「正しい死とは何か?」という問いに向き合いながら成長していく虎杖悠仁。好演しているのは、数々の話題作で活躍している榎木淳弥さんだ。虎杖悠仁の人物像とともに、ほかのキャラクターとの掛け合いで印象に残るシーンを挙げてもらった。
虎杖悠仁役 榎木淳弥さん
アトミックモンキー所属。『はたらく細胞BLACK』赤血球〈AA2153〉役、『SSSS.DYNAZENON』麻中蓬役、『機動戦士ガンダムNT』ヨナ・バシュタ役など、数々のアニメ作品における主役やメインどころを演じている。
──ご自身が演じられている虎杖悠仁についてお聞かせください。
榎木 序盤でいきなり死刑が確定して「今すぐ死ぬか」「人を助けて死ぬか」みたいな選択を迫られるんですけど、どちらにしても死ぬのであれば最後に何かを残したいと思う気持ちが共感できますよね。虎杖としては「みんなを助けたい」と。例えば、第4話の少年院におけるエピソードでは「犯罪者であっても助けたい」「殺したくない」という虎杖の思いを大切に「絶対に助ける」みたいな気持ちを(演じるうえで)意識しました。
──虎杖の行動原理には、第1話の「オマエは強いから、人を助けろ」という祖父の遺言が関係しています。祖父との別れのシーンは、どう演じられたのでしょうか?
榎木 (悠仁の)祖父の死は、いきなりではなく、覚悟があったと思うんです。家族なので、病状とかもわかっているでしょうし。予感しているところからだったので、大きく取り乱すことはなく、ある程度、状況を受け入れている。それだけに祖父と接する時は、あえて普段どおりに接したいと思う虎杖の気持ちは、すごく共感できました。僕の祖母もいい年齢なので、ある程度、覚悟する気持ちは自分と通じるところがありますね。
虎杖は直情的ではなく冷静かつ理知的な人物
──そんな虎杖について、第1話を視聴された感想は?
榎木 結構、子供っぽい感じですよね。アニメの絵は原作より少年っぽさがあるなと。特に第1話は、呪霊と向き合う前の段階なので、まだ精神的には幼いという印象を受けました。
──呪術師としての経験を徐々に積んで成長していく虎杖を、演者としてどう見ていましたか?
榎木 かなり冷静で理知的なキャラクターだと思います。戦闘のシーンやモノローグでは相手をしっかりと分析していますし。相手の心を慮る発言もあり、意外に直情的ではないんですよね。
──思慮深い虎杖をはじめ、作品に登場するキャラクターのセリフが様々な伏線をはらんでいるのも、『呪術廻戦』の魅力ですよね?
榎木 そうですね。「これを聞いたから、こう言ってるんだ」みたいなつながりが、とても綿密。演者としても、しっかりと台本を読んでいないとわからなくなってしまうところがあって。セリフの意図を汲み取って、つながりを理解していくのは楽しかったです。
様々なキャストから刺激を受けたアフレコ現場
──作品には、虎杖のほかにも魅力的なキャラクターが多数登場します。各々のキャストが集まるアフレコ現場は、どのような雰囲気だったのでしょうか。
榎木 お互いの芝居に刺激を受けて〝高め合う〟感じがありました。例えば、島﨑信長さんが演じる真人(まひと)を見たことが、彼に対して憎しみを抱く虎杖の演技につながるとか。演技に関して言葉を交わすことは少なく、演じる姿から熱意が伝わってくる……という現場だったと思います。
──虎杖を演じるうえで、心がけていることはありますか?
榎木 虎杖に限らず「自分が実感できる気持ちを出す」ことを、常に意識しています。あえて声や感情を作りすぎず、あまり熱くならないように自然体でいようと。どんな作品でも日常の延長に物語があると思っていて、視聴者の皆さんの日常に則った感情に訴えかけることを大切にしています。例えば「元気なキャラクターであれば、こんな声」みたいな〝アニメのお約束〟ってありますよね。それを否定するわけではないんですけど、大げさになりそうな時はなるべく抑えるとか。自分は違う方向性でやっていこうとしています。『呪術廻戦』はすごく人気のある作品だったので、この作品でも演技に対する自分の姿勢を大事に〝媚びない〟ことを意識していたんです。結果「ちゃんとがんばれば周囲は受け入れてくれる」「もっとやれるな」ということがわかりました。ただ、まだセリフを身構えて言ってしまっているところも否めず「芝居ではない」「芝居にしない」ことを突き詰められると思っています。
東京都立呪術高等専門学校の1年生3人は、過酷な任務を乗り越えた末、1級呪術師に推薦される。各々の成長を感じさせるとともに、今後の活躍を期待させる演出で第24話は幕を閉じた。