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『厚意』はビジネスシーンを中心に、目上の方や取引先へのメールなどで使われる表現です。しかし、使い方を誤ると、相手に違和感を与えてしまう可能性もあります。正しく使用するためにも、言葉の意味や使い方を理解しましょう。
「厚意」とは
ここでは、『厚意』の意味を紹介します。また、同音異義語である『好意』についても触れていきます。
「思いやりのある心」を表す言葉
厚意には『思いやりや気遣い』『相手がしてくれた親切な気持ちを表す行為』といった意味合いがあります。
『厚』という漢字には『てあつい・ゆたかにする』などの意味があり、『意』は『こころ・気持ち・思い』という意味を表しています。
厚意はそのまま使うのではなく、『ご厚意』としてフォーマルな場面で使用するケースが一般的です。ビジネスシーンで『相手が向けるさりげない優しさ』に対して感謝の気持ちを伝えることが可能です。
「好意」との違い
『好意』とは、『他人に抱く親切心』や『相手を好ましく思う気持ち』という意味です。『相手に好きだという気持ちを間接的に伝える表現』としての意味合いも含まれているので、相手に対してポジティブな気持ちを自然に伝えたい場合にも役立ちます。
『ご厚意』と『ご好意』の違いは、『気持ちが向いている相手』です。厚意は相手から自分へ、好意は他人から自分にだけでなく、自分から他人に対する思いも該当します。親切心を向けているのが誰から誰なのかによって、言葉の使い分けが必要です。
また、通常は『ご好意』といった使い方はしないので注意しましょう。好意には『相手を好ましく思う気持ち』が含まれているので、『ご好意に感謝いたします』という使い方は適切ではありません。
自分自身について敬語を使うことになってしまい、相手が自分に好意を抱いているという表現にもなるので、余計な誤解を生まないようにしましょう。
「厚意」の使い方
厚意はそのままの言葉で使用されるよりも、『ご厚意』として用いられることが多い言葉です。さらに使用場面が多岐にわたるので、ここでは『ご厚意』がよく使われるシーンについて解説します。
ビジネスレターのあいさつ
『ご厚意』は、メールや手紙といったビジネスレターのあいさつとして使用することができます。公的な書面やメールを送る際に、冒頭・結びのあいさつとして活躍し、ホームページに新年のあいさつや新装開店などを掲載する場面など、企業においてもフォーマルなシチュエーションで採用されます。
具体的な例文としては、以下の通りになります。
- これまでと変わらぬご厚意をお寄せ下さいますよう、お願い申し上げましてご挨拶とさせていただきます
- いつも変わらぬご厚意のほど、誠にありがとうございます
- 今後とも一層のご厚意を賜りますようよろしくお願い申し上げます
- 末筆ながら、日頃のご厚意に感謝申し上げますとともに、貴社のご隆盛と皆様のご健勝を心より祈念申し上げます
感謝の思いを伝える
『ご厚意』の後に言葉を加えて、『ご厚意に感謝します』や『ご厚意にあずかる』と変化させることによって、相手からもらった厚意に対して、感謝の思いを伝えることができます。
また、他にも『ご厚意痛み入ります』や『ご厚意に甘えさせていただきます』といった言い回しも可能です。
具体的な例文は、以下の通りになります。
- 多くの人のご厚意にあずかることで、今日まで平穏無事に過ごせております
- 昨年は、格別のご厚意を賜り、心より感謝申し上げます
- 一日も早い職場復帰を考えておりましたが、皆様のご厚意に甘えて、今は治療に専念させていただく所存です
謝罪やお詫び
ビジネスシーンにおいては、相手のありがたい申し出をどうしても断らなければならない場面があります。そのような場合は不快な印象を与えないようにする必要があります。『ご厚意』を用いたクッション言葉で丁寧に断るのがマナーです。
また、相手の親切心を台無しにしてしまう様子は、『無下にする』や『無駄にする』などと表現します。
- せっかくお招き頂いたにもかかわらず、ご厚意に応えることができず心苦しく思っております
- ご厚意を無下にするような振舞いを心から恥じるばかりです
- せっかくのご厚意ではありますが、あまりにもったいないのでお断りさせていただきたいと存じます
- せっかくのご厚意ですが、今回は行けそうにありませんので、お気持ちだけ受け取らせていただきます
- 〇〇様のご厚意にお応えすることができず、誠に申し訳ございません
決意表明
『ご厚意』に『報いる』などを付け加えることで、親切にしてくれた周囲に対して、さらなる飛躍を誓う言葉としても使えます。
『報いる』には、『相手の優しさや親切に対して、それに見合ったお返しをする』という意味があるので、厚意と組み合わせて決意表明として使いましょう。
- お心のこもったお手紙と餞別を頂戴しまして、誠にありがとうございます。皆様のご厚意を無にしないよう、目標に向かって精一杯の努力を怠らない覚悟です
- ご厚意に報いるべく、一意専心、業務に邁進いたしたく存じます
「お金」を意味する場合も
厚意はお金を意味する場合があり、『ご厚意を受けて』などの表現にすることで、お金という露骨な表現を避けて、オブラートに包んで伝えることが可能です。
厚意でお金を表現する場合、基本的には『寄付金』や『援助金』に対して使うようにしましょう。
- 皆様のご厚意のおかげで、学校を修復することができました
- 本日の宴会は、部長のご厚意により開催することができました
- 地域の皆様のご厚意により、目標であった募金額を集めることができました
- スポンサー様からのご厚意により、本日は大型会場を貸し切ることができました
- 皆様からのご厚意により、新しい公民館を建てることができました。心より御礼申し上げます
「厚意」を使う場合の注意点
厚意を使うときは、対象の人物に注意しましょう。ビジネスシーンで採用することが多い言葉なので、使い方次第では恥をかきかねません。ご厚意を使うときに注意したい点について解説します。
自分の行動に対しては使わない
「私の厚意」とすると「私の思いやり」「私の親切心」といった意味になるため、厚かましい・身の程知らずだという印象を与えてしまいます。注意しましょう。
厚意は『他人が自分に示してくれた気持ち』を表すので、自分の行為に対しては使用できません。『私のご厚意』という使い方をしてしまうと、『私の心遣い』や『私の親切心』という意味になってしまい、使い方を誤っていると相手に思われます。
また、同様の理由で、好意では使うことが多い『厚意を寄せる』といった表現も誤りです。好意との違いと併せて、注意点も意識して使用しましょう。
「厚意」の類義語
厚意は、主にビジネスシーンなどで使用されますが、他の言葉でも似たような意味合いを伝えることができます。ここでは、厚意の言い換えの表現について、例文とあわせて解説します。
「厚情」
『厚情(こうじょう)』には、『厚いなさけ』や『心からの深い思いやりの気持ち』という意味があります。厚意と同様に、接頭語の『ご』を付けて『ご厚情』という敬語表現として使用します。
ビジネスシーンで目上の人や取引先から受けた、親切や思いやりを表すことが可能ですが、社内の上司や先輩に対して使うのは、大袈裟な表現となってしまうので、適切ではありません。
具体的な例文は、以下の通りです。
- 平素は格別のご厚情とご支援を賜り、厚く御礼申し上げます
- 寛大なるご理解いただきました上に温かい励ましのお言葉まで頂戴し、ご厚情に痛み入ります
- 在職中は公私ともに過分なるご厚情を賜り、心より感謝いたしております
- ご厚情にお応えすることができるよう、精一杯頑張ります
「配慮」
配慮とは、『他人への心遣い』を表します。相手のことを思いやり、実際に言葉や行動などで親切に接することを表しています。
『ご配慮いただきありがとうございます』などの使い方をすることで、相手が自分に対して気を遣ってくれた場合に感謝の気持ちを伝えることができます。
また、『配慮』には『心配』という意味合いも含まれているので、相手に注意を促す場面や相手に配慮をしてほしい場面でも用いることが可能です。
- この度は、配慮が足りずご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした
- 〇〇様、いつもご配慮頂きありがとうございます
- こちらの会場は写真撮影が禁止になっておりますので、どうかご配慮願います
- こちらの商品は、ペットがいない場所で使用していただくようご配慮をお願いいたします
構成/編集部