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ガッキーはオレたちの観音様!僧侶が語る結婚とパートナー

2021.07.01

逃げるは恥だがすぐ忘れる

私たちの毎日はとにかく情報に溢れている。スマホを持って入れば否が応でも様々なニュースを目にすることになる。逐一記憶に残して入れば、あっという間に私たちの頭はキャパオーバーになってしまうだろう。ゆえに、現代人は「忘れること」に特化しているように思える。あなたは、一ヶ月前に世間を賑わしたこの報道を覚えているだろうか?

星野源と新垣結衣の結婚発表である。発表直後、世間はこの話で持ちきりだったが、今はどうだろうか。すでに「ああ、そんなこともあったな」と思った人もいるのではないだろうか。

改めて思い返せば、結婚報道の反響の大きさは、星野源という人間が多くの人々の支えとなっていることを明らかにした。

私も「星野源のオールナイトニッポン」リスナーであり、原稿という大海をさまよう私に灯りを示してくれたのは、このラジオだった。そんな源さんが、ついに源さん自身を支えてくれるパートナーと出会ったのだ!それは、私たちが仏様に出会うことのように、歓喜に満ちたドラマである。

結婚とは〜愛することは別れの約束でもある〜

私たちはその人生で多くの人と出会うが、生涯を共にする存在は稀有である。そして、運命的に愛しい人と出会えたとしても、永遠に共に生きることはできない。どんな出会いにも必ず別れが訪れる。悲しいことだがこれは必然なのだ。

仏教ではこの必然を、人生の大きな苦しみの一つ「愛別離苦(あいべつりく)」として説く。これは文字通り「愛する人との堪え難い別れによって生じる苦」である。いかに忘れることが得意な現代人でもコレは非常に辛い。考え様によっては愛する人との出会いは、いずれ訪れる「苦」を決定的にする行為とも言える。

その先に必ず別れが待っている、それでも私たちは大切な人と出会うことを諦めない。一体何故だろうか?

 愛する人と共に歩んだ仏教者

結婚とは人生の大きな転機である。それは僧侶とで例外ではない。一般的に仏教と結婚は馴染まないイメージがあるかもしれないが、日本では公に結婚した僧侶は何人もいる。

浄土真宗の祖・親鸞もその一人である。親鸞(1173年〜1262年)は平安時代末期から鎌倉時代を生きた人物である。親鸞は公に肉食妻帯を行ったことで有名だが、やはりそれは当時の僧侶としては異質な行為であっただろう。

ただ、いかに親鸞とて最初から何も考えずに結婚を決断したわけではない。むしろ伝記から親鸞の僧侶としての強い覚悟を読み取ることができる。親鸞自身も性的な関係を持つことがタブーであることは十分承知していたが、それでも絶えず湧き上がる愛欲に苦しんだのだ。悩みに悩んだ親鸞はすがる思いで聖徳太子が建立した六角堂に籠り、仏の声に耳を傾けることにした。そしてついに如意輪観音のお告げを聞いたのだった。

行者宿報設女犯 我成玉女身被犯 一生之間能荘厳 臨終引導生極楽 

(意訳)行者よ、もし縁によって女性と交わることになっても、私(観音)が美しい女の身になって交わろう。だから、一生の間しっかりと仏を敬うのだ。命が尽きた時は私が極楽に導こう。

この一文は「女犯偈」と呼ばれており、親鸞が結婚を決意する大きな契機となった。親鸞にとってパートナーとは、観音様の化身でもあり、愛する人と過ごす日々は邪なものと考えなかっただろう。その結果、親鸞の仏道は夫婦生活の中で育まれ、円熟期を迎えていく。

現在、親鸞の教えが礎となった「浄土真宗」は大衆に広がり、大切に受け継がれている。夫婦生活の中で深められた仏道が何百年も伝わり続けるなんて、とても素敵なドラマである。

 パートーナーこそ観音様であった

大切なパートナーとの生活は様々なものを生み出す。それは人生にとって何物にも変えがたい財産になる。ただ、良いものだけとは限らない。喧嘩もするだろうし、時として互いに憎しみ合うこともあるだろう。そんな時こそ、観音様からのお告げを思い出すようしする。

「もともと人間には神仏を求める心が備わっている」これは僧侶としての私の持論だ。人は誰にとっても愛しいパートーナーは観音様の化身である。だから人はパートナーを探すのだろう。私たちの心がそうさせるのだ。大切な人との出会いは仏様に出会うのと同じくらい尊いことだから。星野源にとって新垣結衣は観音様の化身であろう(・・・いや、ガッキーはオレたちの観音様である)。

忙しい毎日の中で、単に事実を述べただけの情報は心には残りづらい。しかし、その背景を知るとそれはストーリー性を帯びてドラマとなり、人々に語り継がれていくようになるのだ。たとえ結婚の「報道」が忘れられたとしても、源さんとガッキーが紡ぎ出すドラマは忘れられない物語として末長く私たちの心に残っていくだろう。

(了)

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文・イラスト/光澤裕顕(みつざわ・ひろあき)

著書『生きるのがつらいときに読むブッダの言葉』。浄土真宗(真宗大谷派)僧侶。福岡県八女市覺法寺衆徒。1989(平成元)年3月生まれ。新潟県長岡市出身。京都精華大学マンガ学部マンガ学科卒業。僧侶として仏道に励むかたわら、マンガ家・イラストレーターとしても活動中。

編集/inox.

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