8月に手紙やビジネスメールを書く場合、どのような時候の挨拶を書けばよいのか分からない人もいるでしょう。相手に失礼な印象を与えないように、季語選びや表現を適切に行うことが大切です。8月に使える時候の挨拶や注意点について解説します。
時候の挨拶の基本
時候の挨拶とはどのようなものを指す言葉なのでしょうか。概要や2種類ある表現方法など、まずは時候の挨拶の基礎知識を押さえておきましょう。
そもそも「時候の挨拶」とは
手紙の前文で、『拝啓』『前略』などの『頭語』の後ろに続けて書く言葉が『時候の挨拶』です。四季の移ろいをはっきりと感じられる日本では、季節感を出せる時候の挨拶で手紙を書き始めるのが通例となっています。
暑さや寒さが体調に影響を与えやすい時期には、時候の挨拶で相手の健康を気遣うことも可能です。書き出しだけでなく、結びの言葉でも季節感を表現できます。
時候の挨拶は季節ごとに使い分けるのが基本です。春夏秋冬別・月別・二十四節気別など、時期に合わせて使える数多くの種類があります。
漢語調と口語調の2通りある
時候の挨拶には、漢語調と口語調の2種類があります。ビジネスメールなどで使用する格調高いタイプが漢語調、プライベートでの手紙に適したタイプが口語調です。
漢語調では、『新春の候』のように、『季語』+『の候』から書き始めます。8月に使える主な季語は、上旬が盛夏や大暑、中旬が立秋や晩夏、下旬が残暑や向秋です。
口語調の時候の挨拶には、特に書き方のルールはありません。季節を意識したり相手の健康を気遣ったりしながら、親しみやすさや温かさを感じられる文章にするのがポイントです。
時候の挨拶の注意点
見舞状やお詫び状を送る場合は、時候の挨拶の扱いに気を付けなければなりません。送り先の地域の季節感を考慮して時候の挨拶を決めることも大切です。時候の挨拶を使う際に注意すべきポイントを解説します。
お見舞いやお詫びの手紙では省略する
時候の挨拶は、お見舞いやお詫びの手紙には書かないのがマナーです。急な手紙であるにもかかわらず、時候の挨拶を入れると時間をかけて書いた印象を与えてしまいます。
見舞状やお詫び状では、頭語や時候の挨拶を全て省略し、本文から書き始めます。見舞状では相手を気遣う文章を、お詫び状ではお詫びの言葉を冒頭に置くのが基本です。
お見舞いの手紙を書く際は、『四』や『たびたび』などの忌み言葉を使わないように気を付けましょう。長期入院中の相手を見舞う際は、季節の言葉を用いても問題ありません。
送り先の季節感を考慮する
時候の挨拶を考える際は、相手の住んでいる地域がどのような季節感なのかを考慮する必要があります。季語が送り先の季節感と違う場合、相手に無神経な印象を与えかねません。
桜に関する季語を使うなら、開花時期や満開になる時期が地域によって違う点を意識しましょう。北海道には梅雨がないため、『梅雨の候』を季語に選んだ手紙を北海道に送るのはNGです。
送り先の地域の季節感が分からない場合は、季節感の弱い表現や全国的に通用する季語を選ぶのが無難です。
8月に使える時候の挨拶と結びの言葉
8月に送るビジネスメールや手紙にふさわしい時候の挨拶を、漢語調と口語調に分けて紹介します。季節感を出せる結びの言葉も併せて覚えましょう。
ビジネスで使う漢語調の挨拶
漢語調の挨拶では、季語に『の候』を付けた言葉で書き出します。8月に使える季語は以下の通りです。上旬・中旬・下旬を厳守する必要はなく、あくまでも目安となります。
- 8月上旬:盛夏・盛暑・大暑・晩夏
- 8月中旬:立秋・晩夏・向秋
- 8月下旬:残暑・処暑・向秋
実際の前文は次のような文章になります。ビジネスシーンで必須の表現となるため、いくつかのパターンを覚えておきましょう。
- 拝啓 処暑の候 貴社におかれましては益々ご隆昌のこととお慶び申し上げます
- 拝啓 残暑の候 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます
- 拝啓 盛夏の候 貴社益々ご清栄のこととお喜び申し上げます
カジュアルに使う口語調の挨拶
プライベートの手紙で使う口語調の挨拶は、その年の季節感や状況に合わせて、気持ちを込めた文章にするのがおすすめです。すぐに使える例文をいくつか紹介します。
- 厳しい暑さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか
- 朝夕にはかすかに秋の気配を感じる今日この頃、〇〇様におかれましては、お変わりなくお過ごしのことと存じ上げます
- 暦のうえでは秋ですが、まだまだ暑い日が続いております
- 涼しい季節が待ち遠しい今日この頃、皆様もお元気でいらっしゃいますか
- 暑さもようやく峠を越え、にわかに秋めいてまいりました
8月に使える結びの挨拶
結びの挨拶でも季節感を出せれば、より上品な文面に仕上がります。冒頭の挨拶と重複しない言葉や表現を選ぶのがポイントです。以下の例文をチェックしておきましょう。
- 残炎の折柄、夏風邪など召されませぬようご自愛ください
- 夏の疲れが出やすい時期です。皆様方のご無事息災を心よりお祈り申し上げます
- 残暑も残りわずかとなりました。皆様おそろいで、ご壮健にてさわやかな秋をお迎えください
- 立秋とはいえ厳しい暑さが続きます。健康にはくれぐれもご留意してお過ごしください
構成/編集部