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注目はアップデート対応デバイス!ついに登場した「Android 12」と「Windows 11」の気になる中身

2021.07.20

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は2021年最新OSとクアルコムの新型チップについて話し合っていきます。

※新型コロナウイルス対策を行っております

「Android12」「Windows 11」発表! 注目はアップデート対応デバイス?

房野氏:先日発表された「Android 12」「Windows 11」ですが、みなさんどのような感想をお持ちでしょうか?

Android 12

Windows 11

房野氏

石野氏:Android 12は、iOS 15よりも大幅にデザインが変更されていますね。グーグルのPixelシリーズにはマッチしそうですけど、ほかのメーカーのスマートフォンとしてはどうだろうという印象です。

Google Pixel 5

石野氏

石川氏:Android 12はもう少し進化してほしかったかなとも思います。めぼしい進化がなさそうなので、正直原稿を書くのに苦労しました(笑)。ついインパクトが強かったWear OSの話に行っちゃいましたね。

Wear OS by Google アプリ(旧称 Android Wear)

石川氏

石野氏:ただ、Androidはいろいろなメーカーが採用するという側面があるので、アップルみたいに機械学習機能(AI)を使って新機能を搭載するみたいなやり方は発表しにくいと思います。端末のスペックが本当に様々なので、どのスマートフォンで動くのかがわかりにくい。そうするとデザイン面の発表がメインになっちゃうのもうなずけます。ただ、XiaomiとかOPPOとかはAndroid OSをベースにして色々と自社用に手を加えるので、ユーザーにとってはAndroid 12の新機能ってなんだっけ? ともなってしまいそうです。

 あとグーグルはアプリを切り分けてどんどんアップデートするので、Android OSの新機能として今回、発表していないのかなとも思います。

房野氏:Android 12を搭載するための端末の最低スペック、要件などはありますか?

石野氏:Android 11よりも動作に必要なCPUのリソースを軽くしているという話で、結構低いスペックのスマートフォンでも動くはずです。

法林氏:現時点で配信されているベータ版のAndroid 12はインストールできる機種が限定されているけど、例えばPixelでいうと2世代前の「Pixel 3」以降は動くし、「AQUOS sense5G」みたいなミッドレンジ帯のCPUを搭載したモデルでも動くのはすごいと思います。

AQUOS sense5G

法林氏

石川氏:Androidはチップセットの性能というよりはメーカーがアップデートに対応するかどうかに依存するので、対応機種については何とも言いようがないですよね。

法林氏:根本的なスタンスの違いがあって、アップルはハードウエア/ソフトウエアの両方を自社で作っている。WindowsはOSを自社開発していて、10年前のパソコンはWindows 11の対応機種から外されている。これはマイクロソフトが決めているシステム要件があるからです。

 AndroidもWindowsと同じでシステム要件の線引きはしているので、あとはメーカーがどう対応するのかという話です。ただAndroidは思ったよりハードウエアの縛りを入れていないですね。

石野氏:入れようと思えば入れられるところだけど、あまり縛りませんでしたね。

法林氏:そう。なので快適に使えるかは最終的にハードウエアのメーカーやキャリアの判断次第。

石野氏:iPhoneの場合は2021年6月に最新OSを発表してすぐにデベロッパー版をリリース、7月にはベータ版がインストールできて、9月には正式版がリリースされみんな一斉に使えます……というスケジュールがわかっています。

 Androidがいまいち盛り上がりに欠けてしまうのが、5月に発表してベータ版がちょっと後には出るんですけど、正式にいつ入れられるかとなるとメーカーによってまちまちとなってしまうところですよね。

法林氏:ハードウェアとソフトウェアを単独で作っている会社と、ソフトウェアを開発して、他社にも提供している会社の違いなので、両社を単純比較するのは難しいよ。Androidを5月に発表しているのはあくまで開発者向けであって、ユーザーに対する発表ではないからね。

石川氏:OSの要件という話でいうと、Windows 11もすごく厳しくて、結局どのパソコンにインストールできるのかよくわかりません。少し「TPM(セキュリティチップ)」のあたりで当初の発表より要件が緩むという話もありますが、こんなにすぐ緩めるものなのかと驚きもしました。

法林氏:CPUメーカーとパソコンメーカーが思い描いている「この辺の線引きで商売したいな」という思惑はうっすら見えてくるけどね。

石野氏:5年ほど前の製品を今回、買い替えるっていうイメージですかね。

法林氏:Windows 11の発表直後、世界中のユーザーから「システム要件が厳しすぎる」と声が上がったので、少し緩めるかもしれませんね。ただTPMの要件を緩めるとセキュリティ的に大丈夫? という話にもなってきますが。

石野氏:インテル製のチップセットだと、だいぶ古いチップセットでもTPMは搭載されていますよね。

法林氏:TPMが入っていてもハードウエアとして有効になっていないケースもある。あと、CPUの世代で見ると、第7世代インテル以前については、今回のWindows 11推奨モデルに当てはまらないという、やや厳しい要件。それはさすがにひどいよねという意見も多く上がっています。

石野氏:相当厳しいですよね。今までのWindowsのアップデートでは、かなりの数のモデルにインストールできて、幅広いデバイスをカバーしていたのに今回そこまで厳しくやるのかと意外に思いました。だっていまだにWindows 3.1とかWindows 95のソフトがWindows 10で動くんですよ。そんな懐の深いマイクロソフトがあそこまで旧モデルをズバッと切り捨てるのはびっくりでしたね。

石川氏:マイクロソフトとしてもユーザーの動向にちょっと探りを入れているのかもしれないよね。

法林氏:アプリに関してはある程度仕方ない部分ですけど、ハードウエアとして動くかどうかの要件でいうと、例えばSurfaceの最新モデルが「Surface Pro 7」だけど、「Surface Pro 4」は要件を満たしていない、というのがショックでしたね。

Surface Pro 7

石野氏:Windows 10なんて、無理やりやれば富士通のWindowsケータイにもインストールできるくらい緩かったのに(笑)

房野氏:「Windows 7」「Windows 8」「Windows 8.1」などのOSはどこまでアップデート保証されるのでしょうか。

法林氏:Windows 7は2020年1月にすでに期限が切れているので無理でしょう。Windows 8はもう少し大丈夫です。ただ、Windows 10が出たタイミングでみんなWindows 10にアップグレードしてねということで無償アップグレードを長くやっていたので、本来であればみんながWindows 10であるはずなんです。

石野氏:そもそもWindows 10が出た時に、「今後は一生Windows 10」っていう記事をいっぱい見た気がするんですけど、あの話ってどうなったんですか(笑)

法林氏:それは誰もが思っているんじゃないかな(笑)

石川氏:中にはマイクロソフトはWindows 10が最後とはいっていないと書いている人もいますよね。

法林氏:マイクロソフトがいったのはOSのアップデートはしないという話ではなくて、バージョンをカウントアップするのはやめますといっていたはず。バージョンを上げるたびにパッケージを売ってお金をとるのはやめるといっています。だからバージョンの番号をWindows 10で固定する、とはいっていないという解釈ですね。名前が変わるだけでやっていること自体は変わらない。

 今回面白いのは、しばらくの間はWindows 10とWindows 11が併用されていくことですね。パソコンがWindows 11の要件を満たしていない場合は、Windows 10のまま2025年まで継続してアップデートされることになります。

房野氏:Windows 10も継続してアップデートされるけど、Windows 11の新機能などは使えないというイメージですかね。

法林氏:そうです。だからこそマイクロソフトは対応デバイスに厳しい要件を設けたということです。

Windows 11搭載パソコンでAndroidアプリが動かせる!

石川氏:Windows 11の新機能という話だと、Androidアプリが動かせるというのはちょっとびっくりしましたね。

法林氏:あれは結局、コードを変換して、動かすもので、ARM(Androidなどで採用されるチップセットの基本命令セット)向けのソフトウェアが直接、Windows上で実行できるわけではない。

石川氏:そうなんですけど、AndroidのエコシステムをWindowsへ乗せることに関してはやっぱりちょっとびっくり。ただしアプリストアは「Google Playストア」ではなく「Amazonアプリストア」ですけどね。

石野氏:Androidはオープンソースなので、グーグルだけのものではない。「Google Mobile Service」が載っていないAndroidスマートフォンをHUAWEIが出したりもしています。その中の1つとしてAmazonが開発、運用しているAmazonアプリストアをWindowsでも使えるようにしますという話ですね。

石川氏:Google Playストアじゃなくて、Amazonアプリストアになったのはなんでかなと思ったけど、ほかの人の記事とかを見るとAmazonアプリストアに“限定”したわけではないみたいです。となると中国ではもしかしたら、HUAWEIの「AppGallery」に採用されるかもしれません。

AppGallery

法林氏:HUAWEIはWindowsパソコンもずっと作っているし可能性はあるよね。

クアルコムから低価格パソコン向けチップセットが登場

房野氏:クアルコム社が発表した「Snapdragon 7c Gen 2」チップについても教えていただけますか?

石川氏:パソコン向けの低価格モデルチップセットですね。安い端末向けにSnapdragon 7c Gen 2を作ったのでたくさん使ってほしいというクアルコムの意図を感じます。Snapdragon 7cはシャープがChromebookに搭載しているので、今後はWindows版のパソコンにもSnapdragon 7c Gen 2が採用されるかもしれません。Cellular対応のチップセットなので需要はあると思います。

 ただし、クアルコムはパソコン向けにいろいろ頑張っているけど、なぜかいまいち盛り上がらないんですよね……。

法林氏:結局はOSの問題だと思いますよ。LTE対応Chromebookって実はあまり製品数がないので、一般向けにシャープは販売しても良かったんじゃないかな。

石野氏:そうですよねぇ。

房野氏:Snapdragonのパソコン用チップはWindowsにも対応しているのでしょうか。

石野氏:対応はしていますが、ARM版のWindowsってアプリによっては動きが微妙に違うんですよね。

法林氏:Windowsで動かすのとChrome OSで動かすのはどっちの効率がいいのかという話になってきます。現時点ではChrome OSのほうが楽なんだと思います。

房野氏:性能的にはインテル Celeronくらいのイメージですか?

石川氏:いや、それよりも優れているはずです。ただ、ソフト対応の部分だとかで旗振り役がいないイメージはありますね。例えばMacがインテルから自社製に切り替えるタイミングでは、Adobeなどのメーカーが積極的にソフト開発をして、多くのソフトがM1対応になった。ARM版Windowsで積極的なメーカーが出てこないというのは、やっぱりデバイスの売れる数が少ないからなのかなとも思います。

 ソフトの種類が少ない、ハードもあまり出ないという状況になってしまっているので、これでは盛り上がるのも難しいです。

法林氏:Snapdragonを乗せたパソコンで、このハードウエアを使いたいという声が、「Surface Pro X」以上のもので出ていない。

Surface Pro X

石野氏:Adobeの公式HPを見ると、ARM版Windows用ソフトは2021年登場予定となっています。変換してAdobeソフトをARM版Windowsで使うこと自体はできますが、重いソフトだとパフォーマンスが落ちてしまって、なんのためのARMだろうってなってしまう。

法林氏:そう考えるとWindowsで動かすよりも、Chromebookで動かす方がいいかな。今Windowsのパソコンって安ければ5~6万円程度でも買えるけど、Chromebookなら同じ値段でLTEも使えて、かつグーグルともしっかり連携するとか、eSIMを乗せるといったことをすれば、アドバンテージになり得る。クアルコムは結局チップメーカーなんですよ。チップセットだけでは作業ができなくて、メモリとかキーボード、ディスプレイがないとパソコンとしては成立しない。製品群の柱になるようなものがないと厳しいと思います。

房野氏:クアルコムがマイクロソフトと手を組んで出したのがSurface Pro Xだったんですよね。

石川氏:そうです。Surface Pro Xのチップセットは「Microsoft SQ1」「Microsoft SQ2」といった名称ですが、ベースはSnapdragonになっています。自分も買いましたがアプリの対応が全然できていなかったりと、やや消化不良な感じがした。本来であれば省電力ですぐにLTE通信ができるともっと盛り上がっても良かったんですけどね。

石野氏:Surface Pro Xがもっと売れていれば、ARM版Windowsの波は来ていたかもしれませんね。

房野氏:「Surface Duo」のような2画面デバイスにSnapdragonを搭載するといった可能性はありますか?

Surface Duo

法林氏:ああいう特殊な形状のハードウエアで使うのは、今後、厳しいかもしれません。今のパソコンでもキーボード着脱の「2in1」か、ディスプレイが360度反転する「コンバーチブル」が限界かな。可能性はあるけれど2画面モデルを10万円以下で販売できるかというと難しい。今そこにお金をかけるユーザーも少ないと思うので、売れ行きは厳しいと予測できます。

 Chromebookをしばらく使っていますが、初期化しても同一のGoogleアカウントでログインすればすぐに作業環境が戻るという仕組みはやっぱり便利だと感じました。結局使いたいのはアプリであって、ハードウエアに不要な派手さはいらないのかなとも思います。

……続く!

次回は、アップルの開発者向けイベント「WWDC 2021」について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦

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