美しく咲き誇る花々の裏では、人間たちがドロドロの愛憎劇を繰り広げていた……。
Netflixで独占配信中のオリジナルシリーズ『ハウス・オブ・フラワーズ』(全3シーズン)は、一流生花店を営む華麗なる一族が次々と大騒動に巻き込まれていくブラック・コメディ。メキシコで制作された。
主演は『我らのための死』のセシリア・スアレス、原作・制作は『我らのための死』マノロ・カーロ。
続編のNetflix映画『ハウス・オブ・フラワーズ: ザ・ムービー』も、2021年6月23日より独占配信中。
あらすじ
生花店『La Casa de las Flores(ハウス・オブ・フラワーズ)』を代々経営する上流階級のデ・ラ・モーラ家は、“完ぺきな理想の家族”として数多くの取材を受け、世間の憧れの的だった。
しかしその表向きのイメージは、世間体を気にするプライドの高い母ビルヒニアの努力によって維持されてきたもの。
実際には家業は多額の負債をかかえており、倒産と家庭崩壊の寸前で持ちこたえている状態だった。
父エルネストの盛大な誕生日パーティーが開催された日、長年エルネストの愛人をしていた女性ロベルタが生花店の中で自殺。
しかもロベルタには、エルネストとの間に誕生した幼い娘ミカエラもいたことが判明する。大ショックを受けて体調を崩すビルヒニアだったが、実は長女のパウリーナ(セシリア・スアレス)だけは、かねてから不倫や隠し子の秘密を知っていたのだった。
この日を境に、次々と想定外の珍事件が発生。デ・ラ・モーラ家の人々は、それぞれに降りかかる試練の数々に立ち向かうことになる。
見どころ
結婚や家族の“理想と現実”を描いたブラック・コメディという点で、アメリカの大ヒットドラマ『デスパレートな妻たち』にも似ている本作。
既にこの世を去っている登場人物が天からナレーションを担当するところや、噂好きの隣人からプライベートを詮索されるところ、ほぼ全員がありとあらゆるトラブルに次々と巻き込まれていく波瀾万丈なところなどが同じだ。
とにかく「一生に一つで十分です」と言いたくなるレベルの大騒動が頻繁に起こるのだが、へこたれることなく歯を食い縛って頑張る登場人物たちには勇気をもらえるだろう。
本作は、ビルヒニアとエルネスト夫妻とその3人の子どもたちを中心に、それぞれの人生劇場が展開されていく群像劇。
ひとりの主人公だけの人生を掘り下げていくストーリーとは異なり、このタイプのドラマは一作品で何人分もの物語を同時並行で楽しめるところが魅力。
男女の恋人と二股交際を続けるバイセクシャルの末っ子長男フリアン、アフリカ系アメリカ人の彼氏との交際を反対される次女エレーナなど、LGBT・人種差別もテーマとなっており、それぞれの恋の行方が気になる。
一方、一児の母でしっかり者の長子パウリーナは、両親や弟妹から何かと頼られがち。
自由気ままな妹や弟とは違って、一家のまとめ役として常に厄介事を背負って奔走しており、一番心労が大きそうだ。
ちなみにパウリーナの元夫ホセ・マリアは弁護士で、性同一性障害をカミングアウトした後に離婚。現在は女性として生活している。
兄弟姉妹・長子・末っ子それぞれの立場ならではの“あるある”エピソードは、日本人でも共感できるはず。
『デスパレートな妻たち』もそうだが、どちらかというとある程度長く生きてきて人生経験豊富な人の方が、すんなり感情移入して楽しめる作品だと思う。
Netflixオリジナルシリーズ『ハウス・オブ・フラワーズ』(全3シーズン)
独占配信中
文/吉野潤子