ロックダウン中のメンタルヘルスに天気は影響しない
通常、天気が良いと気分も良くなり、逆に、嵐の日は気持ちも沈みがちだ。
しかし、英国での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の第一波の間、天気は人々のメンタルヘルスに特段の影響を与えなかったことが明らかになった。
英イースト・アングリア大学医学部のApostolos Davillas氏らによるこの研究の詳細は、「Health Economics」に6月11日掲載された。
ロックダウンにより社会生活と経済活動の抑制を余儀なくされた結果、公衆衛生上、少なくとも2つの大きな悪影響がもたらされたことは、さまざまな研究により明らかにされている。
それは、ジムの閉鎖と移動制限による屋内外での運動量の減少とメンタルヘルスの悪化である。また、COVID-19パンデミックの発生前に行われた研究では、気象条件とウェルビーイングが関連することが報告されている。
そこで、Davillas氏らは、英国での第一波パンデミック中(2020年3月23日の最初のロックダウン開始から2020年7月4日のロックダウン緩和までの間)の気象条件と人々のモビリティ(移動率)およびメンタルヘルスとの関連を調べることにした。
Davillas氏らは、英国世帯縦断調査(UKHLS)のデータを用いて、第一波パンデミック前とパンデミック中のメンタルヘルスを比較した。
また、Google社のCOVID-19コミュニティモビリティレポート(さまざまな場所でのパンデミック前、と比較した人の移動率に関するデータ)を用いて、訪問者数と滞在時間を基にパンデミック中のさまざまな段階における公園でのモビリティを調べた。
両データとも、個別に平均気温や日照時間、総降水量のデータと関連付けられた。
その結果、英国ではパンデミック前と比べて、ロックダウン中に人々のメンタルヘルスが悪化したことが確認された。
悪化の程度は、2020年4〜6月が特に大きく、規制が緩和された7月に入ると落ち着いた。また、最初のロックダウンが開始された直後に、ロンドンの公園でのモビリティは、ロックダウン前(2020年1月3日〜2月6日)と比べて、約50%減少していた。
一方、気象条件との関連に着目すると、日ごとまたは週単位での気象条件は、ロックダウンによるメンタルヘルスの悪化にはつながっていなかった。
その一方で、気温の上昇や日照時間の増加に伴いモビリティは上昇するが、雨天の日には低下するという具合に、公園でのモビリティと気象条件との間には関連が認められた。
こうした結果についてDavillas氏は、「われわれは、悪天候はメンタルヘルスの悪化に拍車をかけ、好天は人々の気持ちを明るくさせると予想していた。天気が良ければ、運動のために、あるいは誰かと会うために出かけやすいからだ。そのため、得られた結果には驚かされた」と述べている。
また同氏は、「その一方で、気象条件は、公園でのモビリティには影響を及ぼすことが確認された。つまり、天気の良い日には、公園に出かける人が増えるということだ」とも話している。(HealthDay News 2021年6月16日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hec.4371
Press Release
https://www.uea.ac.uk/news/-/article/how-good-weather-did-nothing-to-lift-spirits-in-lockdown
構成/DIME編集部