100円以上1円単位で好きなとき好きな金額で購入することができる。
④毎月分配型もある
新興国債券の高い利回りを背景に、毎月分配金を受け取れることができる投資信託もある。
新興国債券に投資できる投資信託
■iFree 新興国債券インデックス
買付手数料無料、信託報酬が0.242%(年率)と非常に低コストであるのが魅力。
JPモルガン ガバメント・インデックス-エマージング・マーケッツ グローバル ダイバーシファイドという指数に連動する運用となっている。このインデックス指数は、新興国の現地通貨建の国債またはそれに準ずる債券が中心で、通貨はオフショア(中国本土外での取引)人民元10.4%、インドネシア・ルピア9.5%、メキシコ・ペソ9.4%、タイ・バーツ8.6%、ポーランド・ズロチ8.1%、ブラジル・レアル7.9%、南アフリカ・ランド7.4%、ロシア・ルーブル7%、マレーシア・リンギット6.9%のように新興国各国に分散投資している指数だ。
相対的にリスクは高いが高成長が見込める新興国に分散投資をすることでリスクを低減できる。また、低コストだから長期積立運用に最適。
■三菱UFJ国際-三菱UFJ新興国債券ファンド通貨選択<ブラジルレアル>毎月
債券運用を得意とするピムコ社が運用するドル建の新興国債券ファンドのドルをブラジルレアルに為替ヘッジを行い、レアル建てで各国新興国債券に投資しているのと同じ効果を得る仕組み。為替ヘッジにより、ドルの金利とレアルの金利差を新興国債券ファンドの運用に上乗せして受取ることができる。さらに、円とレアルの為替変動のリターンを得ることができる。
発売当初資源高、オリンピック開催前により好調だったブラジルレアル高と高金利により高い分配金を得られたが、その後資源安、大幅なレアル安により分配金、価格が低下した。
ブラジルは中国やインドには遠く及ばないものの約2億947万人(世銀2018年データ)もの人口、さらに人口は今でも増加中であり、南米最大の経済大国である。
資源が豊富である故に為替は資源価格に左右され原油価格が一時マイナスになったときにはレアルもかなり下がったが、現在原油価格が戻りレアルも落ち着きつつある。
毎月分配型で分配金利回りは6.7%あるが、そもそも分配金は投資信託の純資産からでており分配金を出すとその分投資信託の価格下がる。分配金を受取ってしまうよりも再投資する方が長期で見れば運用益を得られる。
信託報酬は1.672%(年率)と低くない。コストも高くレアル安により分配金を除くと非常に価格が下がっているが、レアルが上がるとその分リターンを得ることができレアルが戻ったここ1年は分配金含むトータルリターンが22.16%と高い。
なお、この投資信託はブラジルレアルだけでなく、人民元やインドネシアルピアなど他の通貨を選択することもできる。
■三井住友TAM-SMT米ドル建新興国債券インデックス・オープン(為替ヘッジあり)
新興国債券の相対的に高い金利収入はほしいが、為替変動リスクは負いたくないという場合に最適。為替変動リスクの低減をするために為替予約により為替ヘッジを行う。為替ヘッジは売る通貨の金利をコストとして支払い、買う通貨の金利を受取るので、例えばドル短期金利が1%、円短期金利が0.5%なら差額の0.5%のコストがかかる。また、新興国通貨が上がってもその恩恵を受けることができないが、為替変動が怖いならこの為替ヘッジありの投資信託がおすすめだ。
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文/大堀貴子
フリーライターとしてマネージャンルの記事を得意とする。おおほりFP事務所代表、CFP認定者、第Ⅰ種証券外務員。