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「業腹」とはどういう意味?知っているようで知らない言葉の読み方と使い方

2024.10.18

日本語には仏教用語に由来する言葉が多く存在する、「業腹」もその一つだ。日常会話ではあまり耳にする機会はないかもしれないが、小説などの書き言葉では比較的よく見られる。

本記事では「業腹」の意味と由来について詳しく解説する。あわせて紹介する正しい使い方や類語、英語表現もぜひ参考にしてほしい。

業腹とは?読み方や意味、言葉の由来

アルファベットのパズルの上に虫眼鏡が置いてある画像

はじめに、「業腹」の読み方と意味、言葉の由来について解説する。難読熟語として知られる「業腹」。正しい読み方、意味を理解できているかチェックしておこう。

業腹の読み方は「ごうはら」、意味は「非常に腹が立つこと」「激しい怒りを抱いているさま」

業腹の読み方は「ごうはら」。「非常に腹が立つこと」「しゃくにさわること」を表す熟語だ。怒りの感情を表現する言葉の中でも「業腹」はかなり腹を立てている状態を指す。少しイライラする程度の怒りではなく、憤慨するほどの激しい怒りを表す言葉だ。

業腹は仏教用語の「業火」を由来とする言葉

業腹の語源は仏教用語である「業火(ごうか)」。地獄に堕ちた罪人を苦しめる激しい炎を意味する言葉だ。
「業(ごう)」とは、仏教の世界において人の善悪の行為を表す。前世の悪業によって地獄に導かれた人間は、その罪の重さによって8つの地獄のうちのいずれかに堕ちるとされている。その中でも、猛火に苦しめられる業火は、特に重い罪を犯した者に与えられる罪。この業火が業腹の語源とされており、腹の中で業火が燃えているような強い怒りを表している。

業腹の使い方と具体例を解説

胸の内側に炎が燃えている男性

次に、「業腹」の使用シーンと例文を見ていこう。言葉のニュアンスをしっかりと理解し、適切な場面で使えるようにしておきたい。

業腹を使う際は「激しい怒りを表現して良い場面か」を考えたい

先述の通り、業腹はこの上ない怒り、憤りを指す言葉だ。イライラする、ムカつく程度の怒りを表す際に使うと、大袈裟な印象を与えてしまう場合もあるだろう。
また、激しい怒りを表現する場合、それを示す相手や、怒っている理由、伝え方などに注意しないと、自分自身がマイナスの印象を持たれるケースもある。周囲に誤解を与えてしまわないよう、使用シーンには十分に注意しよう。

業腹の具体的な使い方は?

業腹は名詞および形容動詞に当たり、形容動詞としては「業腹だ」「業腹だった」などのように活用できる。また、「業腹な様子」や「業腹な仕打ち」のように後に続く名詞を修飾する使い方もある。以下の例文も参考に、正しい使い方を理解しておこう。

業腹を使った例文

  • 「失敗は部下に押し付け、手柄は横取りする理不尽な上司の態度には業腹である」
  • 「度重なる納期遅延に対し、先方の担当者は業腹な様子だった」
  • 「業腹ではあったが、その場では感情を表に出さないように必死に堪えた」

業腹の類語や対義語、英語表現

拳を握って叫んでいる男性のモノクロ画像

最後に、業腹の類語と対義語を解説する。あわせて英語表現も紹介するので、この機会にぜひ覚えておこう。

業腹の類語・似た意味を持つ慣用表現

ここでは、業腹と似た意味を持つ慣用表現をいくつか紹介する。それぞれ少しずつニュアンスが異なるため、場面に応じて使い分けられるようにしたい。

業腹の類語1:腹に据えかねる

「怒りを心中におさめておくことができなくなる状況」を指す際に使用されるのが「腹に据えかねる」。
古来、人間の心や感情は腹の中にあるとされていた。その考え方から「腹に据えかねる」は、怒りの感情を留めておくことができないことを表す慣用句として使われるようになった。

業腹の類語2:腹の虫が収まらない

「腹の虫が収まらない」は激しい怒りの感情がなかなか静まらない様子を表す言葉。
平安時代までは「体の中で悪さをし、病気の原因となるのは鬼である」という考え方が一般的であったが、戦国時代の医師たちが「病気の原因となるのは鬼ではなく医学の力で退治ができる虫である」という考え方を社会に広めていった。
怒りという負の感情も腹の中にいる虫の仕業としたのがこの慣用表現の由来だ。

業腹の類語3:堪忍袋の緒が切れる

「堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる)」は、今まではなんとか堪えていた怒りが我慢の許容量を超えて抑えきれなくなり、ついに爆発する様子を表したことわざ。
この言葉は、心のキャパシティを巾着袋に例え、積み重ねてきた我慢が心の袋の中でたまっていき、ついに限界を迎えた時に袋を縛っていた緒(紐)が切れて怒りの感情が溢れ出す様子からきている。
「堪忍袋の緒が切れる」は先に紹介した他の表現と比較すると、相手に対して今までずっと怒りを抑えようと我慢していたニュアンスを与える。

業腹の対義語

「業腹」には明確な対義語が存在しない。激しい怒りの感情の反対の状況は、場面によって異なるためだ。「怒りであることには変わりないが、激怒まではいかない」のか「怒りの感情とはかけ離れた心穏やかな状態」なのか、状況に応じて適切な言葉を選ぶと良いだろう。
ちなみに、業腹の否定形は「業腹でない」となるので、こちらは覚えておきたい。

業腹の英語表現

怒りを表す言葉として一番有名な表現は「angry」という単語。しかし、「angry」以外にも、英語には怒りの程度や種類によってさまざまな表現のバリエーションがある。英語で業腹のニュアンスを表したい時に使える単語をいくつか紹介しよう。

業腹の英語表現1:enraged

「enraged」はひどく腹を立てている状況を指す形容詞。「enraged at ~」で「~に腹を立てて」を表すが、腹を立てている対象が人である場合は「enraged with ~」となる。

  • My boss was enraged at their treacherous behavior. (私の上司は彼らの裏切り行為に対して非常に腹を立てた)
  • He was enraged with us. (彼は我々に対して非常に腹を立てた)

業腹の英語表現2:furious

「furious」は猛烈に怒っている、怒り狂うという意味を持つ表現。強い怒りを表す点はenragedと共通しているが、furiousには怒りによってヒステリック、興奮状態になっているニュアンスが含まれている。

  • She got furious because he broke his promises. (彼が約束を破ったので彼女は怒り狂った)

業腹の英語表現3:resent / resentful

「resent」は「憤慨する」「恨めしく思う」という意味の他動詞。先に紹介した2つの単語に比べて少しかしこまった表現だ。「resent」を形容詞化した「resentful」は「憤慨している状態」「恨めしく思っている様子」を表す単語として使用される。

  • I resented his ignorant behavior. (私は彼の無作法な態度に憤慨した)
  • He felt resentful about what she had done. (彼は彼女の行為に憤慨した)

日本語には様々な由来を持つ言葉・慣用表現がある。業腹と同じく仏教用語の「業」に関連した言葉としては以下も有名なので、あわせてチェックしてみては。

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文/oki

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