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GMOあおぞらネット銀行が中長期戦略で柱に掲げた「組込型金融」とは何か?

2021.07.17

インターネット専業銀行として、今年で4年目を迎えるGMOあおぞらネット銀行が、2021年7月6日に中長期の事業戦略を発表した。(プレスリリース)。

■GMOあおぞらネット銀行の中長期事業戦略

引用元:プレスリリース

3つの大きな柱として、「スモール&スタートアップ向けNo.1」、「組込型金融サービスNo.1」、「テックファーストな銀行No.1」を掲げている。

2021年を「第二創業期」と位置づけ、(1)法人サービスの拡充と(2)組込型金融サービス基盤の拡充を行うというが、その狙いや背景は何か。フィンテックの最新時流になっている組込型金融とは、どういったものか。

同社のサービス拡充内容をまとめたのち、解説を加えた。

GMOあおぞらネット銀行のサービス拡充内容のまとめ

(1)法人サービスの拡充

主にスモール&スタートアップ企業向けに資金繰りと残高管理のサポートを行う。

①10万円の自動融資サービス「あんしん10万円」の開始

デビットカードの決済時や口座振替時に、残高が不足したとき10万円の融資枠の範囲で、GMOあおぞらネット銀行が立て替え払いをする。

②クラウド会計freeeと連携強化

ビジネスローンなどで連携実績のあるfreee社と新たな連携を行う。「入出金アプリfreee入出金管理 with GMOあおぞらネット銀行」を提供し、他銀行の口座残高や入出金明細を統合。口座残高や資金繰りを一元的に見える化して、法人顧客の資金管理をサポートする。

(2)組込型金融サービス基盤の拡充

銀行サービスをパーツ化して、デジタルサービス上で利用する「組込型金融」に対応するため、GMOあおぞらネット銀行が提供する銀行API関連のサービスを拡充する。

①銀行APIのサービス名称を「かんたん組込型金融サービス」に変更

名称を変更するとともに、銀行APIを利用する顧客に対するサポート体制を強化し、デジタルサービスへの組み込みや、経理業務効率化の提案を強化する。

②デジタルビジネスガレージ「ichibar(イチバー)」を2021年8月から提供開始予定

組込型金融で実際に作ったサービスアイディアを、世界中に人々に向けてテストする仕組み。組込型金融のハードルを下げて、アイディア創生から実装・テストを行いやすくする。

「組込型金融」は、銀行機能をパーツ化して様々なデジタルサービスに組み込む概念

組込型金融とは2020年頃から注目されているフィンテック(金融×IT)の概念の1つ。

また、BaaS(バンク・アズ・ア・サービス)の進化系でもある。

銀行がAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を構築し、銀行機能をデジタルサービスとして提供するのがBaaS。外部の企業は、BaaSを使って、自社顧客向けの銀行サービスを提供している。

日本国内では住信SBIネット銀行が手がける「NEOBANK」が、BaaSの例として有名。NEOBANKを使って、大手家電量販店グループのヤマダホールディングスやJALなどの企業が、銀行サービスを運営する。

銀行振込やローンといった機能を1つの大きなサービス群として提供するBaaSに対して、組込型金融では、機能をパーツごとに分解して提供する。振込機能、ローン機能、資産運用機能……。という風に細分化して提供することで、デジタルサービスを利用する顧客が、より素早く金融サービスに接続できるようになる。APIも機能パーツごとに分解される。

例えば、オンライン通販での支払い時に自動で銀行ローンの利用を提案したり、自動車保険を契約するときに、次の自動車買い替えに向けた定額の預金積立設定を同時に行ったりなどのサービスなどが可能になる。

米ニューヨークにある投資ファンド「Lightyear Capital」社の調査結果によれば、組込型金融の市場規模は、2025年に、対2020年比で約10倍になると見込まれ、構想だけではなく、デジタルサービス上での実需が期待されている。

■組込型金融の市場規模

引用元:Lightyear Capital

組込型金融のことを英語では「Embedded Finance」(エンベデッド・ファイナンス)という。またパーツ化とほぼ同じ意味で「モジュール化」ということもある。

■GMOあおぞら銀行のichibarのサービスイメージ

引用元:プレスリリース

GMOあおぞら銀行では「sunabar」という銀行APIの検証サービスを提供している。このAPIを使って実際に開発した組込型金融サービスを流通する基盤が「ichibar」である。

1万社以上の法人が毎月誕生する環境下での“青田買い”戦略

GMOあおぞら銀行のプレスリリースでは” 「お客さまのビジネスの成長=当社の成長」として、共に成長する銀行であるべく”と述べている。創業間もない企業に対する支援を行うとしている。

企業の信用調査などを手掛ける帝国データバンクの調査によれば、日本国内では毎月1万社程度の企業が誕生している。

■新設法人数の推移

引用元:法人新設移転状況(2021年5月報)/帝国データバンク

これらの企業に対する法人口座の「一番乗り」をGMOあおぞら銀行は目指しているようだ。

法人口座では、個人口座に比べて、銀行振込件数や融資の需要が大きい。

プレスリリースでは“他銀行に比べて、高品質で低価格のサービス提供で、競争力を強化することで、差別化を実現している”と述べている。

コロナ禍で資金繰り需要が増えたり、リモートワークのためのデジタル化が加速したりしている経済環境下で、創業間もない企業を青田買いするように支援する姿勢は、好感が持てる。

10万円ながら、立て替え払いの融資枠を設定できるだけの銀行体力が、創業4年にして身についたのは「テックファースト」のおかげなのだろうか。

またクラウド会計サービスfreeeとGMOあおぞら銀行とは、ビジネスローンなどですでに提携していた。今回の連携強化で、他行のデータも一元管理でき、企業に対する新たなローンの提案などが行いやすい格好となった。

■「あんしん10万円」は融資審査書類不要で利用できる

引用元:あんしん10万円の特長/GMOあおぞらネット銀行

法人口座開設には審査が必要とあるが、あんしん10万円の利用には、融資審査書類の提出が不要としている。最短で、申込から即日で利用できる。

法人にとって10万円は額が小さく見えるが、クラウドに立てたサーバーの月額費用は、数万円程度の額になることが多いので、こういった支払いに重宝しそうだ。

日本のフィンテックの高度化は、GMOあおぞらネット銀行がけん引しているといっても過言ではない。

文/久我吉史

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