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仕事でよく聞くことわざ「郷に入っては郷に従え」の意味と正しい使い方

2021.06.27

部署異動や転職・転勤など、新天地での立ち振る舞い方の教訓としてよく使われる「郷に入っては郷に従え」ということわざ。新参者になる時も、新参者を迎える時にも使えるこの言い回しは、覚えておくとあらゆるシーンで役に立つはずだ。

そこで本記事では、あらためてその意味や由来、類似表現を解説する。ビジネスシーンでも登場するフレーズなので、言葉の意味を正しく理解しておこう。

「郷に入っては郷に従え」の正しい意味と由来

はじめに、「郷に入っては郷に従え」の意味やその由来について解説する。誤った読み方をしていないか、まずチェックしてほしい。

読み方の注意点と正しい意味

「郷に入っては郷に従え」の読み方は、「ごうにいってはごうにしたがえ」。「入っては」の読みは「いっては」。「はいっては」でない点に注意しよう。「郷に行っては」と書き間違えることも多いが、これも誤りだ。他に「郷に入りては郷に従う」「郷に入りては郷に従え」「郷に入っては郷に従う」と表現することもある。

そもそも郷とは中国古代の行政区域の一つで、庶民の居住地(村や町)を指す。つまり「郷に入っては郷に従え」は「村に入ったらその村の掟に従え」という意味を持ち、「その土地に入ったら、その場所の慣習や風俗にあった行動をとるのが処世の術だ」ということを意味している。

転じてここで言う「郷」は、物理的に居住地という意味だけではなく、職場やグループなど所属する組織や集団とも解釈できる。新しい社会集団に入った時、その場の慣習に合うよう行動することが(たとえそれが自分の価値観と異なっていても)、人間関係を円滑に進めるために大切だという教訓を表したことわざである。

由来は中国語のことわざ「入郷随俗」から

「郷に入っては郷に従え」は、中国語のことわざ「入郷随俗」が由来。中国禅宗の歴史書『五灯会元』にある「且道入鄉隨俗一句作麼生道」の句がその語源となっている。鎌倉時代から明治の中頃まで使われた日本の初等教育用の教訓書『童子教(どうじきょう)』の中に、その句をひいた「入郷而従郷、入俗而随俗」の記載があり、日本にもこの句が普及したと考えられている。さらに古く、荘子(荘周)の著書とされる文献『荘子外篇・山木』にある「入其俗従其令」という句に遡るという説もある。

「郷に入っては郷に従え」の例文と英語表現

では、「郷に入っては郷に従え」は実際にどのようなシーンで使えばいいのだろうか。また、英語で表現するにはどのようなニュアンスが適切なのかも併せてチェックしよう。

「郷に入っては郷に従え」の例文

実際に「郷に入っては郷に従え」を使った例文をいくつか紹介する。具体的な使い方やシーンを理解して、上手に使いこなしてほしい。

【例文】

「転職先では納得できないことも多いが、郷に入っては郷に従えだと割り切って慣習に少しずつ慣れていこうと思う」
「東京圏から地方へ移住した最初の1年。まずは郷に入っては郷に従って暮らすことを肝に銘じて暮らそう」
「新しい職場での人間関係を円滑にし、仕事をスムーズに進めたいなら、”郷に入っては郷に従え”を心に留めた方がいい」
「”郷に入っては郷に従えだ”と、旅先のインドではカレーを手で食べてみた」

「郷に入っては郷に従え」の英語表現

「郷に入っては郷に従え」を英語で表すと「When in Rome do as the Romans do(ローマにいる時はローマ人のするようにしなさい)」。「When in Rome」のみ、もしくは「Do as the Romans do」のみでもよく使われる表現だ。

これは 4世紀のミラノ司教・聖アンブロジウスによるラテン語の成句、「sī fueris Rōmae, Rōmanō vīvitō mōre; sī fueris alibī, vīvitō sīcut ibī(ローマにありてはローマ人の如く生き、その他にありては彼の者の如く生きよ)」の英訳からきていると言われている。

ちなみにイタリア語では「Paese che vai, usanza che trovi(行く土地ごとに、その土地の慣習がある)」のフレーズを使い、「ローマ」という単語は登場しない。

「郷に入っては郷に従え」の言い換え、類義語

最後に、「郷に入っては郷に従え」の類語を紹介する。微妙なニュアンスの違いを知れば、ビジネスシーンでも幅広く活用できそうだ。

国に入(い)ってはまず禁を問え

「よその国に入ったらまず禁止されている事柄を確認せよ」ということわざ。「郷に入っては郷に従え」と基本的には同じ意味だが、まずやってはやってはいけないことを明確にしておくことで、失礼に当たることを極力避けようという意味合いが強い。

所の法に矢は立たぬ

たとえ理不尽に感じても、その土地のしきたりや習慣に従って生活するにこしたことはないという意味を持つ。「所の法」とは、それぞれの土地の掟や慣例のこと。それを守っていれば矢を立てられるようなことはないことを表している。

人の踊るときは踊れ

「人の踊る時は踊れ」は、ドイツのことわざ。皆で何かしようとするときには、進んで溶け込み、自ら一緒にやるほうが良いの意。率先することはないにしても、人に従うのが穏便であることを示している。

対義語は「独立独歩」

「郷に入っては郷に従え」に明確な対義語はないが、四字熟語の「独立独歩」が対義語に近い。自分の信じるところに従って行動することを意味するこの言葉は、他者の慣習を尊重し迎合することを良しとする「郷に入っては郷に従え」と逆の表現と言えるだろう。

文/oki

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