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引退後に備えろ!宅建受験、低酸素ジムの経営、投資、プロサッカー選手・鄭大世の副業術

2021.07.14

2010年南アW杯出場のFW鄭大世の副業術


自ら運営する低酸素ジムでバイクをこぐ鄭大世(本人提供)


町田では73日の栃木戦で今季初ゴールを決めた(本人提供)

54歳の三浦知良(横浜FC)を筆頭に、現役プロサッカー選手の選手寿命は延びているが、いつか必ず終わりは訪れる。ケガでプレー続行不可能になるのか、出場機会減による契約満了なのかは分からないが、Jリーグクラブとの契約が終われば、サッカーで収入を得る道は絶たれることになる。

 危機に直面したことのある1人が、2010年南アフリカワールドカップ(W杯)に北朝鮮代表として出場したFW鄭大世(町田)だ。

2020年末に人生初の契約満了を経験

彼は朝鮮大学校から2006年に川崎フロンターレに加入。2010年夏までプレーし、中村憲剛(川崎FRO)とのホットラインでゴールを量産した。「憲剛さんには鍛えられました」と本人は苦笑いする。

日本屈指の名パッサーとの共演で大きく成長したこともあって、南アW杯出場と直後のドイツ・ブンデスリーガ当時2部のボーフム移籍が実現。そこで1年半で14得点と結果を残し、2012年1月には1部・ケルンへ移籍。ここでは思うような活躍は叶わなかったが、世界トップレベルを体感したことは、その後のキャリアのプラスとなった。

1年後の2013年1月には韓国・Kリーグ1部の水原三星へ移籍。そこで3シーズンプレーし、2015年にJリーグ復帰を果たした清水では、J2を戦った2016年に26ゴールを挙げ、J1昇格の原動力になった。が、コロナ禍の昨季は出番が激減。シーズン中にJ2・アルビレックス新潟へのレンタルを決断する。新天地では夏の移籍で9得点と結果を残すも、年末には契約満了。36歳にして初めて引退を覚悟した。

 それでも、彼のもとには複数のオファーが届いた。その中から年末ギリギリのタイミングでFC町田ゼルビア入りを選択し、今季を戦ってるが、「どれだけ実績を積んでも不安は消えない」と本音を吐露する。国際経験含め多彩な実績を持つ鄭大世なら、それなりの蓄えもあるはずだが、「今までは漠然と楽観的に将来を描いていましたけど、昨季初めての契約満了を経験して、サッカー以外で稼ぐスキルがゼロだと現実に直面しましたね」と不安は尽きないという。


オープンなキャラクターで多くの人々に愛されている(本人提供)

清水時代に本気で取り組んだ宅建受験

もちろん30代に突入した頃から「いつか終わりが来る」という感覚はあった、そんな時、考え始めたのが、資格取得だった。不動産投資に興味があった彼は宅地建物取扱主任者(宅建)資格取得を本気で考え始めたのだ。

「清水に在籍していた2017年。宅建は試験が年1回で10月だったので、2月から本気で勉強をし始めました」

 試験は50問でマークシート方式。民法等が15問、宅建業法が20問、法令上の制限が8問、その他関連知識が8問という配分になっていて、合格ラインは35点前後と言われる。大学時代は体育学部で、法律知識が皆無に等しかった鄭大世が最初に考えたのは、静岡にある大原学園への夜間コース入学だった。週2~3回・1720時の授業を受けることで、幅広い知識を効率よく得られる。そのうえで、不動産知識を徹底的に叩き込んだという。

「1日平均5時間、多い日は8時間勉強したことがありました。過去問、授業の復習をしたりと、メチャメチャハードにやってました。僕は大学も推薦で行きましたし、受験勉強をしたことがなかったんで、要領が全然分からず、必死に量をこなしていました。勉強をしてこなかった分、学習意欲が爆発したのかな(苦笑)。当時は楽しくて両立は苦にならなかった。試合でも活躍していて、すごく充実していましたね」

しかしながら、試験は惜しくも不合格。再チャレンジは考えなかった。

「サッカーと資格取得の両立を目指して最大限取り組んだつもりが、痛いしっぺ返しを食らいました。次の2018年から監督が代わり、先発を外され、サブになりました。相当悔しかったですね。2019年も序盤5試合くらいにスタメンに復帰して『ここから復活だ』と思った矢先にライバルにポジションを奪われた。そういった事態に直面すると、二兎を追っていたことへの自責の念に押しつぶされそうになりました」

次なる一手は低酸素ジムへの出資

とはいえ、そのままではセカンドキャリア準備は一切、できないまま。引退後やお金に対する不安も拭えない時に出会ったのが、「ハイアルチ」という低酸素ジム。それを静岡に作りたいという思いが込み上げ、行動に移した。

「ハイアルチの方に話したら同じように静岡に出したいという経営者の方がいた。彼とすぐに連絡し、会って話し、一緒に会社を興し、『DOPE』というジム(https://dope-fitness.com/)をオープンさせたのが、宅建に落ちた翌年の2018年。順調な滑り出しでしたが、コロナ禍で大打撃を受けながらも、3年で出資金を回収できました。低酸素ジムの効果を実感してくれたのかなと感じます。実は7月には横浜・中華街の2店舗目にも出資することになりました。そうやっていくつかの収入源を作っておけば、引退後のその道筋が1つ見えてきて、少し気が楽になりました」


静岡の低酸素ジム「DOPE」前で(本人提供)

コロナ禍には投資の勉強にも注力。引退後に備える!

鄭大世の将来への取り組みはそれだけにはとどまらない。投資に本腰を入れ始めたのだ。

「親世代は貯金していればお金が増えた。バブル崩壊で株が紙切れになった失敗例も重なり、『とにかく貯金しろ、投資に手を出すな』言われてきました。でも、川崎時代の貯金が海外から帰ってきた時も全く同じ金額だったことには違和感を覚えずにはいられなかった」と彼は言う。こうした経験から「貯金は意味がないからお金を使って、不労所得を得られるようにしたい」という考えが芽生えたのだ。

 そして、コロナ禍の2020年に「漫画インベスターZ」や「中田敦彦のお金の授業」を見て、「自分が探していたのは株式投資だ」と確信。本格的にアクションを起こした。トヨタの株を初めて買った時から1年あまりが経過した今、コロナバブルの恩恵も助け、多くの含み益を抱えるようになったという。

『株式投資うんぬんよりも、それをきっかけに資本主義のからくりが見えてきて、価値の見極めができるようになったんです。

 例えば、「高級車」や「ブランド品」なんかは、本来の目的プラスアルファで『見栄』という付加価値に高い金額を払います。それが一番値が張る。それに気づけたら全てがハリボテに見えてきました。物欲はかなり強い方でしたが余計なものは一切買わなくなりました。

 でも、溜め込んでばかりでは人生の旨みがないですよね。人とのつながりを維持する会食などの支出、プレゼントや社会貢献でえられる幸福感も立派な投資には惜しまず使います。それも踏まえつつ、宅建のような自己投資、ドープのような事業投資、不動産投資、それに金融投資を始めました。こうやってマネーマシンを作れれば、引退後のお金の不安がなくなっていくのかなと感じたんです」


清水時代の後輩・大前元気との2ショット(本人提供)

うまい投資話はない。身銭を切って経験することが大事!

収入の多いサッカー選手には、さまざまな投資話や保険の誘いがある。実際、彼自身も何度か大金を失った経験がある。だからこそ、投資のリターンの相場を知ることが重要だ。通常、年4~5%のリターンが相場という事実を知ってれば、年間200%のリターンの投資話が来たら「そんなうまい話はない」と身を守ることにつながる。

 同時に、身銭を切って投資することの重要性も彼は実感している。というのも、世界情勢にアンテナを張り、能動的に情報を得るようになる。やはり「とりあえずやってみることが成功の源」といっていいだろう。

「僕は引退後、雇われるのは苦手なタイプ。かといって自ら事業を起こして発展させるスキルもノウハウもありません。だからこそ、できるだけ頭を使いながら、収入を得られる形を今のうち構築しておきたいんです。お金の不安は誰にでもありますけど、不安だからこそ少しずつアクションを起こしていくことで、僕らアスリートの未来は開けるはずです。

今、僕自身が強く思うのは、これをもっと早く知りたかったということ。若い頃は『使って経済回せ』という声が多かった。この先、機会があれば、新人研修なのでこれからの選手たちに教えてあげたいです」

そんな積極性は鄭大世のサッカー人生にも通じる部分。川崎、清水、新潟、町田のJリーグ4クラブでプレーし、ドイツ、韓国にも身を投じ、さまざまな言語を学んで異文化に溶け込もうとする勇敢さがあったからこそ、彼は大きな存在感を示すことができた。セカンドキャリアにおいてもアグレッシブさと明るさ、オープンマインドな姿勢は必ず生きてくるはず。まずは今季の町田での後半戦の活躍に期待しつつ、彼のその後の人生にも注目していきたい。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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