小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

昔の旅館を意味する旅籠屋の「旅籠」ってどんな意味?

2021.06.29

ペットと泊まれるホテル、日帰り温泉や豪華なランチが楽しめる旅館など、付加価値のある宿泊施設は多い。コロナ禍が収束したらお気に入りのホテルへの宿泊を検討している人も多いだろう。

食事はセルフサービスの朝食のみで、シンプルな素泊まりを提供している「旅籠屋」というチェーンがマイカー旅行者などから人気を集めている。「旅籠屋」とは昔、全国に点在していた宿泊施設の名称。このチェーンのように、今でも旅館の名前に使われることがある「旅籠」だが、現在の旅館やホテルとはさまざまな点で違いがあった。そこで本記事では、この「旅籠屋」の歴史や定義を詳しく紹介していく。

旅籠屋の「旅籠」とは元々どんな意味の言葉?

旅籠屋は「はたごや」と読む。これは、本来別のものを表す「旅籠」が時代を経て宿泊施設の名称となったもので、今ではあまり馴染みがないが、車や電車を利用して快適に移動できない時代には欠かせない存在だった。まず、「旅籠」がそもそも何を表す言葉だったのかを理解しておこう。

旅籠は馬の飼料を入れる籠を表していた

旅籠は元々、旅に出る際に馬の飼料を入れておく竹籠のことを指した。平安時代の辞書の一種「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」にも掲載されており、少なくともこの時代には使われ始めていたと推測できる。

その後、旅籠は馬の飼料だけでなく旅行用の雑貨、食料品などの入れ物や、食料そのものを意味する言葉に変化していった。さらに時代が下ると、宿泊施設で旅行者に提供される食事を表すようになり、食事を提供する宿屋は旅籠屋と呼ばれた。

旅籠に関連する語句

旅籠に関連する言葉に「旅籠賃(はたごちん)」や「旅籠振るい(はたごぶるい)」がある。旅籠賃は宿屋の宿泊料金や食事代のこと。「旅籠銭(はたごせん)」も同様の意味を持つ。

旅籠振るいは旅籠を食料や雑貨の入れ物として使っていた時代の言葉で、旅が終わった後、旅籠の中に入っていた食料を人々に提供し、旅の無事を盛大に祝う目的で行われた宴を意味している。

「旅籠屋」の歴史や定義とは?

では、旅籠屋とは具体的にどのようなものなのか、歴史や種類を解説していこう。また最後に、現在でも宿泊できる旅籠屋を紹介する。興味がある人はぜひ、コロナが収束後の旅行先の参考にしてほしい。

旅籠屋は江戸時代に多く見られた宿泊施設の名称

旅籠屋が急速に発展したのは江戸時代。特に中期から後期になると、社会が安定したこともあり、庶民の中で伊勢参りや社寺参詣がブームになった。庶民の旅は徒歩によるものがほとんどで、目的地まで数日から十数日かかるのが当たり前。旅人が増えると宿泊施設の需要も自然と高まり、五街道沿いの宿場にある多くの旅籠屋は武士や庶民の宿泊客で賑わったそうだ。

本陣、旅籠屋、木賃宿の違い

実は旅籠屋は宿屋全体のことを指すのではなく、当時複数あった宿泊施設の種類の一つ。江戸時代にはさまざまな宿泊施設があり、提供されるサービスが異なっていた。特に代表的な3種類についての、おおまかな定義は以下の通り。

・本陣(ほんじん)

当時の宿泊施設の中でもっとも権威があったとされるのが本陣。原則として天皇の遣いの勅使や公家、大名など身分の高い者が宿泊するための宿で、特権として玄関や書院、門を備えている所が多く、非常時の逃走経路や侵入者を防ぐ設備が備わっていることもあったそう。本陣が使えない時は「脇本陣(わきほんじん)」と呼ばれる予備の宿泊施設を利用する。

・旅籠屋

一般庶民が宿泊する宿のうち、食事付きのものが旅籠屋と呼ばれた。夕食や朝食だけでなく、場所によっては昼の弁当が提供されることもあったようだ。旅籠屋は規模や業態によってさらに細かく分けられることもあり、特に「飯盛女(めしもりおんな)」「飯売女(めしうりおんな)」と呼ばれる私娼がいるかどうかは大きな区別の一つとなった。

・木賃宿(きちんやど)

素泊まりが基本の安価な宿泊施設で、食事は持参した食料を薪代を支払って自炊するか、施設の管理人に料理してもらって用意する。この薪代を表す「木賃」が名称の由来となっており、「必要最低限の寝る場所だけあればいい」という庶民にとっては安価で利用できる宿として重宝されていた。江戸時代以前は木賃宿が宿泊施設の基本的なかたちだったが、旅籠屋が増えるに従って木賃宿は安宿の代名詞となり、場所も宿場のはずれにあることが多かった。

現存し宿泊可能な旅籠屋も

江戸時代に庶民の旅を支えていた旅籠屋だが、鉄道などの移動手段の発展により徐々に移転や廃業に追い込まれていった。しかし、静岡県清水区の「東海道興津宿 割烹旅館 岡屋」や長野県塩尻市の「旅館 ゑちごや」のように、今でも旧宿場町の同じ場所で営業を続けている旅籠も少数ながら存在し、当時と変わらぬ風情を楽しめる。

文/oki

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。