※こちらの記事は小学館から絶賛発売中のサウナムック「Saunner+」から一部抜粋して掲載しています。ぜひ合わせてご覧ください。
from SWEDEN
自分の体の声を聞いてその日の入り方を決める
スウェーデンでは、サウナがトレーニングセンターや大学にあったり、湖や自然の中にあったり、自宅にサウナを備えるおうちも多くて、私たちにとっては昔から日常にあるもの。だから当たり前の存在すぎて、〝サウナの入り方〟について考えたことがなかったんですよね。でも日本に来てからサウナが好きな友達がたくさんできて、「どうやって入るんですか」って、みんなが聞いてくる。それで「あれ? どうやって入っていたかな」って、初めて考えました。
スウェーデンなど北欧人は、その日の自分の気分によって、入り方が変わるんです。例えば、すごく元気で体調が万全の状態だったら熱いサウナにばっちり入るとか、仕事で忙しいのをリセットしたり一息つきたい時は、低温のサウナで瞑想のようにボーッとするとか、自分の体に聞いて入り方を決めるような感じ。仲良くなりたい人がいる時は、裸でおしゃべりして距離を縮めるのが目的だから、その日は温まることすら二の次。若い時は、ホームパーティーの間に、酔ったままその家のサウナに移動してパーティーの続きをするなんていう、全く健康的じゃない入り方もしていたくらいです(笑)。
日本人はサウナでも仕事でも完璧を求めるから、サウナや水風呂の温度も細かく気にするし、正しい手順にこだわりますよね。私たちは寒中水泳したり、サウナから湖に飛び込んだりしていますが、そもそもこちらで変えられるものではないので、水の温度について考えたこともないです。冷たいのが気持ちいいっていうのはわかるけど、それよりも周りに自然があることや雰囲気が大事かな。湖があったり、木造のサウナで白樺の匂いがしたり、ドアが開く時に古い木がきしむ音がするのなんかがいいですね。
北欧にも、もちろんサウナ大好きっていう人はいるけれど、そもそも一般の人はそんなにサウナを極めていません。だからサウナについてあまり考えたり、話したりもしませんね。でも日本だと、一般人もみんながサウナの知識を学ぼうとしているし、サウナに入りながらずっとサウナの話をしてますよね(笑)。スウェーデンだと昔からの日常すぎて、サウナに対する考え方も雑だから、入り方も進化していないです。日本人はスポーツみたいにもっと上達して、もっともっと楽しみたいという気持ちが強いから、フィンランドなどから学んだサウナを真似するだけじゃなくて、いろんな方向に進化させていますよね。そういうのを見るのは楽しいし、「オオ! そんな入り方もあるのか! おもしろい~!」と思います。
ちなみに、決まった入り方がない北欧のサウナですが、唯一あるとしたら、ほかの人と一緒に入っている時に、勝手にバシャバシャとロウリュするのはマナー違反なんです。一方的にガンガン湿度を上げちゃうと、人によってサウナへの耐性が違うので、せっかくサウナを楽しみにきたのに中にいられなくなる人が出てくる。だからロウリュする前に「いい?」って聞くんです。兄弟や友達だったら、わざと嫌がらせで勝手にガンガン湿度を上げることもあるけど、基本的には来ているみんながサウナを楽しめるように、気を使いあっています。日本だと、それが少ないですよね。「おもてなし」の国なのに、そこは何だか不思議(笑)。
PROFILE
⽇本を拠点に活動するスウェーデン出⾝の⼥優、タレント、モデル、アウトドアコラムニスト。英語、日本語、スウェーデン語を操るトリリンガルで、自然やアウトドアをこよなく愛し、温泉ソムリエの資格も持つ。「スウェーデンのアウトドアガール」タレントとして、テレビ・CMなど、幅広い分野で活動。
ヤンニさんの疑問!
Q|サウナマットって、なぜあるの?
せっかくの木のサウナにマットを敷き詰められていると、サウナをつくった人に失礼だと思っちゃう。あと他人の汗を吸っていると、自分のタオルを上に敷いても衛生的ではないですよね……。
Q|どうしてサウナでTVが見たいの?
忙しい日常や煩わしい人間関係から逃げたくてサウナに入っても、TVがあるとがっかり。携帯も手放して、外の世界をシャットアウトできる貴重な時間なのに、もったいないなと思います。
Q|「ととのう」という言葉がわからない
日本人の言う「ととのう」のように、サウナに入った状態を言葉にするほど細かく気にしていないですね。その日の自分の体の状態とサウナに入る目的によって、入り方も全く変わるんですよね。
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サウナを愛してやまない「サウナー」のための本、現在のサウナブームの火付け役となった伝説のサウナ専門誌『Saunner』(2014年、小学館刊)が、7年の時を経てついに復汗(刊)! コロナ禍による危機を超え、ブームを超え、日本のサウナの未来を考えるというテーマのもと、パワーアップして再登場!
定価1320円(税込)
B5判/132ページ
https://www.shogakukan.co.jp/books/09104252
取材・文/安念美和子