世の男性が激怒しそうな、既婚女性の身勝手で不都合な“性の本音”を綴ったドラマがスタート。
2021年6月25日よりNetflixで独占配信中のオリジナルシリーズ『セックス/ライフ』は、穏やかな結婚生活と刺激的だった元恋人との想い出との間で揺れ動く専業主婦の葛藤を綴ったラブロマンス。
原作は、B・B・イーストンの小説『Sex/Life: 44 Chapters About 4 Men』。
あらすじ
郊外の一軒家で暮らす専業主婦のビリー(サラ・シャヒ)は、誰もが羨むパーフェクトな夫クーパー(マイク・ヴォーゲル)と愛する2人の子どもたちに恵まれながらも、平凡な幸せに満足できずにいた。
育児に追われるビリーを苦しめるのは、親友とともに自由奔放な恋愛を楽しんでいた独身時代の楽しく刺激的な想い出の数々。
学生時代から成績優秀で活発だったビリーは、名門大学に進学するために田舎からニューヨークに出てきた過去を持つ。
幸せな家庭と引き換えに、自由な恋愛だけでなくキャリアや人生の可能性など様々なものを失ってしまったことに絶望するビリー。
気持ちを整理するため、忘れられない元恋人ブラッド(アダム・デモス)との官能的な思い出を日記に書き綴っていたが、ある日クーパーに日記を読まれてしまう。
パニックになり家を飛び出したビリーが独身時代からの親友サーシャの自宅を訪ねると、そこにいたのはブラッドだった……。
見どころ
既婚女性の性と愛について、赤裸々に綴った本作。
結婚前のビリーはかなり性に奔放で、恋多き女性だった。
しかも相手は決まって“危険な香りのするワイルドでセクシーな男性”。しかしそのような男性とはケンカやDV、そして浮気などのトラブルが耐えなかったため、クーパーのように優しく真面目で男性を選んだのだった。
しかもクーパーは、ただ優しく真面目なだけの男性ではない。
ビリーの語りによると、「見た目も中身も非の打ち所がなく、浮気もしない正直者」なのだそうだ。
イケメンでエリートで優しくて誠実で仕事熱心で料理上手で妻の両親も大切にしてくれて子煩悩……まさにパーフェクト。
ところがいざ結婚すると、今度は平凡で安定した暮らしだけでは満足できず、不満と涙がこみ上げてくる……。
そう、ビリーはかなり欲張りでしたたかな性格なのだ。
過去に交際してきた数々の“悪い男”の中でも、ビリーがとくに忘れられないのがブラッド。
イケメンでセクシーで金持ちだが常に気持ちが不安定なブラッドは、自分とビリーのイニシャル(B&B)を意味するタトゥーを腹部に彫っちゃったりするなど、「なるほどね」となる行動が目立つ。
視聴者の誰もが「やめといた方が……」と思うであろう男性だが、ビリーは2児を育児中の今でもブラッドのことで頭が一杯だ。
しかし、もしビリーが今でも独身だったとしたら、クーパーみたいな男性との平和で安定した暮らしを切望していたはず。
第三者から見たらいったい何が不満なのかと思うが、身勝手な感情や欲望は、自分に言い聞かせたところで完全に打ち消すことはできない。
理性という蓋を心に被せて必死に抑えようとしても、大声で叫びながら蓋を叩いて突き上げてくるのが本能的な欲望というもの。
“何かを手に入れるためには、何かを捨てなければならない”ものだが、ビリーはブラッドとの官能的で刹那的な恋も、クーパーとの穏やかで優しい結婚生活も両方欲しているのだ。
たしかに世の男性が憤慨しそうなストーリーではある。
同じ女性目線で見たとしても、イライラする人がほとんどだろう。
欲張りで無い物ねだりばかりのビリーに呆れるかもしれないが、誰の心の奥にも似たような気持ちは潜んでいるはずだ。
本作は主人公であるビリーの視点で展開されるが、逆にクーパーがそもそもなぜビリーに惹かれたのかと考えると、これもやはりビリーが“危険で奔放な女性”であり、自分にない魅力を持っていたからではないだろうか。
元チアリーダーで成績優秀、「学園の女王様」だったビリーは、もともと野心家でエネルギーが有り余っている肉食系。
あまり家庭的とは言えないタイプの女性だが、だからこそクーパーは魅力され、独占欲を刺激されたのかもしれない。
非の打ち所がないように見えるクーパーだが、“自分の女性版”には惹かれないタイプと見た。それならば、ビリーに振り回されるのは当然の結果と言えるかもしれない(気の毒だが)。
結局のところ、無い物ねだりはクーパーも同じなのではないだろうか。
Netflixオリジナルシリーズ『セックス/ライフ』
独占配信中
文/吉野潤子