ラーメンと並んで、もはや国民食と言ってよい「カレー」。
スパイスの配合や使用する食材によって、そのバリエーションは無限大なところも魅力の一つだ。プロ・アマ問わず料理の達人の手によって、星の数ほどのカレーのレシピが誕生しているが、今回紹介するのはちょっと違う。
その名も、健康食としてのカレーの効果をパワーアップさせた「パーソナルカレー」。管理栄養士・石松佑梨さんが考案した「最強のメニュー」ということで、著書『過去最高のコンディションが続く 最強のパーソナルカレー』(かんき出版)で紹介されている。
健康効果が凝縮されたカレータブレット
栄養学的な話は後ほど説明するとして、まず作り方を。最初にカレータブレットを作る。これは、一般的なカレーのルーにあたるもので、作り置きして冷凍保存が可能だ。その材料は、オリーブオイル、にんにく、しょうが、玉ねぎ、トマトホール、カレー粉、ガラムマサラ(パウダー)の7種類。
詳細な分量については本書を参照してほしいが、筆者が実際に作ってみた(約5皿分相当)。
【作り方】
1. にんにく、しょうがはみじん切りにしておく。フライパンにオリーブオイルを入れて火にかけ、にんにく、しょうがを入れて、香りが立つまで炒める(中火1分)。
2. 千切りした玉ねぎを入れて、アメ色になるまで炒める(中火8分)。
3. トマトホールを入れて水分がなくなるまでしっかり炒める(中火5分)
4. カレー粉、ガラムマサラを加えて、粉っぽさがなくなるまでしっかり炒める(弱火1分)
慣れぬ玉ねぎの千切りにちょっと苦戦したが、20分足らずでカレータブレットのできあがり。すぐに使わない分は、ジップ付き保存袋に入れて冷凍庫へ。2か月くらい保存できる。
自律神経のバランスを整える効果が肝
なぜ、これが健康に良いか? 石松さんが本書の中で一つ一つの食材について解説をくわえているが、ざっくりまとめると以下のようになる。
・オリーブオイル:ポリフェノールに高い抗酸化力があり、生活習慣病予防やアンチエイジングの効果が期待できる。
・にんにく:硫化アリルに抗酸化力があり、また、ビタミンB1の吸収率を高めて糖質燃焼をサポート。ビタミンB6も豊富に含む。
・しょうが:血行を促進し、体を温める効果があり、免疫力が高まる。疲労回復や高血圧改善などにも。
・玉ねぎ:にんにくと同様、硫化アリルを含む。さらに、血管の老化を含むケルセチンという物質も含まれている。オリゴ糖は、腸内の善玉菌を増やす働きがある。
・トマト:完熟トマトの赤い色素であるリコピンに抗酸化作用がある。
・カレー粉&ガラムマサラ:抗酸化作用があるほか、リラックス効果や消化促進など様々な効用がある。
もう一つ重要なのが、これらの食材には、現代人が崩しがちな自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスを整える効果が共通する点を、石松さんは指摘する。
パーソナルカレーは「副交感神経」の働きを高める食材を組み合わせることで、自律神経のバランスを整えていきます。すると、私たちの体が本来持っている力を最大限に発揮し、さまざまな不調の改善が期待できます。(本書より)
ここで言う「不調」は、体脂肪から免疫力の問題までいろいろあり、不調別に意識したい食事のポイントについても触れられている。
アレンジレシピを作ってみよう
この本では、カレータブレットを使用するアレンジレシピも数多く紹介している。その1つ、「わが家の定番チキンカレー」を以下取り上げよう。
【材料(1人分)】
・カレータブレット:1個
・鶏もも肉:100g
・無糖ヨーグルト:大さじ2
・しめじ:50g
・水:120ml
・塩:2つまみ
・グリーンサラダ:30g
・ゆで卵(半分カット):0.5個
【作り方】
1 ビニール袋に鶏もも肉と無糖ヨーグルトを入れてしっかり揉みこんでおく。
2 フライパンで1、しめじ、カレータブレットを炒め、鶏肉の表面が白っぽくなったら水を入れて、蓋をして煮込む。
3 鶏肉に火が通ったら塩で味をととのえる。
4 好みでサラダやゆで卵を添える。
このカレーで特に期待できる効能は「ダイエット」、「筋力アップ」、「良質睡眠」の3点。また、「疲労回復したいならビタミンB1が豊富な豚肉、貧血を改善したいなら鉄分豊富な牛肉」というふうに、今のコンディションに応じて使用する肉は変えてもOK。ちなみに、ターメリックライスが合うそうで。
おすすめの具材については、月別、曜日別、年代別の指針もあるので、参考にしてみよう。パーソナルカレーは、(毎日は無理でも)定期的に摂ることで健康改善効果が体感できる。自律神経からくる不調が気になる方は、本書をキッチンに常備して、いろいろなレシピにチャレンジしてみてはいかがだろう。
著書:石松佑梨 プロフィール
ウェルネスコンサルタント、管理栄養士。大学卒業後、ウェルネス分野の管理栄養士を経て独立。世界で活躍するトップアスリートの専属管理栄養士として、選手のパフォーマンスアップに貢献する一方、次代を担うジュニアアスリートに向けた食育にも力を入れている。17年間の管理栄養士経験でのべ2万人以上のあらゆる世代・ニーズに対してパーソナルなコンディショニングを提供している。
監修:加賀康宏 プロフィール
霞ヶ関診療所院長。昭和大学医学部卒業後、大学病院、地域の市中病院の勤務を経て、2017年より霞ヶ関診療所院長に就任。総合診療科として生活習慣病や消化器疾患を中心に内科疾患を診療。自身も生活習慣の改善により12kgの減量に成功。「世界一受けたい授業」(日本テレビ)の医療監修や、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日)などにも出演。
文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)