かつて斜陽だった音声メディアだが、デジタル配信ラジオやポッドキャストの普及、コロナ禍における在宅時間の増加、リモートワークの導入などによって、にわかに注目を集めつつある。
そんな状況下で、流行に敏感なZ世代は音声メディアとどのように向き合っているのだろうか?
そこで、ビデオリサーチはこのほど、スポティファイジャパンと共同で「Z世代と音声メディア」についての調査と分析研究を行った。
Z世代は「音楽」への接触機会が多い。「定期的に音楽を聴く」7割、「音楽配信サービス利用」6割
Z世代は、「定期的に音楽を聴く」が7割、「音楽配信サービス利用」は6割と、音楽に触れる機会が他世代より多いことがわかった。サブスクリプション、無料、問わず音楽配信プラットフォームの利用率は年々増加。特に2019年から20年にかけては2割強から4割強と伸長した(図2)。
また、デジタル配信ラジオやポッドキャスト、音声アシスタントサービスなど「音声サービス」のZ世代の利用率は約3割(図1)。ラジオユーザーの多い他世代には及ばないものの、Z世代のラジオのデジタル配信聴取も伸びている(図2)。音声メディアがよりシームレスに使いやすくなってきていることに加え、コロナ禍で在宅時間が増えたことも、Z世代の接触チャンス創出につながったと考えられる。
Z世代の“耳”はマルチタスク。半数以上が、音の出るメディアを2つ同時に利用する『W音声』を体験
Z世代の音声メディアユーザーのうち、音楽を流しながら「音を出してテレビを見た」は6割、また、3人に2人が音楽を流しながら「音を出して動画を見た」経験があり、音の出る複数のメディアに同時に接触することへの抵抗感が少ないことが明らかになった。
他世代でも音楽はBGMとして流しながら、他の音声サービスの利用や生活行動をするということはあるが、Z世代に特徴的だったのは、音楽を共有しながらの通話、音声をダブルで流す場合も、その時々でより聞きたい方に耳を傾けるといった、音声ならではの特性やニーズに合わせて上手に使い分ける、耳をマルチタスクに使いこなす様子が多くみられたことだった。今までにはない新しい音声メディアの楽しみ方が生まれてきているようだ。
Z世代の半数が「チャットやメールより通話の方が楽」
Z世代は、「通話の方が文字での会話より楽」という回答が男女とも約半数だ。また、女性Z世代の45%が「読む」より「聞く」ほうが頭に入りやすいと答え、他世代より10pt以上高くなっていた。テレビの操作やタブレット、スマホなどの音声入力機能の進化とともに育ち、キーボードよりも先に音声入力を覚えた人も少なくないため、音声でのコミュニケーションや情報収集に親和性が高く、好意的な世代であることがうかがえる。
また、インタビュー調査を通じて、気軽に人と会えないコロナ禍で、音声メディアによって気が紛れたり勇気づけられたりした、というZ世代の声も多く聞かれた。特に女性にその傾向が強く、「(深夜ラジオを聴いていると)世の中はまだ人が動いているんだ、と寂しさを紛らわすことができた(20歳大学生)」「雑談配信を聴くと寂しさがやわらいだりするし、暇な時間が暇じゃなくなる(19歳大学生)」など、ラジオコンテンツやポッドキャスト、音声SNSに対する受容性がみられた。
出典元:株式会社ビデオリサーチ
構成/こじへい