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ランボルギーニ「アヴェンタドール」に秘められた10のイノベーション

2021.07.11

ランボルギーニ「アヴェンタドール」

2011年3月にジュネーブで行われたアヴェンタドールLP700-4の発表会で、アウトモビリ・ランボルギーニPresident and CEOのStephan Winkelmann(ステファン・ヴィンケルマン)氏は次のようにコメントしました。

「当社のスーパーカーの未来は、アヴェンタドールLP700-4の誕生で現実となりました」

あれから10年経った今、アウトモビリ・ランボルギーニは世界的なアイコンとなったV12モデルの歴史を称え、アヴェンタドールのこの10年間の10のイノベーションを振り返ります。

アヴェンタドールの価値は、自然吸気V12エンジンのパワーやその性能だけにとどまらない。これまでに登場した「LP700-4」「スーパーヴェローチェ」「S」「SVJ」という4つのバージョンに導入された技術革新もその価値に結びついている。

1.カーボンファイバー

アヴェンタドールLP700-4にはランボルギーニのスーパーカーで初めてカーボンファイバーモノコックが採用された。これにより、複合材料の製造と開発における同社のリーダーシップが確立され、社内でこれほど大量のカーボンファイバー製部品を製造する世界初の企業となった。

ランボルギーニが誇るさまざまな特許取得済み技術を駆使したアヴェンタドールのカーボンファイバーモノコックは「シングルシェル」モノコックで、クルマのコックピット、フロア、ルーフをひとつにした単一構造でつくられているため、きわめて高い構造的硬直性が保証されている。フロントとリアにある2つのアルミニウム製サブフレームと合わせ、高い構造的硬直性とわずか229.5kgの並外れた軽さを実現する工学的ソリューションである。

アヴェンタドール・ロードスターのルーフは、すべてカーボンファイバー製の2つのセクションで構成されており、ソフトトップ仕様のムルシエラゴからさらに進化したものとなっている。こうした技術は見た目の美しさだけでなく、きわめて軽量なルーフにもかかわらず最適な剛性をもたらしている。実際、ルーフの各セクションは6kgに満たない軽さを実現させている。

スーパーヴェローチェでは、さらにドアパネルとシルにもカーボンファイバーを使用し、超軽量複合材料(SCM)でのモデルチェンジを図りました。特にインテリアには、生産車で初めてカーボン・スキンテクノロジーを採用。非常に特別な樹脂を組み合わせた超軽量素材は、とても柔らかな触り心地でありながら耐摩耗性がきわめて高く、柔軟性にも優れている。

2.四輪駆動

アヴェンタドールの絶対的なパワーには当初から信頼性が高く、最高のドライビング体験を可能にするトランスミッションが不可欠だった。前輪、後輪間の電子制御によるトルク配分は、ハルデックス社製のトルク配分システム、リアの自動式デフロック、ESP(横滑り防止装置)と連動するフロントの差動装置という3つの要素に基づいている。

このシステムは、クルマの走行状態に合わせてわずかコンマ数秒でトルク配分を調整することが可能。最も重要な場面では、ドライバーの選んだ運転モードに従ってフロントアクスルにトルクの60%を伝達することもできます。

3.サスペンション

アヴェンタドールには初代モデルから、革新的なプッシュロッド・サスペンション・システムを採用してきた。F1マシンに着想を得たこのシステムは、各車輪のハブハウジング下部に取り付けたロッドが特徴で、これが前後のフレーム上部に水平に取り付けられたショックアブソーバーとスプリングアセンブリに「力を伝達(プッシュ)」する。

ランボルギーニのプッシュロッド・サスペンション・システムはその後、スーパーヴェローチェで磁性流体ショックアブソーバー(MRS)を組み入れ、道路状況や運転スタイルに瞬時に対応。カーブごとにダンピングを調整してロールを大幅に減少し、クルマのハンドリングに対する反応を著しく向上させる。この「適応型」サスペンション機能は、ブレーキ時の車体前部の沈み込みも低減する。

4.インディペンデント・シフティング・ロッド(ISR)ロボタイズド・ギアボックス

アヴェンタドールには、公道を走行できるスーパースポーツカーとして2011年当時では非常に珍しかったロボタイズド・トランスミッションが搭載されている。このシステム(7速+バックギア)により非常に速いギヤチェンジが可能となっている 。

インディペンデント・シフティング・ロッド(ISR)ギアボックスは、1本はギアを入れるため、もう1本はギアを解除するための軽量カーボンファイバー製シフティングロッド2本が同時にシンクロナイザーを動かす。これによりシフトチェンジにかかる時間をわずか0.05秒に短縮した。これは人の目の動きと同じ速度である。

5.ドライブセレクトモードとEGOモード

ドライビングスタイルのカスタマイズもアヴェンタドールとともに進化を遂げてきた。LP700-4の運転モードは5種類を設定。3種類のMT「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」と2種類のAT「ストラーダ・オート」「スポーツ・オート」から選べる。

スーパーヴェローチェでは、3種類のドライブセレクトシステムモード(ストラーダ、スポーツ、コルサ)によってエンジン、トランスミッション、差動装置、ショックアブソーバー、ステアリングを調整できるオプションもついて、これらの運転モードによるドライビング設定の変更機能が向上。

さらにアヴェンタドールSでは飛躍的な進化を遂げ「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」「エゴ」という4種類の運転モードから選べるようになった。この新しい「エゴ」モードでは、ドライバーがストラーダ、スポーツ、コルサという3つのモードの設定範囲内で、トラクション、ステアリング、サスペンションを好みの基準にカスタマイズできる追加の構成プロファイルを選ぶことができる。

6.ランボルギーニ・アクティブ・ビークル・ダイナミクス(LDVA)

アヴェンタドールでは、ランボルギーニ・アクティブ・ビークル・ダイナミクス(LDVA)制御ユニットにより縦方向の制御を行っている。これはアヴェンタドールSで最初に導入された改良版ESCストラテジーで、選択した運転モードに合わせてトラクションやクルマのハンドリングをより速く正確に制御するもの。

LDVAは一種の電子頭脳で、クルマのあらゆるセンサーから伝達されるインプットを通して、クルマの動きに関する正確な情報をリアルタイムで受け取ることができる。したがって、すべてのアクティブシステムにとって最適な設定を瞬時に定義し、走行条件を問わず最高のハンドリングが実現する。

7. Aerodinamica Lamborghini Attiva2.0(ALA2.0)とLDVA2.0

アヴェンタドールのロードホールディングと性能を向上するために、SVJモデルにはALA2.0システムと、改良された第二世代のLDVAシステムを搭載。ランボルギーニが特許を取得したALAシステムはウラカン ペルフォルマンテで初めて登場し、アヴェンタドールSVJでALA 2.0にアップグレードされた。さらに、クルマの横加速度の増加を考慮して再調整されると同時に、エアインテークとエアロのデザインも一新された。

ALAシステムは空力負荷をアクティブに変化させ、動的条件に合わせて高いダウンフォースや低い抵抗力を実現する。電子的に作動するモーターがフロントスプリッターとボンネットについているアクティブフラップを開閉し、前部および後部への空気の流れをつくり出す。改良型の慣性センサーを備えるALA2.0制御ユニットがクルマの電子システムすべてをリアルタイムに制御し、ALAシステムのフラップを0.5秒未満で起動して、いかなる走行条件においても最高の空力形状を保証する。

8.新四輪ステアリング

アヴェンタドールSの導入に伴い、ランボルギーニのラインナップで初めて採用された新四輪ステアリングシステムが、横方向制御にメリットをもたらしている。このシステムにより、低速および中速での敏捷性と、高速での安定性が大きく向上した。フロントアクスルのランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング(LDS)と組み合わせることで、急カーブでの自然なレスポンス、より優れた反応性を保証。ランボルギーニ・リヤホイール・ステアリング(LRS)システムとの一体化を図るために特別に改良されている。

2つに分かれたアクチュエーターがドライバーによるハンドル操作の0.005秒以内に反応し、リアルタイムでの角度調整や、ロードホールディングとトラクションのバランスを向上させる。低速時にはリアホイールがステアリングの角度と反対方向になるため、ホイールベースが実質的に減少。一方で高速時には、フロントおよびリアホイールがステアリングと同じ方向になるため、ホイールベースが実質的に増加して安定性が高まり、クルマの反応性を最適化する。

9.ストップ・スタート・システム

2011年以降、ランボルギーニはエネルギー消費と環境汚染の削減はもちろん、効率性の向上に取り組んでいます。アヴェンタドールではLP700-4モデルより革新的な高速システムを採用。電力を蓄えておくスーパーキャップを備え、燃料消費の大幅な削減を可能にした。

ランボルギーニがアヴェンタドールに新しく導入したストップ・スタート・システムは、自動車業界初となる最新テクノロジーを駆使し、信号などで停止した後にエンジンを再始動するための電力をスーパーキャップから供給することで、驚くほど速い再始動を実現。従来のアイドリングストップシステムとは比べ物にならないほど速く、 V12エンジンが0.18秒以内に再始動する。

軽量設計というランボルギーニの哲学と足並みをそろえるように、この新しいテクノロジーの導入で車体重量の3kg削減も実現した。従来の車載バッテリーは電子システムだけに電力を供給し、小型となり、クルマの寿命が尽きるまでほぼ交換不要で使用できる。

10.シリンダー休止システム(CDS)

効率性を高める2つ目のテクノロジーがシリンダー休止システム(CDS。時速135km以下の少ない負荷で走行時、CDSが2つあるシリンダーバンクのうちのひとつを休止することで、直列6気筒エンジンとして機能し続ける。アクセルをわずかに踏み込むだけで、再びフルパワーのエンジンに戻る。

CDSとストップ・スタート・システムはいずれも驚くほど高速で作動するため、ドライバーは違いにほとんど気づくことなく、ドライビングの感動を妨げられることもない。こうしたテクノロジーを搭載していない場合に比べると効率性は大幅に向上し、ハイブリッドタイプでは燃費が7%削減された。時速130/km前後の高速走行時では、燃費と排気ガスをおよそ20%削減できまる。

ランボルギーニのモデル名の由来を回想すると、いずれも闘牛の名前からとっている。ミウラ、ハラマ、レヴェントン、ムルシエラゴ。そしてその中でも最も誇り高き闘牛がアヴェンタドールなのだ。

1993年のサラゴサで、アヴェンタドールはアリーナで最も勇敢な闘牛であることが証明された。歴史を通して、アウトモビリ・ランボルギーニが2011年に発売したスーパーカーは、10年にわたってイノベーションを積み重ね、自動車界の先頭を毅然と走り続けその存在意義を証明してきたのである。

関連情報:https://www.lamborghini.com/

構成/土屋嘉久(ADVOX株式会社 代表)

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