コロナ禍でデジタルマーケティングがさらに加速する今、SNSは顧客とのコミュニケーションに欠かせないツールとなっている。中でも特に人気が高まっているのがInstagramだ。しかしInstagram運用は難易度が高いといわれている。
そこで今回は、Instagram運用のプロに、始める前の準備や運用のポイント、よくある失敗を防ぐ策を聞いた。
Instagram運用を始めるときに準備すべきこと
現在、Instagramを運用する企業は多いが、始めるにあたって準備すべきことにはどんなことがあるか。Instagramを中心にSNSマーケティング支援事業を行い、Instagram分析ツールを「SAKIYOMI」を提供する株式会社Radixのマーケティング責任者である田中龍之介氏は次の3つを挙げる。
【取材協力】
田中龍之介氏
株式会社Radixマーケティング責任者。Instagramマーケティングメディア『SAKIYOMI』にて、Instagramの最新事例やおすすめ施策を発信。Twitterのフォロワーは現在、7,400人ほど(@Ryu_nosukeee)。
https://sns-sakiyomi.com/blog/
1.「誰に・何を」発信するのかを明確にする
「ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成し、『誰に・何を』発信するのかを明確にします。ここが明確になる前に運用を始めてしまうと、運用しながらコンセプトがブレてしまいます。そうすると、 結果的にどのユーザーにも刺さらず、ファンのできにくいアカウントになってしまうため、注意が必要です。運用施策やキャンペーン企画(How)に目を向ける前に、しっかりと『Who』と『What』を定義しましょう」
2.基本的な用語と機能を理解する
「『保存率*』『ホーム率*』といったInstagram独自の用語や『IGTV*』や『リール*』といった機能の使い方をまずは理解しましょう。普段、個人のアカウントを使う中では、あまり利用しない機能もたくさんあります。
また、Instagramは随時アップデートによって機能がアップデートされています。常にInstagramの最新情報をキャッチアップすることも意識しましょう」
*保存率:投稿写真が保存された割合。
*ホーム率:フォロワーのうち、フィードから投稿を閲覧したユーザーの割合。
*IGTV:Instagram上で利用できる無料の動画投稿・視聴プラットフォーム。
*リール:Instagram上で15秒から30秒の短尺動画を共有できる機能。
3.ビジネスアカウントに切り替える
「個人アカウントからビジネスアカウントに切り替えることで、いくつか機能が開放されます。その中でも特に『インサイト機能』は、Instagram運用において欠かせません。インサイト機能を用いることで、運営しているアカウントや投稿について、フォロワーの年齢」男女比、性別などの詳細な数値データを確認できるようになります。
これらの数値データを分析しながら、日々PDCAを回すことが何よりも大切です。必ずビジネスアカウントに切り替えるようにしましょう」
Instagram運用を成功させるポイント5つ
運用においては、どのようなポイントを押さえると成功するだろうか。田中氏は次の5つを挙げる。
1.Instagramをユーザーが使用する本質的な目的を理解する
「Instagramは『インスタ映え』と呼ばれるような『オシャレな写真』が集まっているイメージの方も多いかもしれませんが、それはすでに時代遅れです。今ではInstagramは情報収集を目的としたプラットフォームに変化しています。
その中でユーザーはGoogleのような第3者の客観的な情報ではなく、自分お好きなアカウントの主観的なコンテンツを消費して楽しんでいます。
そのため、万人に受ける網羅的な情報ではなく、『N=1(個人)』に刺さるようなオリジナルのコンテンツや施策を考え続けることが重要です」
2.Instagramのアルゴリズムに基づいて運用する
「SEO対策で『Googleのアルゴリズム』に基づいて考えるように、Instagramにおいても『Instagramのアルゴリズム』に基づいた運用が重要です。
その中でも、特にリーチ数と相関性の強い『保存率』『ホーム率』の2つの重要指標は必ず、日々の運用の中で抑えるべきです。これらの数値に基づいて分析することで、再現性高くリーチ数を伸ばすことができます」
3.ユーザーとのコミュニケーションの量と質を高める
「フォロワーのエンゲージメントを高めるためには、コミュニケーションの質と量を高めることが重要です。コミュニケーションの量を担保するには『ストーリーズ*』や『フィード投稿*』『インスタライブ*』を活用して接触回数と接触時間を増やしましょう。またそれらのコンテンツの中で『ユーザーからのアンケートに回答する』などの双方向的なコミュニケーションを取ることで、コミュニケーションの質を担保できます。実際にエンゲージメントはInstagramのアルゴリズム上でも重視されているため、欠かせない観点です」
*ストーリーズ:写真・動画の投稿やライブ配信ができる機能で、投稿後・配信終了後24時間以内で消える。
*フィード投稿:ユーザーのホーム画面に表示される投稿。
*インスタライブ:Instagram上で利用できるライブ配信機能。
4.プロフィールアクセス率を高める
「Instagramでフォロワーを増やすためには、投稿のリーチを伸ばした上で、プロフィールを見てもらう必要があります。投稿から遷移してもらうために、差し込み画像やキャプション文にプロフィールへの導線を設置することが大切です。
実際にこれらの施策を行うことでプロフィースアクセス率が向上し、フォロワー増加数が150%に向上した事例もあります。投稿内で、アカウントの魅力を訴求し、プロフィールの閲覧を促しましょう」
5.フォロワー転換率を高める
「プロフィールを訪れたユーザーはそのアカウントが自分の好みかどうかを判断し、フォロワーするかどうかを決めます。
訪問した人にフォローをしてもらうためには、プロフィール画面をひと目見て『どんなメリットがあるか』を感じてもらうことが重要です。
実際にユーザーは直感的にアカウントをフォローするかどうかを決めるため、ほんの数秒しかプロフィールを見てくれません。最適な訴求ができるように、プロフィールを改善し続けましょう」
Instagram運用で失敗しがちなこと
続いて、Instagramの運用において、初心者が失敗しがちなことを3つ見ていこう。それぞれの対策も要チェックだ。
1.いきなり自社商品のPRをしてしまう
「もっともよくある失敗例が『自分たちが知って欲しい情報』だけを、いきなり最初から発信してしまうことです。初めから自社商品のPRだけを投稿しても、ユーザーがその情報を求めていなければリーチやフォロワーは伸びません。
まずは、自分たちの商品のターゲットのニーズにあったコンテンツを発信してフォロワーを獲得し、良好な関係性を築くことが重要です。あくまでも『ユーザーファースト』の視点に立ってアカウントを運用することが、Instagramを活用する上で欠かせません」
2.ハッシュタグ*ばかりに注力してしまう
「Instagram運用において『ハッシュタグの分析』に注力しすぎてしまうことで、コンテンンツ発信がおろそかになってしまうケースが散見されます。しかし、実際に弊社で運用しているアカウントでも、バズる投稿の流入元のほとんどが『ハッシュタグ』ではなくて『発見*』経由です。
つまり、本当に注力すべきはハッシュタグを攻略することではなく、ユーザーの求めるコンテンツを発信することなのです。限られている運用リソースを投下する先を間違えないように気をつけましょう」
*ハッシュタグ:投稿のテキスト部分に埋め込むタグのこと。ユーザーのハッシュタグ検索の際に使われる。
*発見:画面下部にある、虫メガネのアイコンをタップすることで表示される画面。ユーザーの興味関心に基づき自動で表示される。
3.運頼みでリーチやフォロワーを伸ばそうとしてしまう
「Instagram運用において、投稿が『バズる』かどうかは決して運によって決まるわけではありません。『Instagramのアルゴリズム』と『ユーザーのインサイト』に基づいた運用を行うことで、再現性高く成果につなげることができます」
「上記で挙げたようなアカウント運用における重要数値は、日々分析しながら改善を続けることが大切です。一方で、一定の専門知識や運用経験はどうしても必要になってくるため、場合によっては適切な支援会社に相談することも検討してみるといいでしょう」
Instagram運用初心者から、日々運用している担当者まで役立つヒントが満載だった。ぜひ取り入れてInstagram運用を攻略しよう。
【参考】
「【2021年完全版】押さえておくべきInstagramのアルゴリズムを徹底解説。」
取材・文/石原亜香利