「セイコー時間白書2021」
コロナ禍が本格化して1年以上が経過した今。仕事やプライベートを問わず生活環境が大きく変化したことによって、「時間の使い方」は多様化し、時間をどう使うか、時間の価値を改めて見つめ直した人も多いのではないだろうか。
セイコーホールディングスではこのほど、2017年から行っている定点観察的調査「セイコー時間白書」の2021年版を発表。コロナ禍で広がり加速する、時間の多様性について調査した。なお今回はグローバル編として、アメリカと中国にて同様の調査を行い、日本との時間意識の差を探った。
時間の多様性が加速。コロナ禍だからこそ気づけた幸せな時間がある
■コロナ禍で気付いたこれからも維持したい時間は、「趣味の時間」と「家族との時間」
私たちの生活を大きく変化させたコロナ禍だが、弊害だけではなかった。コロナ禍で増えて良かった時間を聞くと「趣味の時間」(39.4%)や「家族とのコミュニケーション時間」(36.1%)が挙げられた[図1-1]。
また、減って良かった時間には「会社の飲み会・食事会の時間」(33.3%)や「通勤時間」(28.8%)が挙げられた[図1-2]。増えて良かった時間の中で、今後も維持したい時間を聞くと「趣味の時間」(38.2%)と「家族とのコミュニケーション時間」(36.8%)が選ばれた[図1-3]。
コロナ禍という逆境だからこそ、気付くことができた大切な時間。そこで、コロナ禍で生まれた「幸せな時間の使い方」を聞くと、[図1-4]のようなさまざまな時間の使い方が寄せられる結果となった。
人それぞれが、自分のペースや趣向にあった豊かな時間の使い方に気づき、実践していることが感じられる。
コロナ禍で時間を「価値あることに使う」方向にシフト時間の使い方をきちんと見直す“時律”のススメ
■コロナ禍で「人生をより豊かにするための時間の使い方について」考えた人が2人に1人
次に、時間の使い方について考えた経験の有無を聞いた。コロナ禍による時間の過ごし方や使い方については52.2%、より効率的に生活するための時間の使い方については48.6%、人生をより豊かにするための時間の使い方については54.1%が考えたことがあると答えている。
半数の人にとって、コロナ禍は時間について見つめ直すきっかけとなったようだ。年代別に見ると10代や学生のスコアが高く、リモートワークをしている人の方がしない人より考えることが多くなっている[図2]。
■半数が臨機応変にスキマ時間を活用自らの時間を充実させるための“時間マネジメント”の意識が高まっている?
また、コロナ禍によるプライベートな時間の使い方の変化を聞いた。臨機応変に自らの裁量でスケジューリングしながら過ごしていると答えたのは46.8%[図3-1]、隙間時間も工夫しながら過ごしているのは46.1%[図3-2]と、半数の人がプライベート時間にも工夫を凝らしている。
■コロナ禍で自由な時間はできたけれど…うまく使えないジレンマもあり
コロナ禍での時間の使い方について詳しく聞いた。55.6%がコロナ禍で「自分で使い方を決められる時間の増加を歓迎」しているが、「自由な時間を得ることは、自分で負う責任が強くなる」と、責任を自覚する人も51.3%いる。
一方、3割は「使い方を決められる時間は良いけれど持て余している」(31.3%)と困惑気味で、「人に委ねていた時間も今思えば良かった」(29.1%)と思いを馳せる人もいる。
属性別で見ると、一番はしゃぎそうな「学生」のスコアがいずれも高く、コロナ禍の学生への影響力の強さが感じられる[図4]。
現代人の時間価値はオンタイム4,253円、オフタイム12,992円オフタイム価値が観測史上最高に(17年調査開始)
■オフタイムの時価がさらに上昇し遂に1万円超え!プライベートな時間がより一層大切に
自分の1時間の価値(=時価)を値付けしてもらった。仕事や家事・勉強をするオンタイムは1時間4,253円となり、20年4,443円よりやや下がった[図5-1]。
一方、プライベートなオフタイムは1時間12,992円と、20年8,346円から+4,646円(2020年比155.7%)、17年6,298円から+6,694円(2017年比206.3%)と2倍以上も高くなっている[図5-2]。
オンタイムとオフタイムの価格差は年々広がり、17年は2,629円差、20年は3,903円差だったものが、21年には8,739円もの大差になっている。オフタイムの価値がそれだけ高くなり、大切な時間として認識されているようだ。
■最も大切な時間は、「金・土夜」と「月朝」で変わらず
1週間の中で最も大切にしている時間帯は「土曜日22時台」「金曜日22時台」「金曜日21時台」「月曜日6時台」「月曜日5時台」の順となった[図6]。
プライベートを楽しむ週末の夜と、オンタイムに突入する月曜の朝の、切り替えの時間が大切な時間帯となっている。この傾向は、17年、20年とほぼ変わっていない。
■コロナ禍で自分時間が増えた一方、コントロールの難しさを痛感する学生も
オフタイムの価値が高まる一方、時間の使い方で困っていることを聞くと、「他人がどのような時間・リズムで生活しているかがわからない」(46.2%)、「生活のメリハリがはっきりしなくなった」(42.3%)、「時間を自分で効率的に計画し、使うことが難しい」(41.8%)などが困りごととして挙げられた[図7]。
これを属性別で見ると、「学生」のスコアがいずれも高く、「時間を自分で効率的に使うことが難しい」(72.9%)、「生活のメリハリがはっきりしなくなった」(70.4%)など、自分で時間をコントロールすることに戸惑いを感じている様子がうかがえる。
また、「リモート環境による怠け癖」(62.6%)を心配する声も上がっている。コロナ禍は、時間の使い方を再認識させる機会にもなっているようだ。
リモートワーカーのメリハリ問題その後…2年目にしてやや緩和、うまく折り合いをつけられるように
■リモートワーカーの仕事の裁量度80%に伸長前年比4.4ポイントアップ
次に、有職者を対象に、重要なオンタイムとなる自身の仕事の進め方について聞いた。すると、「自分の裁量で時間をコントロールしながら進められる」24.5%、「業務量など、タスクによっておおよそ決まるが、ある程度自分で進められる」38.6%と、働く人の63.1%が自分の裁量で仕事がコントロールできる環境にいることがわかる。
リモートワークする人では80.8%が自分の裁量でコントロールができ、リモートワークしない人(56.5%)より24ポイントも高くなっている[図8]。
リモートワーク元年の2020年と比較すると、有職者全体の裁量度はほほ横ばい(62.3%→63.1%)だが、リモートワーカーでは76.4%から80.8%へと4.4ポイント伸びている。
■2年目でリモートワークのマイルールが確立か?メリハリの付けにくさがやや改善
自分の裁量で仕事を進められる人は増えているが、メリハリのあるワークスタイルはできているのか、時間のメリハリについて聞いてみた。すると、有職者の6割が「時間のメリハリを付けにくい」と答えており、リモートワークする人は63.5%と、しない人(58.7%)よりメリハリの付けにくさを感じている。
しかし、昨年はリモートワークする人の74.7%がメリハリを付けにくいと答えていたことから、11ポイント改善されている[図9]。ウィズコロナ生活2年目となり、リモートワークする人もオンオフの切り替えができるようになってきたのかもしれない。[図9]
■自己管理にも気を付けたいリモートワーカーの4割が「集中しすぎ」を経験
自分の裁量で仕事がしやすいリモートワーカーだが、それだけ自己管理も重要になる。 仕事に集中しすぎて気が付いたら日が暮れていた、そんな経験があるかと聞くと、20年は35.0%だったが21年は 40.4%に増えており、週に1日以上リモートワークする人では 42.9%とさらに増えている[図10]。集中しすぎや抱え込みすぎてオーバーワークにならないよう、メリハリのあるワークスタイルを心掛けたいものだ。
コロナ禍での時間速度は例年の2倍以上に若い世代ほど速く感じている
■体感速度2020年は例年の2倍の速さで過ぎ去ってしまった
2020年を振り返って、それまでの年に感じていた時間の速[図11]例年を速度1とした2020年の体感速度度を1倍速とした時、2020年の時間の速度はどのくらいに感じたか聞いた。すると、2020年の体感速度は平均で2.03倍という結果になった。
年代別で見ると、10代2.66倍、20代2.31倍と若い世代の体感速度が速く、学生は2.57倍だった。また、有職者1.88倍より専業主婦・主夫2.04倍の方が速く感じていることがわかった[図11]。
■時間がたつのが「速く感じる」と約半数が回答10代、20代、学生と若い世代は速く感じる人が多い
コロナ禍で生活時間に変化があったと答えた人に、生活に関する時間の速さの変化を聞いた。すると47.5%が「速く感じる」と答えており、前回(35.6%)より11ポイント増えている。
年代別で見ると10代64.0%、20代52.5%に多く、学生は65.9%が「速く感じる」と答えている。上記の体感速度の感じ方と一致している[図12-1]。
仕事に関する時間がたつ速度について聞くと、3人に1人は「速く感じる」(33.9%)と答え、リモートワークをする人では40.7%が「速く感じる」と答えており、リモートワークしない人(30.5%)より10ポイント高くなっている。
一方、前回は仕事時間が速く感じると答えたのは30.7%で今回より少ないものの、リモートワークする人では43.5%が速く感じると答えていた[図12-2]。リモートワークに対する慣れが、速さを感じさせないのかもしれない。