呪術を駆使して戦うダイナミックなアクションなどを、高いクオリティーで映像化したのが、気鋭の制作スタジオMAPPAだ。原作者・芥見下々氏や担当編集者との密なコミュニケーションをはじめ、その舞台裏を大塚学代表取締役に聞いた。
MAPPA代表取締役 大塚 学さん
アニメ制作会社「STUDIO4℃」での制作経験などを経て、2011年にMAPPAへ移籍。同社代表として『BANANA FISH』や『ユーリ!!! on ICE』などの作品の制作に関わる。
──アニメ化に当たって、どんな方針を立てられたのでしょう?
大塚 すでに人気の高かった作品なので、「原作のいい部分……キャラクター性だとか、読者に好かれている点を、アニメでしっかりと表現しよう」と、僕からスタッフのみんなにお願いしました。その一環として注力したのが、作品の担当編集さんや、原作者の芥見(下々)先生の言葉を引き出していくこと。例えば、第1話における虎杖とおじいさんとの会話シーンは、虎杖というキャラクターをアニメでどう表現するのか、芥見先生とコミュニケーションを重ねた結果、生まれたアイデアを映像化したものなんです。
──制作体制を組む際には、どんなことを考えたのでしょうか?
大塚 まずはアニメにかなり詳しい芥見先生を満足させられるような映像を作れるスタッフを、しっかり集めようと。特に重視したのがアクションの要素で、朴性厚さんに監督をお願いしたのは、それが大きな理由です。もうひとつは、原作漫画ファンが喜んでくれる作品にすること。その点を突き詰めた結果、アニメーター/演出家の平松禎史さんにキャラクターデザインを依頼することにしました。
──アニメ制作のワークフロー上で特別な工夫はありましたか?
大塚 実はそんなに特殊なことはやっていません。基本は、アニメーターさんたちと協力して、良い作画で良い映像を仕上げていくことに注力していました。アニメーションプロデューサーの瀬下恵介は今作が初プロデュース作品だったのですが、しっかりと期待に応えてくれました。
──アクションを重視して選定された朴監督のスゴい点は?
大塚 もともと、すご腕のアクションアニメーターとして大活躍されていた人で、とにかく自分で描く力を持っている点です。通常は、監督になると指示を出すことや打ち合わせが多くなるので、自分で手を動かす作業は自然と減っていきます。しかし朴監督は、自分が一番手を動かし、原画を描き、アクションカットを作り上げていく。その仕上がりで作品の方向性を示し、スタッフを引っ張っていきます。うちで仕事をされている監督たちの中でも、そういうやり方をするのは朴監督くらいですね。
それに、音楽を映像に乗せるのがとてもうまい! 『呪術廻戦』ではカッコいい音楽に乗せたこだわりのアクションシーンを、お客さんに届けてくれました。特に最終話での音楽と映像の合わせ方は、とても印象的ですね。
──24話を完走し、スタジオとしても大きく成長したのでは?
大塚 これだけプレッシャーのかかる作品を手がけられた半年は、会社として相当成長できた時間だったと感じています。しんどいこともありましたけれど(笑)、やりきったことが大きな自信になって、次に向かうことができます。
──劇場版への期待も高まります。
大塚 テレビシリーズの延長ではなく、2クールの制作を乗り越えたスタッフの成長を感じてもらえる劇場版にしたいと考えています。「テレビを経て、スゴい映画にたどり着いたな」とお客さんに感じていただけたらうれしいですね。
『呪術廻戦』を手がけたMAPPAとは?
2011年に設立。同社が初めて手がけた長編アニメーション映画『この世界の片隅に』(2016年公開)は累計興行収入27億円突破の大ヒットを記録した。直近では『進撃の巨人 The Final Season』(2020年)や『ゾンビランドサガ リベンジ』(2021年)などの人気アニメを担当。6月27日には10周年記念イベントが行なわれる予定。
目線をくぎ付けにする白熱のアクション表現
虎杖をはじめ、迫力あるアクションの数々は、朴性厚監督を中心とするスタッフの才能が、いかんなく発揮されたもの。今年5月に発売された公式原画集第1弾からは、その生き生きとした描写を感じ取れる。なお、同原画集の表紙は、アニメのキャラクターデザインを手がける平松禎史氏がレイアウトを担当した。
『呪術廻戦 原画集 第1弾「KEY ANIMATION Vol.1」』3960円
「アニメじゅじゅさんぽ」など本編以外の見どころも話題に
オープニング&エンディングムービーとともに、本編終了後に設けられた「アニメじゅじゅさんぽ」も人気に。「オマケ扱いのパートをひとつも作らず、全部本気でやろうと。その気合いが映像に乗っていると、完成した映像を観て自分たちも感じました」(大塚さん)
MAPPAが制作する『劇場版 呪術廻戦 0』12月24日公開予定
本編連載前に芥見下々氏が短期集中連載として描き下ろした『東京都立呪術高等専門学校』が原作。虎杖悠仁が呪術高専に入学する1年前を描いた、本編につながる物語。主人公である乙骨憂太(おっこつゆうた)はもちろん、禪院真希、狗巻棘(いぬまきとげ)、パンダなど人気キャラの過去も明らかになる。テレビアニメとともに必見だ。
取材・文/前田 久、桑木貴章 ©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
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