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情報を預けて対価をもらう!?三菱UFJ信託銀行が情報銀行サービス「Dprime」を開始

2021.07.14

三菱UFJ信託銀行が2021年7月1日から情報銀行サービス「Dprime」を開始した。

情報銀行とは、個人の利用者を対象に、年齢や趣味嗜好、位置情報による行動履歴、資産情報などのデータを「お金」と同じように預けると、対価が得られるサービスのこと。

企業が集める個人データのプライバシーが、社会全体で課題となっている今、企業のデータ活用と個人のプライバシー保護の「良いとこ取り」ができる期待感があるが、三菱UFJ信託銀行はその期待に応えられるのか。

また、個人は魅力的な対価を得られるだろうか。本稿で考えてみた。

ビジネスモデル:Dprimeが個人と企業をつなぐデータの仲介役になる

■Dprimeのユーザー利用イメージ

■Dprimeのビジネスモデル図解

引用元:Dprimeメディア発表会資料/三菱UFJ信託銀行(以下、引用元が表記無き場合は同資料より引用)

まずビジネスモデルをまとめておく。

Dprimeは情報銀行としてマーケティングや新規事業企画などに個人データを活用したい企業と、データを提供して対価を得たい個人ユーザーとをつなぐ仕組み(上図)。

三菱UFJ信託銀行はデータを利用する企業から「利用手数料」を得る。個人ユーザーへの対価の支払いは、三菱UFJ信託銀行ではなく利用企業が直接行う(下図)。サービス開始時点で、企業が支払う利用手数料額や体系は開示されていないので、費用がいくらかかるかは、直接問い合わせないとわからない。

ユーザー向けには、Dpirmeはスマホアプリで提供される。

アプリに個人情報を登録すると、企業からデータを提供して欲しいというオファーが届き、個人が同意すれば個人データが企業に渡され対価が貰える。

個人を特定できる氏名や住所地の詳細などは提供されず、三菱UFJ信託銀行内のみで保管する。

三菱UFJ信託銀行によれば、今後2年でアプリ登録ユーザー100万人、提携企業数100社の参入を目指しているという。

■情報通信白書でデータ利用の企業数増と生産性向上期待を示唆

引用元:2020年版情報通信白書「第1部 第2節 デジタルデータ活用の現状と課題2 海外との比較」/総務省

総務省が公表している2020年版の情報通信白書によれば、デジタルデータの活用を行っている企業は、行っていない企業に対して生産性が8%向上するという研究結果を示している。一方、データ収集を行っている割合は約25%。米国が53%であるため、情報銀行を利用する企業を開拓する伸びしろはありそうだ。

三菱UFJ信託銀行はすでに類似の業務フローを確立していた

そもそも信託銀行とは預金やローン安どの銀行業務に加えて、文字通り資産を「信じて託す」業務を行っている銀行のこと。例えば遺言信託では、遺言する人が信託銀行に自分の金融資産や不動産などを「信じて託し」管理してもらうサービスである。

信託銀行が行うサービスには、企業の株主の名簿を管理する「証券代行業務」も含まれている。

■三菱UFJ信託銀行の証券代行業務の実績

引用元:証券代行業務のご案内/三菱UFJ信託銀行

この業務では、企業に変わってその株主の個人データを管理し、株主総会の招集通知を送ったり、企業の利益を分配する配当金の支払いを行ったりしている。上図の通り三菱UFJ信託銀行は上場企業の約40%のシェアがあり、約2800万人の株主を管理している。

証券代行業務は、大量な個人情報を管理しながら必要な時だけ企業と個人データをやり取りする仕組みなので、情報銀行での個人と企業とをつなぐ仕組みに似ている。

業務経験がある分、情報銀行サービスの品質が他社よりも期待できそうだ。

また「信託銀行」の名は、個人データを「信じて託す」信頼感の醸成に一役買っていて、ユーザーの安心にもつながる。

■高度なセキュリティ基盤や情報管理態勢と業務経験による優位性

上図のDprimeの特性①で説明している金融機関として満たすべき高いセキュリティ基盤での業務に加えて、データフローの業務経験がある点が、他の情報銀行に比べた優位性となる。

■Dprimeの今後の展望

機能強化に加え、ユーザー参加型の共創マーケティングとして、ユーザー視点でのサービス強化の検討は好感が持てる。ユーザーと企業との接点が増えるほど、プライバシーに関する課題が増え、どのような解決を行うのか注目が集まりそうだ。

クーポン配布アプリと大差ない機能に見えるが、確度の高い顧客獲得はしやすいかも?

Dprimeのアプリを実際に使った操作体験は、クーポン配布アプリとほぼ同じ。

むしろ個人情報を初めに登録する分、敷居が高そうだ。

本稿制作時点は、対価に現金は得られず、企業が提供する商品やサービスの割引券が得られる。

果たして個人データを提供してまで割引券を得たいか?という疑問が残る。

なぜなら、情報銀行内で得る対価の価値に対して、個人ユーザーがデータ提供のリスクを負うにふさわしいと思う人が少なそうだから。仮に、クーポン配布アプリを運営する企業が、「プライバシーポリシー」を制定、厳守して誠実にデータ管理を行い、社会の信頼を集めれば情報銀行でなくとも同じビジネスができる。

前向きに考えると、これらの敷居の高さを考えても企業に個人データを提供して対価を得ようとする顧客の営業確度は高いといえる。クーポン配布アプリのようなバラマキを行って薄利多売をするのではなく、良質な顧客を囲い込みたいという企業のマーケティング戦略との親和性は高そうだ。

■Dprimeアプリの操作画面

企業からのオファーには対価の内容と提供する個人データの項目が並んでいる。魅力的な対価と判断できたときに個人データを提供するのは良い。

しかし、闇雲に対価を受け取るのは、万が一のデータ流出事故発生を考えると、リスクが大きそうなので控えたほうが賢明だ。

■三菱UFJ信託銀行が掲げた課題

■ユーザーが持つ情報銀行利用ニーズ

三菱UFJ信託銀行は、個人も企業も、データをもっとうまく活用すべしと課題を提言している。デジタル化が進む社会をもっと便利にしようとも読み取れるし、プライバシーに対して敏感で賢くなった消費者に対して、効果が得られそうな、企業のデータ収集方法の提案とも読み取れる。

クーポン配布アプリと違って、どのデータをどの企業に提供するのか自分自身で選択できるのは、情報銀行ならでは。社会全体が課題と認識しているプライバシー問題に対応していると評価されがちだが、個人からデータを集めるための説得材料の1つでしかないことを@DIMEの読者の皆さんは忘れないで欲しい。

プライバシー厳守に絶対は無いと肝に銘じつつ、情報銀行を上手く使いこなしたい

情報銀行ビジネスに参入する企業は、増え続けるとみて間違いない。あの手この手で、情報が流出しない安心感をアピールしてくるが、「情報銀行=絶対安全」と過信せずに、欲しい対価と見合うリスクが取れるかどうかを判断しよう。対価が魅力的なものを狙い撃ちして、生活を豊かにする糧としてもらいたい。

■Dprimeのロゴ

「データを可能性に変えよう。」は企業だけに向けたメッセージではなく、個人ユーザーの未来のためを思って発信していると良いのだが。

文/久我吉史

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