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マスクは?五輪は?コロナウイルスよりも怖い「コロナ脳」の真実

2021.06.22

撮影:太田真三

WHOが新型コロナウイルスのパンデミック宣言をしてから、15か月が過ぎた。

なのに、このウイルスをめぐっては、専門家を含めていまだ議論百出。本当のリスクの程度がどれほどなのかも曖昧なまま、筆者の住む京都は今も緊急事態宣言の真っ最中。街中を一人で歩いている人もマスクをしている光景は、すっかり見慣れたものとなった。

でも、「その場面でそのマスク、本当に必要なの?」と、ふと疑問が頭をよぎることも。

コロナウイルスよりも怖い「コロナ脳」?

マスクについては、「TPOに合わせて自分で判断して、つけたりはずしたりすればいいだけなんだよ」「屋外では基本、マスク要らないですよ」と、きっぱり言うは、先般『コロナ脳: 日本人はデマに殺される』(小学館新書)を共著で出した、小林よしのりさんと宮沢孝幸さんだ。

最初に書名を見た時、一瞬「コロナウイルスは脳にも感染するという話?」と思ったが、もちろんそうではない。「日本人はデマに殺される」という副題のとおり、警世の書となっている。

コロナは恐るるに足らず

小林さんは、インフルエンザに何度か罹った経験から、インフルエンザは怖い派。そこで、コロナのニュースがメディアを賑わせ始めた当初は、「インフルエンザより強毒なら恐れる、だがインフルエンザより弱毒なら普通に暮らす」という方針で臨んだという。

そして、丹念にデータを追い続けた結果、「日本人にとっては、コロナは恐るるに足らず」という結論を出す。

世の少なからずの人々の考えと真逆だが、実際の話、国内のコロナウイルスによる直接及び関連死は、1年間で3400~4200人といったところ。対して、インフルエンザのそれは例年ざっと1万人。また、(前年よりの死亡者数の増加を示す)「超過死亡数」については、日本はめだって少ない、というか死亡者数が1万人近く減っているという事実にも言及する。

小林さんは、その理由は「対策が過剰だったから」だと指摘。以下のように論を続ける。

今までわしが「コロナはインフルエンザより怖くない」「過剰対策をやめろ」と発言すると、「コロナは怖い、怖い」とひたすら煽る連中に洗脳された“コロナ脳”の人たちがSNSなどで猛然と叩いてきたわけです。だけど、こうして確定したデータが出てきて、わしが正しかったことが証明された。こういうデータはネットをググれば、誰でも手に入るんですよ。だけど、いくらこういうデータを示して説得しても、洗脳されてコロナ脳になっているから、信じないし、「お前は噓つきだ」と批判してくる。(本書より)

日本のコロナ対策は過剰だった!?(写真はイメージです)

「煽る連中」というのは、主に在京キー局を指す。共著者で京都大学のウイルス専門家の宮沢さんは、関西のテレビに出るときは「話をちゃんと聞いてくれる雰囲気」があるという。対して、東京のテレビだと「空気が全然違う」と指摘する。

事前の打ち合わせでディレクターさんから「宮沢さん、どんどん言ってくださいよ」って焚きつけられるんですが、いざ収録が始まると、私が何を話してもMC(司会)が全部ひっくり返していくんですね。他の出演者もまともに聞く気がなくて、私一人、暴言を吐いている悪者のようにされていく、ドン・キホーテみたいになっちゃうんですよ。(本書より)

著書に『コロナ論』シリーズ(扶桑社)もある小林さんは、そもそもテレビ局に呼ばれず、大手新聞社も同様。例外的に毎日新聞社が取材に来て、電子版にインタビュー記事を掲載したら「ものすごいバッシング」が来たという。

一時話題になった「マスク警察」「自粛警察」の存在も、こうした大手のテレビメディアが扇動している側面があるとも。つまり、緊急事態宣言の期間に、それなりに人出のある商店街・飲食店街の映像を流すことで、自粛警察に一種の正義感を煽って、抗議の電話が店に殺到。これで店が休業せざるを得なくなると、それも番組のネタにして今度は「こういう嫌がらせはやめましょう」となる。

小林さんは、テレビ局のこの姿勢を、「政権批判につながるネタならなんでもよくて、全部拾って使ってるだけなんだよ」と喝破。大衆を扇動し、政府を動かそうとしていると警鐘を鳴らす。

いつも見ているテレビ番組に扇動されている!?(写真はイメージです)

東京五輪の開催は問題なし

ところで、いよいよ開催が間近に迫った東京オリンピック(東京五輪)だが、小林さんはどのような見解を持っているのだろうか? 『コロナ脳』では触れられていないが、今一番ホットな話題についてうかがった。

「テレビや新聞は東京五輪中止を全力で煽っていますが、開催に何の問題もありません。1998年の長野五輪の時には、インフルエンザの患者が1週間で幼稚園児・保育園児から高校生までだけで約50万人も出ているんです。それでも、平然と開催されていたでしょう。インフルエンザは恐くないが、コロナは恐いというのは、テレビの印象操作で作られた完全な誤解です。外国人はPCR検査やワクチンを打って来るのですから、危険視する必要はない。長野五輪の時のように普通に開催すればいいんです」

いかがだったろうか。本稿の内容には賛否あるかもしれないが、著者お二方のスタンスは、最新の医学的知見と理性に沿ったものだ。興味を持たれたら、ぜひ本書を一読されたい。

小林よしのりさん プロフィール
1953年福岡県生まれ。漫画家。『東大一直線』でデビュー。『おぼっちゃまくん』でギャグ漫画に旋風を巻き起こす。92年スタートの「ゴーマニズム宣言」は新しい社会派漫画、思想漫画として話題に。近著に、『コロナ論』など。

宮沢孝幸さん プロフィール
1964年東京都生まれ。兵庫県西宮市出身。東京大学農学部獣医畜産医学科、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程獣医学専攻修了。獣医学博士。現在、京都大学ウイルス・再生医科学研究所 ウイルス共進化分野准教授。

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)

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