近年、推進されている「STEAM(スティーム)教育」。5つの領域を横断的に学び、子どもが自ら探究し創造する力を培うために、世間ではさまざまな角度から教育プログラムが開発されている。その中でも、子どもたちへと学校以外の場所での学習機会を提供する民間企業の取り組みが増えている。
そこで今回は、この夏休みに子どもたちに学びの機会を提供する、企業主導の3つのサマーイベントやワークショップなどを紹介しよう。
●STEAM教育とは
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)等の各教科での学習を、実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育のこと。
STEAM教育が体験できるサマーイベント・ワークショップ3選
1.STEAM教育がコンセプト!パナソニック「AkeruE」のサマーイベント
東京・有明のパナソニックセンター東京の2階と3階にあるクリエイティブミュージアム「AkeruE(アケルエ)」は、2021年4月3日よりSTEAM教育をコンセプトとする施設に生まれ変わった。
これまでは理科と数学(算数)への興味関心の向上・好奇心の醸成を目的とした「RiSuPia(リスーピア)」という名だったが、AkeruEでは新たにSTEAM教育をテーマに据え、子どもたちの知的好奇心と創造力を育む場として、展示やモノ・コトづくりの体験を提供している。
無料で利用できる2階では、3Dプリンターやレーザーカッタ―などの機器を利用した“ものづくり”を体験できるエリアや、クリエイターが集い交流できるエリア、「アクアポニックス」という魚と植物を同じシステムで育てる循環型栽培の展示で学べるエリアなどがある。
有料となる3階では、テクノロジーとアートを組み合わせた展示を楽しめるエリア、テーマに沿った工作に取り組めるエリア、映像や写真、アニメーションを使って、考えたことを発信するスタジオなどがある。
今回のリニューアルの背景について、パナソニックの担当者は次のように述べる。
「近年、SDGsに代表されるように、社会のさまざまな課題を提起し、解決のためにポジティブに行動できる力が重要になっています。AkeruEでは、これらの力を養うため、理数の魅力にエンジニアリング、テクノロジー、アートの分野を融合し、STEAM教育が示す幅広く横断的なテーマを扱い、子どもたちの知的好奇心と『ひらめき力』を育む場として、“学び”と“モノ・コトづくり”の双方を体験することができます。
展示作品の中では、原理を学ぶ科学館の要素と、美しさの中に課題提起を見出す美術館の要素を兼ね備えた学びを提供し、モノ・コトづくりに取り組めるスペースやワークショップも展開しています。
夏休みは、自由研究にもピッタリなイベントを多数実施いたします。AkeruEで、STEAM教育をより身近に体験してもらいたいと考えています」
●「AkeruEワンダーサマー2021」
夏休みのイベント「AkeruEワンダーサマー2021」が2021年7月10日(土)から8月31日(火)まで開催される。施設内は通常営業されるが、ワークショップはオンライン開催のみ実施。ワークショップでは、子どもが自ら参加し、手を動かしながら参加できるワークショップや、数学×デザインのワークショップなどが行われる。
各イベントへの申込方法は公式Instagramで随時発表されるので、参加希望者はInstagramをチェックしよう。
「AkeruE」施設概要
住所:東京都江東区有明3-5-1 パナソニックセンター東京 2~3階
料金:2Fは無料、3Fは一般700円(未就学児は無料)
「AkeruEワンダーサマー2021」
期間:2021年7月10日(土)~8月31日(火)
2.自ら考え学ぶ!学研・パナソニック・東急の「綱島SST探究サマーラボ」
STEAM教育に深いかかわりがあるといわれる「探究学習」。これは「子どもたちが興味や疑問を持ったことについて、自発的に資料を探したり、専門家に聞いたりしながら考え続け、自分なりの気づきを得る主体的な学習」のことだ。
その「探究学習」ができる小学生を対象としたサマースクール「綱島SST探究サマーラボ」を、学研、パナソニック、東急の3社が共同し、2021年7月24日~8月28日の期間、神奈川県の東急東横線の綱島駅近くにある「Tsunashimaサスティナブル・スマートタウン」内で展開する。
3社は探究学習を推進すべく新しい教育事業の検討を行っている。その背景として、従来型の教育ではIT化とグローバル化による変化のスピードが速く、予測困難な社会に対応できる人材を育てられない危機感から、「探究学習」の必要性が高まっていることを挙げる。
●「綱島SST探究サマーラボ」
「綱島SST探究サマーラボ」では、教育の学研、テクノロジーと暮らしのパナソニック、東急線沿線を中心にさまざまな事業を展開する東急が、それぞれの特長を活かし、オンラインとオンサイト、デジタルとリアルを行き来しながら、子どもたちの探究心に火をつけ、学びが楽しくなる体験の提供を目指すもの。
子どもたちが自発的に興味や疑問を持ったことについて自分で考えたり、調べたり、専門家に聞いたり、何かを作ったりしながら、自ら気づきを得る「プロジェクト型の探究学習」が、4つの学びプログラムで行える。
【4つの学びプログラム】
1)問題解決型学習ができる「探究ラボ」
2)テクノロジーとアートの融合で楽しくマインクラフトとスクラッチを学ぶ「STEAMプログラミング」
3)各種ツールや参考書や本などのライブラリが使い放題の創造の場「クリエイティブガレージ」
4)探究動画見放題の「オンライン探究EdTech」
●STEAMプログラミング
このうち、「STEAMプログラミング」は、人気ゲームの中でコードを打って学ぶ「マインクラフト」と初心者にやさしい「スクラッチ」の2コースが用意されており、単にスキルを身に付けるだけでなく、作品づくりのなかで試行錯誤しながら気づきを得ていくSTEAM教育の手法を取り入れた学研オリジナルの授業となっている。
「単にスキルを身に付けるだけでなく、作品づくりのなかで試行錯誤しながら気づきを得ていく」ということの意味を、学研プラスの担当者に聞いた。
「子どもたちには、何より楽しんで学んでほしいと思っています。スキルを身に付けることが悪いわけではまったくなく、むしろ、どんどん頑張ってほしいと思うのですが、正解のスキルがあったとして、それをそのままインプットするというより、何かを作ったりする中で間違ってもいいので、自分自身でつかんでほしい。だからこそ真に身に付き、学びを楽しめると思うんです」
本プログラムでは、楽しみながら自ら試行錯誤する子どもたちの力が培われそうだ。
各プログラムへの申し込みは、2021年7月21日(水)まで、学研の専用サイトから行える。
「綱島SST探究サマーラボ」実施概要
期間:2021年7月24日(土)~8月28日(土) ※8月9日~15日のお盆期間は除く
場所:Tsunashima SSTイノベーションスタジオ(神奈川県横浜市港北区綱島東4-3-10)
対象:小学1年生~小学6年生 ※子ども1名につき保護者1名までワークスペース使用可能
料金:16,500円~27,500円(税込)
定員:全30名(先着順)
詳細・受講申し込みサイト
3.オンラインで学べる!「キッズワークショップ2021」
コロナ禍で一気に進んだオンライン学習。毎年夏に行われる森ビルの「キッズワークショップ」が今年も、昨年に続き、オンラインで行われる。
その「キッズワークショップ2021」は、六本木ヒルズやアークヒルズ、虎ノ門ヒルズの入居企業や店舗などと連携し、2021年8月10日(火)~8月23日(月)の期間に開催。全34種・64講座のオンラインプログラムが用意されている。
キッズワークショップは、2010年から毎年夏に、未来を担う子どもたちに本物の体験を提供することを主旨に開催されてきた。昨年は初のオンライン開催となり、約4,000人から応募があった。12回目となる今年は、小学校高学年から中学生を対象とした、推奨年齢を上げたワークショップも拡充したという。
デジタル技術を活用したプログラムや異文化に触れるプログラム、自宅でものづくりができるプログラムなど多岐にわたる中、STEAM教育に関するプログラムもある。
●レゴブロックを用いたSTEAMワークショップ
レゴ®スクール 六本木ヒルズ店で開催される「Playful STEAM LERNING! レゴブロックを使った実験に挑戦しよう」の内容について、レゴスクールを運営する株式会社イマージュの土橋翔太氏は次のように話す。
「レゴスクールは、幼児から小学生を対象に、子どもたちの発達段階に応じた学年別カリキュラムと、アナログとデジタルのレゴ教材を活用して、STEAM―科学・テクノロジー・工学・アート・数学―の力を身に付け、遊びながら学び(Playful Learning)、作ることで学ぶ(Hands-on Learning) 教育で、子どもたちの自信を育むスクールです。
レゴスクールのプログラムは、遊びながら学び、レゴ ブロックを組み立てながら自分の考えを組み立てるハンズオン学習を融合させたプログラムです。
レゴ社の教育部門レゴ エデュケーションのネットワークでつながった世界の教育分野の専門チームが開発したこれらのプログラムは、STEAMをベースとしたプロジェクト型学習でレッスンが構成されており、発達段階に応じたカリキュラムで学びを展開していきます。レゴ社認定のインストラクターからの適切な課題の提供やフィードバックを通して、子どもたちの可能性を引き出し、好奇心と想像力を高めるユニークな学びの経験を提供します。
今回のワークショップでは、実験検証を行うScienceの要素、実験から得た発見に基づいて、ものづくりを行うEngineeringの要素、ものづくりを通じた自己表現をするArtの要素を、レゴ ブロックを通じて楽しく体感してもらえる内容になっています」
各プログラムへの申し込みは、公式サイトから2021年7月16日より順次受付開始し、7月25日まで行える。参加は抽選となり、当選者にはメールで連絡がくる。
「キッズワークショップ 2021」開催概要
期間:2021年8月10日(火)~8月23日(月)
講座数:全34種・64講座
申し込み:公式サイトで、2021年7月16日(金)より順次受付開始。7月25日(日)まで。
抽選発表:当選者には2021年8月2日(月)にメールにて連絡。
公式サイト
いずれも子どもたちがあらゆる角度からSTEAM教育を存分に楽しみながら受けられるイベントやワークショップばかり。気になる親は、子どもに興味関心を呼びかけて、ぜひ参加申し込みをしてみよう。
取材・文/石原亜香利