厚木市の「インコ寺」がご利益抜群?
神奈川県厚木市の郊外に、七沢温泉という小さな温泉郷があります。その外れの山すそに、「七沢観音寺」というお寺があり、野鳥のさえずりに加えニワトリが賑やかです。インコのお守りがかわいらしく、ご利益抜群とのことですが、読めば心が軽くなるありがたい仏教のお話を添えてお届けします。
インコ寺のインコお守り全種紹介
七沢観音寺は愛鳥家の間で「インコ寺」と呼ばれる通り、インコをデザインしたお守りが人気です。さまざまなバリエーションがありますが、今いただけるものを全部ご紹介。鳥ごとのご利益もそれぞれです。
◆中央の黄色……オカメインコ(成鳥祈願)
◆右上のピンク……アキクサインコ(夢叶)
◆右の緑……ワカケホンセイインコ(魔除け)
◆右下の赤系……コガネインコ(金運アップ)
◆左下の白×ピンク……クルマサカオウム(交通安全)
◆左のグレー……ヨウム(智恵授け)
◆左上の白……くまどり守(歌舞伎の隈取と鳥のシャレ。防犯祈願)
価格は、オカメインコ守は600円、くまどり守は1000円。それ以外は800円です。一見、普通のお守りに見えますが、中央がぷっくり。
膨らみ部分を押すと「プー」という音が出て、これが魔除けに効くとの話です。
そのほか、シンプルなインコのお守り、難読鳥名の湯のみなど、鳥グッズがズラリと勢ぞろい。
インコをデザインした御朱印帖こと「御朱印鳥」は1200円
コウノトリをデザインした「子授け守」は500円
鳥のおもしろい習性を創作漢字で表した「鳥変(偏=へん)漢字湯呑」1800円
どれもユニークで、なんともご利益がありそうです。
拾ったオカメインコが幸運を運び、住職に!?
七沢観音寺は、なぜこんなにインコ尽くしなのでしょう。住職の林慈照さんが、お寺とインコの切っても切れない関係についてお話してくれました。
「私は18歳で仏の道へ入り、浅草寺の支院で働き、多忙な日々を送っていました。そんなある日、食事の帰りに、路上で白いものを見つけました。よく見ると、オカメインコ。尾羽が1本もなく、震えていてかわいそうなので、自宅に連れ帰ったところ、その日から幸運続き。インコのために買った鳥かご代と、インコを拾った日の食事代をまかなえる臨時収入がありました。その後も不思議な導きが続き、先代住職が急逝してから廃寺寸前だった今のお寺に、新住職として就任することが決まりました」。
そのインコの名前は、「ラッキー」に決定。当時は抜けていた尾羽はきれいに生えそろい、今も元気に住職家族と暮らしています。
インコやオウム、ニワトリなど鳥まみれのお寺
オカメインコのラッキーに続いて、白い大きなオウムの「ヒナタ」もお寺の一家に仲間入り。
住職や奥様によくなついていて、家の中でも境内でもお堂の中でも、いつでも一緒。住職が運転するクルマに乗って、ドライブすることまで楽しんでいるそうです。
鳥はインコだけではありません。お寺の境内では、白、茶、赤などさまざまなニワトリが放し飼いにされ、天然記念物指定の東天紅(とうてんこう)という珍しい種までいます。
でも、みんな捨てられていたところを保護された子ばかりなのだそう。現代の日本で「捨てニワトリ」なんているのか、そしてそれを拾って育てる人がいるなんてと、驚くやら感心するやらです。
ちなみに、住職の奥様の飛鳥さんも僧侶であり、何かと鳥と縁のある人生を送ってきました。名前にも「鳥」が入っていますね。
仏教の精神で動物愛護を考える
七沢観音寺のご本尊は、「馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)」と「富士浅間大菩薩(ふじせんげんだいぼさつ)」の2体。そのうちの馬頭観世音菩薩から、「七沢観音寺」という名がつけられました。
馬頭観世音菩薩(馬頭観音)は、観音菩薩(かんのんぼさつ)が変化した姿の一つ。馬頭観音のご利益は、動物供養から人間界の平安までに至ります。「人間の姿をしながら畜生道(人間以外の生き物の世界)に落ちた人は山ほどおり、そうした人たちも救ってくれます」と住職。
馬頭観音の動物供養のご利益にちなみ、七沢観音寺では亡くなったペットの供養のほか、迷子になった動物が帰ってくる祈願などのご利益が有名です。「迷子ペットの祈願は、一刻も早くやることが重要です」と、タメになることを聞きました。また、深刻なペットロスの悩みを持った人の相談も……。
「ペットは、自分以外存在に深い愛情を抱くことの尊さを学ばせてくれる存在です。それから、人間が生きていくには動物の存在が欠かせません。感謝や愛護ではなく、尊いものを仰ぎ見るような尊敬をするべきです。亡くなった動物への一番の供養は、尊敬の念を送ることです」。
かわいいお守り目的に訪れても、周辺の自然や動物と触れ合ったり、住職夫妻の話を聞いたりと、普段できない体験がたくさん。金運祈願だってOK。あなたもぜひ、山のインコ寺へ。
◆取材協力=七沢観音寺
取材・文/木村悦子