お盆休みを迎えると、帰省して故郷で過ごしたりお墓参りをして先祖を供養したりするものです。ところでお盆の時期について、しっかりと理解できていない人は多いかもしれません。そこで、お盆の由来や時期、お盆ならではの風物詩について掘り下げていきます。
そもそも「お盆」とは
お盆は、日本の暮らしには欠かせない行事です。夏の時期に、先祖の霊を祀(まつ)り、祖先に感謝する大切な慣わしだといえます。
お墓参りをすることは知っていても、それ以外のことについてはあまりよく分からない人もいます。由来や時期について、再確認しておきましょう。
お盆の由来
お釈迦様の弟子の1人である目連(もくれん)は、神通力によって、餓鬼道に落ち逆さ吊りにされている亡き母の苦しみを知りました。お釈迦様は目連の母親を苦しみから救う方法として、7月15日に僧侶を招き供物捧げて供養することを提案しました。
目連は、その教え通り僧侶を呼び寄せ供養し、母親は無事に極楽往生を遂げられたといわれます。この話が伝わり、旧暦の7月15日は、父母や先祖が無事に極楽へ行けるように、感謝と共に祀る大切な日となりました。これが、お盆の由来です。
2021年のお盆はいつ?
お盆は当初、太陰暦(旧暦)の7月15日頃に行う行事でした。現代では太陽暦(新暦)を採用しているため、8月15日をお盆とする地域が多いのです。
祖先の霊を迎え、そしてまた極楽浄土へと送るために、数日をかけて実施する場合が多くあります。旧暦・新暦いずれにおいても、15日の前後を加えた期間が一般的です。初日を『迎え盆』、送り出す日を『送り盆』と呼びます。
2021年のお盆は、7月13日(火)~16日(金)、あるいは8月13日(金)~16日(月)になるでしょう。
新暦と旧盆の違い
地域によってお盆の時期が異なるのは、明治時代に行われた『改暦』が関係しています。文明開化の名のもとに近代化が図られたこの時期に、暦を国際基準に合わせることを目的として実施されたものです。
改暦に伴って、国内の行事や風習は、それぞれ30日遅れで再設定されることとなります。そして、もともと旧暦の7月15日だったお盆も、改暦後は新暦を採用し8月15日に行う地域が増えたのです。
現代では、全国を見渡すと、主流は8月に行う旧盆です。一方、新盆(にいぼん)の7月15日としている地域は、少数派ではありますが、現在も残っています。
新暦によって季節が少し変わるため、新たに設定したという意味で7月15日が『新盆』です。そして、新暦では日付が変わるけれども時期は昔と同じなため8月15日を『旧盆』と呼びます。少し紛らわしいですが、間違えないようにしましょう。
お盆の時期は地域によって三つに分かれる
新暦と旧暦で行われることの多いお盆ですが、それ以外の時期にお盆をする地域もあります。エリアによって異なる三つの時期と主要都市について見ていきましょう。
東京や横浜などの都市部は7月盆
東京や横浜、北海道の1部、石川県金沢市、静岡県の都市部などでは、新暦を取り入れ7月盆が主流となっています。
新暦を採用した地域では国際化を目指す明治政府の、新暦を徹底させたいという意向をくみ取り、新暦の7月15日にお盆を行うようになったのです。
全国的に多くみられる8月盆
北海道や東北地方、新潟県、長野県、関西地方などでは、8月盆です。新暦で30日遅くなることから『月遅れ盆』とも呼ばれています。
明治時代の改暦後、暦自体は新暦が普及しましたが、お盆の時期は変わらなかったため、8月15日に定着しています
旧暦盆は沖縄・奄美地方が有名
特殊な位置付けにある旧暦盆を行う地域として有名なのは、沖縄や奄美地方です。『シチグヮチ』とも呼び、祖先を大切にする思いの強い沖縄では、旧暦盆を最も大切な行事としています。
旧暦に則って行うため、年によって期間が変わり、9月にずれ込む場合もあるのです。沖縄や奄美地方以外にも、関東北部や中国・四国・九州地方、南西諸島等でもこの期間を採用している地域が、わずかですがあります。
お盆の風物詩
お盆には、共通して行われる行事や、その地域独特の風習があります。代表的なものについて紹介しましょう。
「盆踊り」
最も強いイメージを持っている行事といえるでしょう。輪になって踊る盆踊りは各地で行われていますが、本来は宗教的な行事として位置付けられていました。
始まりは、祖先の霊を迎え、送るための『念仏踊り』です。同じ地域に暮らす誰もが参加して、祖先に感謝しながら供養するために一同で踊りました。
あるいは、現在の静岡県西部にある遠州地方では、『遠州大念仏』が有名です。一般の人が参加することはできず、初盆を迎えた家から依頼を受けた一団が、笛や太鼓、鐘を鳴らし歌い踊りながら、周辺の家々を回るのです。
「精霊流し」や「五山送り火」
『精霊流し』は、北九州地方を中心に受け継がれてきた伝統行事です。お盆に祖先の霊を乗せるための船を手作りし、船を引きながら街中を練り歩きます。
京都の『五山送り火』も全国的に知られた行事です。京都の町を取り囲む五つの山に、『大文字』『舟形』『妙法』『左大文字』『鳥居形』を大きくかたどって火を燃やし、ご先祖様を極楽へと送るのです。
構成/編集部