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江戸時代からあった!?諸説ある「地震雷火事親父」の語源は?

2024.04.29

七五調で構成された『地震雷火事親父』は、耳に残る言葉の一つです。

幼少期からこの言葉を知っていても、地震・雷・火事に親父が入る理由を知らない人も多いのではないでしょうか。親父が入る理由や言葉の意味、使い方を知り、言葉への理解を深めましょう。

「地震雷火事親父」の意味とは

そもそも『地震雷火事親父』とは、どのような意味なのでしょうか。言葉の意味や、地震・雷・火事と親父が同列にされる理由を知りましょう。

「恐ろしいものを列挙」した言葉

地震雷火事親父は、恐ろしいものを列挙した言葉です。順番にも意味があり、より恐れられている事柄から順に列挙されています。

地震と雷はともに天災で、命を落とし得る点で共通しています。それぞれ発生状況によって危険度は異なるものの、一般的に屋内に避難すれば雷に打たれるリスクは低くなるものの、屋内外を問わず地震からは逃げられません。

命を落とすリスクがある点では、火事も地震や雷と同じです。地震や雷に誘発される火事もありますが、人々の用心によって火事は防げるケースもあります。

「親父」も一つの脅威と考えられていた

地震・雷・火事といった災害と肩を並べる『親父』という言葉に、違和感を抱いたことがある人は多いでしょう。たとえ親父が恐れの対象だとしても、命を落とすほどの脅威ではないと感じられるからです。

地震・雷・火事とともに親父が列挙される背景には、家父制度がありました。家父制度とは、家族に対して家長が絶対的な権力を持つ制度です。必ずしも家長が父とは限らないものの、一般的に家長は父を指します。

この制度下では父の権力が非常に強く、父親に逆らうなど到底不可能でした。そうした背景から、地震・雷・火事といった災害に並ぶ恐ろしさの象徴として、親父が使われるようになったのです。

諸説ある「地震雷火事親父」の語源

(出典) pexels.com

『地震雷火事親父』の語源には諸説ありますが、明確な由来ははっきりとしていません。今回は有力とされる二つの説を紹介しましょう。

「親父」は台風

親父の由来といわれる説の一つに、台風説があります。昔の台風は『大山嵐(おおやまじ)』『大風(おおやじ)』と呼ばれていました。いつしかこれが親父に変化した、というのが台風説です。

どのようにして大山嵐や大風が親父になったかは、定かではありません。ささやかれる説の一つに、地震・雷・火事に続くときの語呂を重視して大山嵐や大風を『おやじ』と読ませるようになり、いつしか同音異句の親父にすり替わったというものがあります。

『地震雷火事台風』なら、災害関係の単語が並びます。親父より台風の方がしっくりくる人も多いのではないでしょうか。

「親父」はユーモア

親父の由来といわれる説には、ユーモア説もあります。台風説のようにほかの言葉から親父に変化したのではなく、最初からユーモアとして親父を並べた、という説です。

地震・雷・火事と親父が並んだときに生まれる意外性がユーモアを演出します。地震雷火事台風は各単語のつながりとしてはしっくりきますが、地震雷火事親父に比べて面白味に欠ける印象は拭えません。

また、韻を踏んでいるのも、ユーモア説の根拠です。雷・火事と『か』で始まる単語が続き、その後も火事と親父で、末尾が『じ』の単語が続きます。地震にも『じ』が含まれていて、音の調べまで計算されていると考える人がいても不思議ではありません。

江戸時代にはあった言葉といわれる

地震雷火事親父は、江戸時代後期にあたる19世紀にはあったといわれています。その根拠として、1855年に江戸で起きた安政の大地震の後に刷られた多くの瓦版には、地震を意味するナマズが記されていました。

地震除けのお守りとしてナマズの絵を欲しがる人もいて、安政の大地震後のナマズをモチーフにした絵は人気を博しました。当時の瓦版は売れ筋の絵を真似た作品が量産される傾向にあり、地震から約2カ月で250種類以上の似た絵が出回ったといわれています。

そのなかには、地震雷火事親父をモチーフにした絵もありました。地震(ナマズ)・雷・火事を擬人化し、親父と一緒に描いたものが見られます。

「地震雷火事親父」の使い方と例文

(出典) pixabay.com

『地震雷火事親父』は実際の文脈でどのように使うのでしょうか。

例文と一緒に使い方を確認し、実際に地震雷火事親父を使ってみましょう。

「地震雷火事親父」の使い方

地震雷火事親父は、以下のような使われ方が多いです。

  • 地震雷火事親父というように~
  • 地震雷火事親父より~
  • 地震雷火事親父の~

意味合いとしては、地震雷火事親父を恐ろしいものとしてみなすものと、そのまま言葉としての『地震雷火事親父』を指すものがあります。

「地震雷火事親父」の例文

先ほど紹介した三つの使い方を中心に、地震雷火事親父の例文を紹介します。

  • 地震雷火事親父というように、子どもの頃は父に逆らえなかった
  • 祖父母の世代から聞く戦争の話は、地震雷火事親父より恐ろしい
  • うちの親父に地震雷火事親父の影はなく、今では孫を猫かわいがりする好々爺だ

「親父」は別の言葉に置き換えられる

地震雷火事親父には、親父を別の言葉に置き換えた派生語がいくつかあります。置き換える対象は恐ろしいものです。人で置き換える場合は、『怒ると怖い人』『怒ると厄介だから逆らったり怒らせたりしない方がよい人』が対象になります。置き換えの例をいくつか紹介しましょう。

  • 地震雷火事女房:家庭で親父より女房の権力が強い
  • 地震雷火事津波:地震・雷・火事と並んで津波も脅威的な災害であること
  • 地震雷火事ヒグマ:人を襲う可能性があり、注意が必要

構成/編集部

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