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「賽は投げられた」とはどんな意味?ことわざの由来と使い方

2024.05.31

もう後戻りできないという意味を持つことわざ、「賽は投げられた」。

この言葉は、L’Arc~en~Cielなど人気アーティストの曲名や歌詞、漫画や小説のセリフにもたびたび登場するため、誰しも一度は耳にしたことがあるはず。

日常生活やビジネスシーンでも使われる身近な言葉だが、実は起源は今から2,000年以上も前、紀元前に遡ることは意外と知られていないかもしれない。

そこで本記事では、「賽は投げられた」の由来や正しい意味をはじめ、関連するさまざまな表現を紹介する。

「賽(サイ)は投げられた」はどんな意味の言葉?

「賽は投げられた」の読み方は「さいはなげられた」。「賽」はもともと「賽銭」「賽物」のように神から受けた施しに対して報いることを表す漢字。ただしこの場合、そうした意味とは少し違うかたちで使われている。

賽は動物のサイではなくサイコロのこと

「賽は投げられた」の賽とは「さいころ(サイコロ)」のことで、「采」「骰子」と表記されることもある。

サイコロの起源は古く、インダス文明やメソポタミア文明などの紀元前の時代からすでに、今と同じ形のサイコロが作られていたとも言われている。

勘違いしやすいが、「賽は投げられた」で使われる「さい」は、このサイコロのことを意味しており、動物のサイのことではない。

意味は「後戻りできないことをする」

古代ではサイコロを宗教儀式や占いの道具として用いられることが多かったが、次第にすごろくのような競争ゲームや賭け事に使われるようになっていった。

サイコロを投げると占いの結果や賭け事の勝敗が明らかになることから、「賽は投げられた」は「もう後戻りはできない」「もはや進むしかない」といった意味で使われている。

古代ローマ時代、ルビコン川での出来事に由来する

「賽は投げられた」は、ローマ帝国の政治家・軍人として知られる、ガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)のルビコン川を渡る際の言葉が由来とされている。

数々の功績を挙げて領土を拡大していたカエサルは、民衆から圧倒的な人気を誇っていた。一時は彼と協力してともに政治を率いていたポンペイウスは、カエサルを出し抜くために共通の政敵であった元老院と結託し、カエサルを追い込もうとする。

元老院はカエサルが持つ権力や軍隊を解くよう命令した上で本国召還を命じたが、カエサルは不当な扱いとしてこれを拒否。当時、ローマと他の領土の境界となっているルビコン川を武装したままローマ側に渡ることは法で禁じられていたが、カエサルは元老院側と戦う意思を持って兵と共にルビコン川を渡った。

「ルビコン川を渡る」もことわざとして使われる

この時にカエサルが口にしたとされるのが「Alea jacta est」というラテン語で、“もう戻れない所を超えてしまったのだから、結果はどうあれ戦うしかない”当時の状況を表している。

「ルビコン川を渡る」もことわざの一つとして残っており、「賽は投げられた」同様、後戻りのできない決断をする状況で用いられる。

知ってる?「ルビコン川を渡る」の意味と正しい使い方

「ルビコン川を渡る」は、後戻りできないほどの重大な決断を意味することわざだ。古代ローマの軍人・カエサルの行動が語源になっており、ビジネスシーンや技術進歩が著しい...

「賽は投げられた」の使い方

ここからは、「賽は投げられた」の例文のほか、類語や対義語などを詳しく紹介する。関連表現を覚えておくと、状況によって適切な使い分けがしやすくなるため、覚えておいて損はないはずだ。

「賽は投げられた」を使用した例文

「賽は投げられた」はビジネスシーンで使用しても不自然ではない言葉だ。以下のような表現をしてみよう。

「今回のプロジェクト、不安要素も多いがすでに賽は投げられている。もうやるしかない」

「新しい土地で開業するために家を引き払い、大きな借金もした。まさに”賽は投げられた”の心境だ」

「彼との対決を公表した時点で賽は投げられているんだ。今さら尻込みしてる場合じゃない」

「賽は投げられた」に類語、対義語はある?

「賽は投げられた」と同じように、後戻りのできない状況を表すことわざに「背水の陣」がある。

川を背にして陣を組み、兵士たちに「下がれば死ぬしかない」と奮起を促して勝利を収めた古代中国の故事がもとになった言葉で、絶体絶命の状況下で必死に行動する時などに使われる。

また、「乾坤一擲(けんこんいってき)」も近い意味を持つ言葉。「乾坤」は天と地、「一擲」は思い切って一度に投げ打つことを指し、運を天に任せた一か八かの勝負を表している。それぞれ、「賽は投げられた」と置かれた状況は少し異なっているが、結果がどうであれ行動するしかないという点では同じだ。

対義語としては、「白紙に戻す」や「反故にする」などが挙げられる。どちらも、それまであったものを一旦無くしてしまう時に用いられ、ビジネスシーンでも耳にする機会が多い言葉だ。

「賽は投げられた」の英語表現

もともとラテン語が由来の「賽は投げられた」は、英語表現も「The die is cast」と原文を英訳したものとなる。「die」はサイコロの単数形で、一般的にサイコロの英訳として知られる「dice(ダイス)」は複数形。近い意味の表現として、「point of no return」もよく使われる。これは、「回帰不能点」「帰還不能点」などと訳され、そこを超えるともう後戻りできない地点を指している。

文/oki

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