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「ビントロング」ってどんな動物?動物園写真家がその生態と魅力を解説

2021.06.26

はじめまして動物園写真家の阪田真一です。普段、動物園・水族館・植物園を専門に撮影をしています。

今回は、2021323日に、神戸どうぶつ王国で生まれた、ビントロングの双子の写真を見てもらいながら、ビントロングという生き物を知ってもらいたい。

ビントロングを知ってる?

見たことも聞いたこともないという人も多いのではないだろうか。

まずは、そのプロフィールを紹介しておこう。

ビントロングは、別名(クマネコ/クマジャコウネコ)といい、学名(Arctictis binturong)で登録されている。

レッドリスト(国際自然保護連合(IUCN)の定める絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)では、「絶滅危惧II(VU)」絶滅の恐れのある種(絶滅危惧種)であり、絶滅の危機が増大している種という位置づけとなっている。

ジャコウネコ科に属し、その中でも体長6097cm尾長5590cmと最も大きい種となる。特に尻尾は長く、その力は強い。尻尾の先で木にぶら下がり、9kg~17kg程ある体重を支える。

彼らの生息域は、インド北部のネパールやミャンマー、インドネシア(スマトラ島/ジャワ島/ボルネオ島)、タイ、マレーシア(マレー半島)、フィリピン(パラワン島)などの森林に暮らしている。食生活としては植物を中心に果実を好んで食べるのだが、魚や小鳥、小動物に昆虫なども食べる雑食である。

ジャコウネコ科であるその特徴は匂い。

初めて動物園を訪れる人の中には、生き物の匂いが苦手だということをよく耳にするが、このビントロングは、なんと「ポップコーン」のような香ばしい穀物を熱したような香りがするのだ。

動物園だから近くの売店で売っているポップコーンの匂いだろうと思う人がいるかもしれないが、間違いなく彼らの匂いである。その匂いは彼らの肛門近くにある臭腺から液体として排出されており、木の幹などに擦り付けることで縄張りを主張するマーキングに用いられる。

ビントロング双子の姉妹誕生!

この度、神戸どうぶつ王国では3度目となるビントロングの繁殖に成功している。


父:ガンタン


母:ルナ

【繁殖履歴】

2018 4 6 3 頭出産(名前: アイル、ウータン、ウダーラ)全て搬出

2019 12 31 1 頭出産(名前:ウタール)搬出

2021 3 23 2 頭出産 (名前:たん、ぽぽ)

※ これらは、「父:ガンタン」と「母:ルナ」との子である。

 今回は、神戸どうぶつ王国が掲示した4つの候補名の中から来園者やSNSによる投票で、3月23日の誕生花である「たんぽぽ」から「たん」と「ぽぽ」と名付けられた。


左:たん / 右:ぽぽ

動物園写真家である私も多くの動物たちの赤ちゃんを撮影することがあるが、どんな動物の赤ちゃんもその行動は人間の子供と同じく好奇心旺盛で、色んなことが珍しくて、歩き回っている姿からワクワクしている感情が伝わってくるような気がしてくる。やはり赤ちゃん特有のあどけない表情や母親の後をトットットとついて回る仕草には顔がほころぶ人も多いのではないだろうか。

担当飼育員さんからのコメント。 

<ビントロング飼育担当スタッフより>

今年生まれた双子の母、ルナは今回で3 回目の出産となります。

3回共オスのペアは変わらず、相性がいいのか、毎年しっかり繁殖し、命を繋げてくれています。

過去2 回の出産で生まれた仔どもたちは、今はもう神戸にはいません。すぐに他の動物園へ行っちゃうので寂しいと、お客様のお声も少なくはないですが、他の動物園へ移動し、移動先の動物園で相性のいい相手と出会い、繁殖を試みる為です。

それは動物園の大切な役割である、種の保存です。「たね」ではなく、「しゅ」と読みます。

「種」とは生き物たちの分類の一番基本となる単位です。そして、種の保存とは、生息域外保全のことで、飼育下において繁殖保存を図るもので、絶滅危機にある動物たちの命を繋ぎ止めることです。

そんな動物園の重要な役割に、母ルナは大いに貢献してくれているのです。

今回生まれた双子の命も、新たに生まれてくる命へ繋げる為、私たちは責任を持って、最後までしっかり守って行きたいと思います。

「種の保存」という動物園の役割

日本の多くの動物園、水族館が所属する「公益財団法人日本動物園水族館協会(JAZA)」によると、動物園の役割として4つを掲げている。

1.種の保存(希少動物の保護、地球上の野生動物たちの命を繋ぐ取り組み)

2.教育・環境教育(実際に見て感じてもらうことによる生物の多様性や生態を学ぶ機会の提供)

3.調査・研究(飼育することでその生き物の生態の観察研究)

4.レクリエーション(見に来てもらう人に「命の大切さ」や「生きることの美しさ」を感じてもらえる場の提供)

この中でも今回のビントロングの繁殖は、「① 種の保存」の一環である。

その取り組みとしては3つある。

1.血統登録と繁殖計画(国内で飼育されている動物を分けてその中から保護が必要な動物の戸籍簿を作って血統を管理し遺伝情報をもとに繁殖計画を作る)

2.ブリーディング ローン(希少動物を増やす為、動物園・水族館の間で動物の貸し借りを行う)

3.域内保全と域外保全(生息地域内で保護活動を行うこと、それが困難な場合に生息地域外での繁殖し絶滅から種を守る取り組み)

過去、神戸どうぶつ王国から搬出されたビントロングの子供たちを含む搬出された動物たちは、この「② ブリーディングローン」によるものも多くある。いずれその子たちは新たな場所で、新たな命を繋ぎ「種の保存」という役割の中、この地球上で生息数を増やすことが期待されている。

 [ 公益社団法人日本動物園水族館協会(JAZAhttps://www.jaza.jp/  ]

「可愛いね」だけではない、「命の学びの場」に足を運ぶということ。

動物の赤ちゃんが生まれたというニュースをよく耳にすることがある。私たちはその赤ちゃんを見に行き、そのあどけない行動を見て「可愛いね」という。しかし、その裏では動物園や水族館など様々な関係者によって生き物の命を守る取り組みが日々行われている。そのことを知ることで、連れて行った我が子に対して「可愛いね」だけではない「命の大切さ」や「生物多様性」についても教えてあげられるのではないだろうか。また、大人も大事なことを考えるきっかけを得られるのではないであろうか。

今回生まれた、「たんちゃん」と「ぽぽちゃん」もいずれは親元を離れる日が来るだろう。

ビントロング親子が一緒に過ごす、あの光景が見られる今はとても貴重な時間なのだ。

 

[取材協力]

神戸どうぶつ王国 http://www.kobe-oukoku.com/

650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町7-1-9

Tel : 078-302-8899 Fax : 078-302-8222

[写真/記事]

動物園写真家 阪田 真一 

Twitterhttps://twitter.com/ZooPhotoShin1

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