ロシア版『アラジン』とも言える、映像美が見事なラブロマンス
2021年6月16日よりNetflixで独占配信中の映画『シルバー・スケート』は、貴族の女性と窃盗グループの男性との格差恋愛を描いている。
ミハイル・ロックシン監督が『ロミオとジュリエット』と『銀のスケート ハンス・ブリンカーの物語』から着想を得て製作した。
あらすじ
マトヴェイ(ヒョードル・フェドートフ)は、老いた父親と二人暮らしの真面目で心優しい青年。
『グランド・パイ・デリバリー』でパイの配達をしていたが、ある日理不尽な理由で解雇されてしまう。
その直後、マトヴェイは街で偶然出会った男性アレックスから、窃盗グループのメンバーとしてスカウトされる。
アレックス率いる窃盗グループは、ブルジョワ(資本家階級)しかターゲットにしないのがポリシーの義賊。
とくにリーダーのアレックスは、ブルジョワに対して激しい怒りを抱いていた。
さっそくアレックスらが狙いを定めたのは、貴族の女性アリサ(ソーニャ・プリス)とその家族が住む宮殿。
バルコニーから忍び込んだマトヴェイは、アリサと鉢合わせてしまい……。
見どころ
雪と氷に包まれた映像がとても美しく、おとぎ話のように甘くロマンチックなムードに包まれた作品。
要所要所にほどよく入るスリリングで先が読めないアクションシーンも、ラブロマンスを引き締めるスパイス的な役割を担っている。
自由を渇望する深窓の令嬢が身分違いの純愛に落ちるという王道のストーリーだが、真冬のロシアならではの情緒豊かな風景も本作にしかない魅力のひとつ。
よくあるお城の舞踏会シーンも、本作はひと味違う。
宮殿に特設されたスケートリンクの上を、ワイングラス片手に滑りながら踊るというもので、より優雅で新鮮な感じがする。
そしてヒロインのアリサも、古典的ラブロマンスによく登場する普通のお姫様ではない。
本当は科学者になるため勉強に専念したいと考えているのだが、アリサの父親は「女性に学問は必要ない」と考え政略結婚を強制しようとしていたのだ。
高圧的で男尊女卑な父親に反発し、「好きでもない貴族とお見合い結婚して家庭に入る人生は絶対に嫌」と考えていた矢先、マトヴェイと運命の出会いを果たす。
夢見がちな温室育ちのお嬢様などではなく、身分や肩書きなどにとらわれず人の本質を見抜く聡明で理知的な女性であることも、会話の端々で強調されている。
そしてマトヴェイもまた、学歴や教養はないものの、知恵と勇気と思いやりを兼ね備えた青年であった。
身分格差を超えて強く惹かれ合うマトヴェイとアリサだったが、窃盗グループと特権階級との間で繰り広げられる争いに巻き込まれていく。
このまま二人は階級間の対立に引き裂かれて『ロミオとジュリエット』のような悲劇で終わるのか、それともハッピーエンドで締めくくられるのか……結末はNetflixでぜひ見届けてほしい。
Netflix映画『シルバー・スケート』
独占配信中
文/吉野潤子